ソフトバンクG、投資会社化急ブレーキ

ソフトバンクG、投資会社化急ブレーキ 「守りを徹底」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB122VB0S2A510C2000000/

『金利上昇を背景とする世界的な成長(グロース)株の下落で、ソフトバンクグループ(SBG)が苦境に立たされている。

12日発表した2022年3月期連結決算(国際会計基準)は投資先企業の価値が減り、過去最大の赤字になった。現預金などはなお3兆円近くあるが、「徹底した守りに徹する」(孫正義会長兼社長)としており、SBGの投資会社化に急ブレーキがかかっている。

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人工知能(AI)関連の未公開企業に投資するビジョン・ファンド1・2号で約3兆7000億円の投資損失を計上した。米ウーバーテクノロジーズなど上場する投資先企業の株価が大幅に下落したことが響いた。

2017年設定の1号ファンドではサウジアラビア政府系ファンドなどの外部投資家の一部に投資元本の7%を「固定分配」として毎年支払ってきた。

利払い負担は年2000億~3000億円規模とみられる。SBGには現預金などの手元流動性が3月末時点で約2兆9000億円あり、足元の資金繰りが危機的な状況にあるわけではない。

ただし、孫社長は会見で「手元に現金を厚く、投資基準を厳格にする」と繰り返し強調した。

資金の確保はすでに進めており、上場した投資先の株式売却や株担保ローンによる調達は約5兆6000億円にのぼり、ビジョン・ファンドに投じた約5兆2000億円を上回った。

投資の減速はすでに数字にあらわれている。ビジョン・ファンドの新規投資の承認額は22年1〜3月が25億ドルと、その前の四半期に比べ約8割急減した。

「AI革命」を旗印にSBGが推進してきた投資会社化は足踏みが必至だ。

12日の会見で孫社長は「(投資先企業の売却手段となる)新規株式公開も今後1年間は減るだろう。(新規投資について)より慎重な運営をする」などと神妙な面持ちで語った。
今後は投資回収のスピードが鈍化する可能性が高く、絶え間ない新規投資と回収によって収益基盤を拡大する戦略に暗雲が垂れこめる。

連結決算の内訳を見ると、投資会社であるSBGの特殊な収益構造も浮かぶ。

22年3月期はビジョン・ファンドの巨額の赤字に加えて、大幅な円安・ドル高で約7000億円の為替差損を計上した。

円安は通常、トヨタ自動車など製造業の業績にはプラスに働く。

SBGの場合は社債など米ドル建て債務が多く、円安が進むと為替差損が膨らむ。

一方で、デリバティブ関連損益で約1兆2000億円の利益を計上した。

保有する中国アリババ集団の株式を担保に金融機関から資金調達しており、同社の株価が下がると逆に会計上の利益が膨らむ特殊な契約を結んでいる。

グロース株の全面安で、SBGが最重要の経営指標と位置づける時価純資産(NAV)も減少した。SBGの投資先の株式価値から単体の純有利子負債を差し引いて算出する。

アリババの株安などが響き、22年3月末時点のNAVは18兆5000億円と21年3月末から3割減った。

懸念材料は多いが保有株式の資産価値に対する純有利子負債の割合を示す負債カバー率(LTV)は22年3月末で約20%。21年3月末の約12%からは悪化しているが、手元資金を積み増すなどした結果、平時で25%未満に抑える自社基準内には収まっている。

SBGにとっての誤算は中国リスクの長期化だ。アリババの株安が止まらず、一時は約6割に達していたNAVに占める同社株の比率は約2割まで下がった。

中国依存度は結果的に低下したが、アリババ株はSBGにとって重要な資金調達手段であり続けている。米中分断や専横的な政治体制で中国のハイテク株を巡る環境は不透明さを増す。中国市場がSBGの経営にとってアキレスけんであることに変わりはない。

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

困難な環境下で守りを徹底しLTVを改善させたことは評価すべき一方、SBGに同時に求められているのは情報革命で人々を幸せにというパーパスの強化や刷新ではないかと思います。

数年前の孫社長からはメガトレンドを先行して掴みそれを壮大なビジョンにして事業化していく大義や気概を感じ取れました。

ファンド会社を標榜している以上は外部投資家を再び呼び込めるかが本格的な再成長の必要条件ですが、十分条件は日本や世界の人々をどのように幸せにしていくかについて壮大かつ具体的なグランドデザインを示し事業化していくことではないかと思います。

AIの民主化が進む中でAI群戦略という戦略の刷新も真の再成長への軌跡には不可欠です。
2022年5月13日 5:28

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

マネーゲームか、技術か、時代の寵児とされていたこの経営者は明らかに稼ぎやすい方向へ走りすぎた。汗をかかないで金を稼ごうとするから、しっぺ返しを食らう。

もしだれかにこの会社は何をしている会社かと聞かれた場合、どう答えるかを考えさせられてしまう。なぜならば、街中でときどきみる携帯電話のキャリアだけで、それ以外、何をやっているの、て何も見えてこないからである。

中国のプラットフォーマーへの投資で儲かったと報道されているが、しょせん一過性の儲けに過ぎない。今こそ原点に戻るべき

2022年5月13日 7:25

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蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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分析・考察

孫代表も毎回言及する最重要KPIたるNAV、即ち時価純資産が3四半期連続下落、かつその額は2016年度の水準まで後退してしまった。

これはNasdaqインデックスが2020年後半水準までしか下落していない事に比して大幅アンダーパフォームである。

さて今後の論点は「ベンチャー投資のルールを変えた」と言われる程の超高額バリュエーションで大きな金額を投資するスタイルがジャスティファイされる程エグジット市場価格水準が戻るか否か。

NAVがオントラックに戻るか否かはその一点に掛かっている。

その点ファンド形式から自己資本投資に変えたため時間と戦わなくてよい、戻るまで持ち続ければ良い点は正しい戦略変更だった。

2022年5月13日 7:23 』