オーストラリアで揺れる中国とソロモンの安保協定

オーストラリアで揺れる中国とソロモンの安保協定
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/26563

『今回の中国とソロモンとの安全保障協力協定の締結は、特にジェニングス等、豪州の国防専門家にとっては大きなショックになっているように見える。政治についてもそうである。

 豪州は5月21日の選挙に向けて選挙運動中である。対中国政策の成功を最大の武器に選挙戦を進めていたモリソン首相は、中国とソロモンの合意を阻止することに失敗したことを、野党労働党から厳しく批判されている。今回の出来事は、豪州の総選挙にも影響を与えかねない。

 ジェニングスは、
① 安全保障協力協定の締結は、単に中国の秘密作戦を阻止できなかったことに留まらず、より大きな問題として長年にわたり太平洋での影響力を過剰評価し、防衛力への十分な投資を怠り、中国の戦略的意図の評価に失敗したことを表す。

② ドローンなどを含め豪州の東側方面での防衛力を集中的に強化することが必要だ。

③ 豪州は未だソロモン諸島を取り戻すことは可能だ。

と言う。しかし、そう楽観的にはなれない。扉の間に足を入れることに成功した中国が引くとは思えない。

 更にジェニングスは、今回、合意に基づき、5月21日の豪州の選挙が終わる迄に、中国軍の貨物機や船舶がホニアラに「補給」や「寄港」のために必要な物資、「主要プロジェクトの実施」に必要な物資を搬入するだろうと予測する。中国のやり方からすると、あながち否定できない。また、モリソン首相が今週追加建造すると発表した哨戒艇二隻は、ホニアラにある豪州・ソロモン共同施設に配備するようソロモンに提案すべきだと言う。良いアイディアではないかと思われる。

 4月19日と翌日、中国とソロモン諸島は協定を「最近」締結したと夫々発表した。タイミングは如何にも電撃的だった。4月22日の米国安全保障会議(NSC)のインド太平洋調整官であるキャンベルらのソロモン到着前に、先制的に締結を既成事実化したようだ。

 中国が香港国家安全維持法でやったような迅速な既成事実化と同様だ。西側が裏をかかれたとの感を免れない。時系列的には、4月18日に米国がキャンベルのソロモン訪問の日程を発表し、19日に中国が締結したことを発表し、20日にソロモンが中国に追随した。しかも中国、ソロモン共に正確な締結日は明かさず、単に「最近」としている。』

『勿論合意文書は明らかにされていない。われわれが知り得るのは、3月末に漏洩されたテキストだけである。忍び足で相手にわからないようにし、一挙に既成事実を作る中国のやり方には、十分に注意する必要があろう。ソロモンのソガバレ首相は、来年、選挙をしなければならないが、この点も注視する必要がある。

日本の外交姿勢による貢献の可能性も

 米国のキャンベルは、クリテンブリンク国務次官補とともに、予定通りソロモンを訪問し、22日にソガバレ首相と会談し、中国軍の駐留や軍事施設建設に向けた動きがあれば、「相応の対応を取る」と強く警告したという。

 米国側は会談で「安全保障協定には目的や意図、透明性に懸念がある」と指摘し、ソガバレは「(中国の)軍事基地建設や長期的な軍の駐留はあり得ない」と改めて説明したが、米国は「地域のパートナー国と協調しながら、今後の推移を注視する」と強調し、米国はソロモン諸島での大使館開設を繰り上げ、病院船の派遣による公衆衛生支援や海洋安全保障協力などを進める方針も示したという。

米国の強い立場が相手に正しく理解されたことを期待したい。

 豪州、ニュージーランド、島嶼国と日米両国が、本気で緊密に連携、協力していくことが重要である。

4月18日の日米豪NZの4カ国会合も良かった。島嶼国との関係はオーバーキルにやれば逆効果になる。外交と軍事を旨く調整していく必要がある。日本の柔らかな外交は良い貢献になるのではないか。

 4月25~27日に、上杉謙太郎外務大臣政務官が、自衛隊機でソロモン諸島を訪問した。日本の懸念を伝えると言う。また、5月には林芳正外相がパラオを訪問する計画と言われる。』