[FT]韓国の新政権、対北で「核武装」議論 米兵器配備も

[FT]韓国の新政権、対北で「核武装」議論 米兵器配備も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB116QX0R10C22A5000000/

 ※ これは、絶対読んどいた方がいい…。

 ※ 北の核にどう対応するのか…、という点では、日本国も全く同様の立場だ…。

 ※ ただ、日本国においては、「韓国の核に、どう対応するのか」「北主導の統一朝鮮が出現した場合(そのバリエーションとして、北寄りの核政策をとる韓国が出現した場合)、どう対応するのか」ということを考えておかないとならない、という点が、異なるがな…。

『韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は10日の就任に先立ち、急速に発展する北朝鮮の核戦力に対して自国の防衛を「大幅に強化」すると約束した。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は抑止力が有効であると国民に伝えることを優先するだろうとみられている=ロイター

保守派の同大統領が掲げたこの選挙公約は、朝鮮半島に米国の核兵器を再配備すべきか、さらには韓国が独自の核抑止力の開発を目指すべきかという議論が国内で過熱していることを浮き彫りにした。

尹氏は就任演説で、北朝鮮が非核化に取り組むのであれば「北朝鮮経済を大幅に強化する大胆な計画」を準備すると言明した。だが専門家らは、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が核兵器を放棄する可能性は極めて低いとみている。

ウクライナ侵攻で目が覚める

北朝鮮は2021年9月以降、弾道ミサイルの発射実験を相次いで実施している。米国は、北朝鮮が5月中にも17年以来となる核実験を実施する可能性があると警告している。韓国政府当局は、ロシアが西側諸国によるウクライナ情勢への介入をけん制する目的で核の使用をちらつかせたことも懸念している。

米シンクタンクのシカゴ国際問題評議会で韓国を専門とするカール・フリードホフ氏は「ロシアのウクライナ侵攻が状況を大きく変えた」と指摘する。

「韓国の安全保障機関は、北朝鮮が核武力を使用する可能性を深刻に受け止めていなかった。だが、ロシアが侵攻当初から核使用の可能性をちらつかせてきたことを目の当たりにして、多くの人の目が覚めた」という。

韓国は通常兵力を使う戦略「韓国型3軸体系」で、北朝鮮を抑止しようとしてきた。これは、核攻撃の兆候を探知して発射基地をミサイルで先制攻撃する「キルチェーン」、飛来する発射体を迎撃する「韓国型ミサイル防衛(KAMD)」、攻撃を受けた場合に容赦なく報復する「大量反撃報復(KMPR)」で構成される。

文在寅(ムン・ジェイン)前政権の下、韓国政府は戦闘機や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、偵察衛星に多額の投資をした。また、現在はイスラエルの対空防衛システム「アイアンドーム」をモデルにした独自のミサイル防衛システムを開発している。

しかし、北朝鮮の攻撃を阻止するうえで、韓国は通常兵力の優位性に頼れなくなりつつあり、安全保障面で最も緊密な同盟国である米国が提供する核の傘への依存を高めつつあると、アナリストらは指摘している。

ソウルを拠点とする政治リスク助言会社ストラットウェイズ・グループの創業者、S・ポール・チョイ氏は「北朝鮮が瞬時に発射できる固体燃料ミサイルを開発したことで、キルチェーンの有効性は低下し、韓国のミサイル防衛にとって変速軌道で迎撃しにくいミサイルへの対策が課題となる一方、早期に核を投入する可能性が戦略全体を脅かしている」と分析する。

韓国への核配備、新政権メンバーは同意

「韓国の安全保障当局は以前からこの点に気をもんでいたが、問題は一段と深刻化しており、米国が他国に対しても核抑止力を提供する拡大抑止への依存に疑問を持つ人は増えている」という。

米国は1991年に韓国から核弾頭をすべて撤去した。だが、韓国特殊部隊の元司令官で退役中将のチョン・インボム氏は、北朝鮮の核の脅威に対応するため、朝鮮半島に米国の戦術核を配備すべきだと主張している。

金総書記は4月の軍事パレードで、北朝鮮の「基本的な利益」を守るためなら核武力の使用も辞さない姿勢を示し、核兵器には戦争抑止を超えた「第2の使命」があると表明した。

チョン氏は「45分や数時間ではなく、1~3分以内に対応できる」戦術核戦力を韓国に配備すべきだと強調した。

「南北双方が互いを危険な状況に置かない限り、核兵器などを放棄することは検討しないだろう。これは冷戦の論理だが、今はまさにその状況にある。北朝鮮は、韓国が核兵器を配備することはないだろう、とたかをくくっている」

ソウルの情報サービス会社コリアプロの首席アナリスト、ジョンミン・キム氏によると、韓国の領土に米国の核兵器を配備すべきとするチョン氏の考えについて、尹新政権のメンバーの多くは同意しているという。

「韓国の保守派は、朝鮮半島を防衛するために利用できる核戦力を増やしたいだけでなく、有事の際に米国が確実に対応してくれるという強固な保障を求めている」とキム氏は述べた。保守派は「韓国側がより口を出せるようにし、核使用について米国がどのように考えているかを理解したい」のだという。

また、尹氏は革新系の前任者よりも、力を誇示することをいとわないだろうとキム氏は付け加えた。前任の文氏は、朝鮮半島の和平の仲介役として名を残そうとしたが、その願いは北朝鮮の強硬姿勢によって打ち砕かれた。

「2つの政権の違いは、実際の軍事態勢というよりも、論調の違いという形で表れる」とキム氏はみている。「文在寅氏が対話と緊張の緩和を優先していたのに対し、尹氏は抑止力が有効であると国民に伝えることを優先するだろう」

ただ、対立路線は裏目に出る恐れがあるとして、一部のアナリストは警鐘を鳴らしている。

米ワシントンのシンクタンク、クインシー研究所のジェシカ・リー研究員は「北朝鮮が緊張を高めている今、抑止力や経済的孤立、軍事力の脅威を強めることは、朝鮮半島情勢を一層不安定にするだけだ」と懸念する。

シカゴ国際問題評議会が最近実施した世論調査によると、韓国が独自の核兵器を保有することを国民は引き続き支持しており、調査対象者の71%が保有に賛成と回答している。

「米国の政治家に委ねるのは愚策」

シンクタンク、国際危機グループ(ICG)のシニアコンサルタント、クリストファー・グリーン氏は、北朝鮮が軍事的脆弱性を認識して70年代後半に核兵器開発に着手したように、韓国も自前の核戦力が必要だという結論に達しつつある可能性があると語った。

「韓国のそうした願いを抑えるうえで、米国には非常に大きな影響力がある」とグリーン氏はいう。「米政府は北朝鮮が抑止できないとみなせば、建前上は(韓国の核保有を)黙認することもあり得るが、近いうちにそうなるとは思えない」

ただ、前出のチョン氏は、韓国政府は遠く離れた米国による安全保障という外部要因をいつまでも当てにできると思い込んではならないと苦言を呈した。

「米国による拡大抑止が確実で信頼できるものであるか、あるいは、韓国が自国の核兵器を保有するかの二者択一だ」とチョン氏はいう。「米軍の兵士を疑ったことは一度もない。しかし、自国の安全保障を米国の政治家に委ねるのは愚策だ」

By Christian Davies

(2022年5月10日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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