[FT]米防衛大手、ウクライナ向け需要急増も部品調達不安

[FT]米防衛大手、ウクライナ向け需要急増も部品調達不安
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB102DH0Q2A510C2000000/

 ※ 「平原」での戦い…、となれば、ジャベリンは、それほど有効じゃないだろう…。
 ※ 森林地帯、であればこそだ…。

 ※ いずれ、「地の利」は、ウクライナ側にある…。

 ※ 「安全保障のパラダイムシフト」は、起こっており、最大の恩恵受けるのは、米ビッグ・ファイブ…、ということのようだな…。

『米防衛大手ノースロップ・グラマンのキャシー・ウォーデン最高経営責任者(CEO)は良い知らせと悪い知らせがあると話した。同社が提供する武器システムの需要は増える見通しだが、サプライチェーン(供給網)の問題により増産できない可能性があるという。
3月、キーウ(キエフ)北部の前線で対戦車ミサイル「ジャベリン」を持ち運ぶウクライナ兵。ジャベリンは地対空ミサイル「スティンガー」とともにウクライナ紛争を象徴する兵器になっている=ロイター

ウォーデン氏は4日、米ワシントン経済クラブで講演し、「備蓄を補充するために、どうやって生産を拡大するかが目下の課題だ」と語った。人手も不足していると認めた。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて西側各国が安全保障戦略を見直し、防衛費を増額するなかで、米防衛大手各社は予想外の収益を手にできそうだ。
ウクライナ侵攻で「恩恵」

米国防総省の主要契約先の「ビッグファイブ」であるロッキード・マーチン、レイセオン・テクノロジーズ、ボーイング、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・ダイナミクスは4月の決算説明会で、防衛費増額により恩恵を受けるだろうと認めた。ロッキード、ノースロップ、ゼネラル・ダイナミクスの株価はロシアのウクライナ侵攻開始以来、12~15%上昇している。

各社は今や米政府だけでなく、ウクライナ侵攻に伴う防衛費増額を表明した欧州各国政府の需要を満たすためにも生産拡大に動くとみられている。

一方で、サプライチェーンや人手不足、インフレ圧力といった増産の妨げとなりそうな問題も待ち構えている。

レイセオンのグレッグ・ヘイズCEOはアナリストに対し、ロシア以外にチタンの新たな調達先が見つからず、地対空ミサイル「スティンガー」については「一部の部品がもう流通していないため」電子回路を設計し直す必要があると明かした。

スティンガーとジャベリンを大量供与

米政府はスティンガーをウクライナに優先的に供与している=ロイター

ともに肩に担いで発射する携行型のスティンガーと対戦車ミサイル「ジャベリン」はウクライナ紛争を象徴する兵器になっている。ウクライナ兵がこれらを使ってロシア軍を撃退しているからだ。バイデン米大統領は3日、ジャベリンを売り込むために米アラバマ州にあるロッキードの工場を訪れた。米国はウクライナに5500基以上のジャベリンを供与している。

米国防総省出身で現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問を務めるマーク・カンシアン氏の推計によると、スティンガーは備蓄分の4分の1をウクライナに供与した。

だが、スティンガーの生産量は極めて少ない。海外のアクティブな顧客は1組織にとどまり、米国は過去18年間購入していない。ヘイズ氏は「スティンガーの部品在庫は極めて少ない」ため、23~24年までは大口の注文に対応できないと語った。

同氏はジャベリンの受注も同様のスケジュールになるとの見通しを示した。ロッキードのジム・テイクレットCEOは8日、米CBSテレビの報道番組「フェイス・ザ・ネーション」に出演し、ロッキードとレイセオンは共同生産するジャベリンの生産能力を現在の年2100基から4000基に高める方針だと話した。

もっとも、生産拡大には「2~3年かかるだろう。サプライチェーンも強化する必要があるからだ」とテイクレット氏は言い添えた。米政府からの21年の受注実績は866基(2億720万ドル分)だった。米国防総省は23年に586基(1億8930万ドル)を要求している。

