政府、ファイブ・アイズと協力拡大 機密情報の枠組み

政府、ファイブ・アイズと協力拡大 機密情報の枠組み
対中ロ念頭、本格参加には壁
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA261U80W2A420C2000000/

『政府は機密情報を共有する英語圏の枠組み「ファイブ・アイズ」5カ国と協力を拡大する。中国やロシアへの警戒を強める一環だ。米国と同盟を結ぶ英国やオーストラリアと安全保障に関わる情報を互いに伝えあう。日本は秘密情報を扱う専門機関を持たず本格的な協力には壁もある。

岸田文雄首相は5日、訪問先の英国でジョンソン首相と会談し、自衛隊と英軍が共同訓練をしやすくする「円滑化協定」について大枠で合意した。日本にとって地位協定を結ぶ米国を除けば、豪州に続き2カ国目の合意となった。

英国は2021年9月に空母打撃群を米軍横須賀基地(神奈川県)に寄港させ、アジア地域への関与を強めてきた。日英は高いレベルの安保協力に乗り出しており、13年に締結した機密情報のやりとりを可能にする情報保護協定が前提になる。

日本は4月、ニュージーランド(NZ)との間でも情報保護協定の交渉を始めると合意した。NZはファイブ・アイズに参加する。

この枠組みは米英を中心に立ち上げ、カナダと豪州、NZが加わった。通信傍受網を通じて電話やメールなどの情報を収集し、参加国の情報機関は相互に傍受施設を共同活用している。

日本は米英豪3カ国と情報保護協定を締結した。NZとも結べばファイブ・アイズとの情報共有の幅が広がる。日本も偵察衛星など宇宙からの情報収集を強化する。

米議会ではロシアによるウクライナ危機の前からファイブ・アイズのメンバーを増やす議論が提起されてきた。

21年11月に下院の軍事委員会のもとにある情報・特殊作戦小委員会が中心となって作成した国防権限法案に「韓国、日本、インド、ドイツとの情報共有拡大について報告書を提出するよう指示する」と明記した。

厳しさを増す安保環境が背景にある。最近では中国とソロモン諸島が安全保障協定を結んだ。中国軍の派遣や艦船の寄港を認める内容を含むとみられ、南太平洋に軍事進出する可能性がある。

米英豪は21年9月、インド太平洋地域での安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設した。米英が豪州に原子力潜水艦の技術を供与すると合意し、22年4月には極超音速兵器の開発など新たに8分野での協力をまとめた。

ロシアによるウクライナ侵攻で強権的な国家に対する安全保障への危機感が高まる。自由や民主主義、法の支配といった価値観を共有できる国での協力が重要になる。

日本は米豪とインドによる「Quad(クアッド)」の枠組みで中国に対抗する。インドはロシアとの軍事的な結びつきが強いほか、冷戦時代は東西どちらの陣営にもくみしない非同盟主義を掲げた経緯がある。日米と歩調を合わせるのには限界もにじむ。

米国を中核とした別の枠組みも重要になる。韓国で保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が大統領に就任したのを機に、日米韓3カ国の連携への期待が高まるのは似た文脈にある。

日本には情報の収集や保持の体制に不安が残る。国内の通信傍受を制限しているほか海外で独自に情報を集める組織も持たない。

14年に機密を漏らした人に厳罰を科す特定秘密保護法を施行したものの、機密や先端技術の取り扱いの資格(セキュリティー・クリアランス)制度などが整っていない。情報漏洩を防ぐ体制に依然もろさが残りファイブ・アイズの枠組みに加わるハードルは高い。
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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Japan-pursues-greater-Five-Eyes-intel-sharing-amid-China-concerns?n_cid=DSBNNAR 』