マルコス新政権に米中接近 バイデン氏「同盟強化を」

マルコス新政権に米中接近 バイデン氏「同盟強化を」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM123RM0S2A510C2000000/

『【マニラ=志賀優一、北京=羽田野主】9日投開票のフィリピン大統領選で圧勝したフェルディナンド・マルコス元上院議員に、米中両国がそれぞれ接近している。バイデン米大統領は12日の電話協議で「米フィリピンの同盟関係の強化を継続する」ことを求めた。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は大使を通じて祝電を送った。中国に融和的と言われるマルコス氏を巡って米中の綱引きが早くも強まっている。

バイデン氏は、マルコス氏の大統領選圧勝が判明した後に電話会談した初の国家元首とみられる。バイデン氏は同盟関係に加え「新型コロナウイルス対策や気候変動、経済成長、人権問題の重視といった幅広い課題で2国間の協力を拡大する」ことを求める考えを伝えた。マルコス氏は6月30日に就任し、任期は6年となる。

フィリピンはかつて米国の統治下にあり、日韓などと並びアジアにおける米国の同盟国の一つだ。かつては米軍基地があり、現在も同国内で米軍の活動を認める「訪問軍地位協定」(VFA)で関係を維持している。米中対立の最前線である南シナ海に位置し、米軍にとっては軍事的要衝となっている。

バイデン氏が早期に電話会談するとともに同盟関係強化を強調した背景には、アジア太平洋地域に影響力を保持しフィリピンとの連携を強化するとともに、対中融和姿勢がうかがえるマルコス氏を引き寄せたい考えがある。

フィリピンは南シナ海の領有権問題を巡り中国と対立する。2016年、国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は南シナ海での中国の領有権主張を否定する判決を下したが、中国はその後も実効支配を強化し、フィリピン国内には反発もある。一方でドゥテルテ現大統領は同国にとって最大の輸出国である中国(香港含む)との通商関係も重視。融和的な姿勢を貫き、中国が資金援助するインフラ整備計画を実施するなどしてきた。

マルコス氏は「米国との関係は特別」としながらも「ドゥテルテ氏の(融和的な)対中姿勢がフィリピンの唯一の選択肢」と語り、現政権の外交姿勢を踏襲するとみられる。大統領選出馬を申請した21年10月には、在フィリピン中国大使館で大使と会談している。

中国の習主席が大使を通じマルコス氏に祝電を送ったことも12日わかった。習氏は「私は中国とフィリピンの関係の発展を非常に重視し、マルコス次期大統領と良好な仕事関係を築く」と強調。「両国の全面的・戦略的協力関係を深く推進し、両国と両国人民に幸福をもたらすことを望む」と伝えた。

中国もフィリピンの対米接近を警戒している。フィリピンは3月28日から約2週間にわたり米国と過去最大規模の定例軍事演習を実施した。中国は同演習の最終日に、習主席が持ちかける形でドゥテルテ氏と電話会談。習氏は「地域の安全は軍事同盟の強化によっては実現できない」などと主張した。

フィリピンの新政権発足を機に米中がそれぞれフィリピンへの接近を始めた形になっているが、6月末に大統領に就任するマルコス氏が、米国との同盟関係を維持しながら中国にも融和姿勢をとったドゥテルテ氏のような老獪(ろうかい)な二股外交を手がけられるかも試されている。』