CSIS防衛産業イニシアチブグループのグレッグ・サンダース副グループ長は、ウクライナ紛争が「従来の東部地域での紛争」に移行しつつあるなかで、現在多用されている中距離のジャベリンはいずれ長距離システムに置き換わるとの見方を示した。このため長距離システムの方が調達リストの上位にくる可能性もあるという。

テイクレット氏の予測によれば、米国の同盟国も新型巡航ミサイルに加え、F-16やF-35などの戦闘機、パトリオット地対空ミサイル、対空機関砲(VAD)といった制空能力を強化するための兵器を求める傾向が強まりそうだ。

安全保障のパラダイムシフト

ウォーデン氏はノースロップの21年1~3月期の決算説明会で「安全保障のパラダイムシフトが世界中で起きており、防衛費の増額を表明する同盟国が相次いでいる」と指摘し、「23年には当社の売上高の伸びも加速するだろう」との見通しを示した。同社の21年の売上高は357億ドルで、22年は362億~366億ドルになる見込みだ。

ドイツのショルツ首相は数十年来の防衛政策を転換し、軍の強化に向けた基金として総額1000億ユーロを確保し、国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げる方針を表明した。一方、スウェーデンとフィンランドでは北大西洋条約機構(NATO)加盟への関心が高まっている。

米エアロダイナミック・アドバイザリーの航空宇宙コンサルタント、リチャード・アブラフィア氏は「残念ながら、過去30年(の相対的に平和だった時代)は例外的な状況にすぎなかった可能性がある」との見方を示した。

同氏は「『私たちは冷戦に勝利し、人間の露骨な侵略行為に終わりを告げた。素晴らしいことだ。もはや(どう猛で力の象徴とされる)ユニコーンを展示したふれ合い動物園でも開けば、皆が満足する』と人々は思い込んでいた。だが、うまくいかなかった」と指摘した。

米防衛各社は増収増益の見通しを示すのはまだ早すぎるとしている。だが、金融情報サービス、モーニングスターのアナリスト、バーケット・ヒューイ氏は22~26年の軍需品の売上高見通しのうち、後半数年間の伸び率を1.5~3%引き上げた。

バイデン政権は23年の国防予算を7730億ドルと見積もっているが、議会の最終承認を得るまでにさらに数百億ドル上積みされるというのが大方の見方だ。米国を取り巻く安保上の脅威が一段と広範かつ複雑になっているからだ。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所によると、米国の軍事支出は世界最大で、21年に初めて2兆ドルを突破した世界の軍事支出のうち、38%を米国が占めた。

最大の脅威はインド太平洋地域

ロシアは深刻な脅威だが、米国防総省は依然として最大の脅威はインド太平洋地域だと明言している。マッコード国防次官は最近、同省の予算では「中国とロシア双方からの攻撃に対処できる基本的軍事力を備えるための投資を最優先した」と米議会で証言し、2正面戦略を実行できる機動性の高いシステムの必要性を訴えた。

アブラフィア氏は「米国はアジア重視への転換を進めてきた。そのために陸上配備型システムの優先順位を下げ、空・海軍の兵力を増強してきた」と語った。だが今や、米国は「欧州での紛争に引き込まれており、陸軍と海軍の間で軍事資金の争奪戦が起きている」と指摘した。最も融通が利くのは防空システムだ。

冷戦終結後、防衛産業の再編が急速に進んだ。1990年代には51社あった米国防総省の主要契約企業は高度な技術力を備えた総合防衛企業5社に集約され、このビッグファイブが多くの利益を分け合っている。

CSISによると、20年の米国防総省の支出全体に占める装備契約の割合は58%と過去20年間で最も高かった。同年の装備契約費4210億ドルのうち、ビッグファイブへの配分比率は36%と90年の19%からほぼ倍増した。

業界専門家によると、欧州企業は多岐にわたる兵器を共同生産しているが、業界には需要に応えて生産能力を高める余力がない。欧州各国は米企業に頼らざるを得ないが、一部の米企業は各国の個別ニーズに合わせて兵器を製造している。

東欧各国は技術的側面だけでなく、細々とでも米国とパイプを保つために米国製兵器を購入しようとするだろう。「米国製兵器を装備できれば、それだけで彼らは少し安心するのだ」とカンシアン氏は指摘した。

By Steff Chávez

(2022年5月9日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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