マクロン氏、新欧州組織を提唱 ウクライナ加盟を想定
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『【パリ=白石透冴】フランスのマクロン大統領は9日、欧州連合(EU)より簡素な手続きで加盟できる新組織「欧州政治共同体」の設立を提唱した。現状のEU加盟基準が厳しすぎるためだと説明した。拡大が容易な組織を設けてウクライナなどを取り込み、欧州の結束を強める狙いがある。
マクロン氏は仏東部ストラスブールの欧州議会での演説で「ウクライナのEU加盟手続きにはおそらく数十年かかる。新しい組織を作れば、(ウクライナなど)欧州の民主主義の国が仲間に加わることができる」などと語った。EU加盟には政治や経済の安定などの条件があり、侵攻で甚大な被害を受けているウクライナには高いハードルとなる可能性がある。
欧州各国で構成し、安全保障を含む政治決断を共同で下す組織を想定しているもようだ。ただ発足の流れや各国の賛同を得られるかなど不明点が多い。
マクロン氏とドイツのショルツ首相は同日、ベルリンで首脳会談を開いた。会談に先立つ記者会見でショルツ氏は「現在の課題に対応するために、興味深い提案だ。(マクロン氏と)この点について議論できることをうれしく思う」と述べた。
ロシアのプーチン大統領に対しては「我々の要求は明確だ。停戦を実現し、ロシア軍が撤退することだ」と改めて批判した。
マクロン氏は7日に2期目の就任式を終えており、初の外遊先にドイツを選んだ。フランスにとってドイツとの関係が最も重要で、歴代大統領は就任後まず訪独するのが慣行になっている。
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説
マクロン仏大統領が提唱した新組織「欧州政治共同体」は、ウクライナと欧州の連帯をより強く示したいという熱意から出てきた構想なのだろうが、「生煮え」である感は否めない。
「安全保障を含む政治決断を共同で下す組織を想定しているもようだ」「ただ発足の流れや各国の賛同を得られるかなど不明点が多い」と、記事にある。
EUの対ロシア経済制裁は、ロシア産原油の禁輸にハンガリーが反対するなど、相変わらず足並みを揃えるのに苦労している。
EUは加盟国が多くなり過ぎた。
そうした中で、ウクライナを取り込む新組織を作る場合、EUに加盟申請をしているものの未承認の国々から含め、さまざまな意見が噴出することは容易に想像できる。
2022年5月10日 7:57
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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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分析・考察
ウクライナを仲間に引き入れるため「第2EU」を結成して有志を集めようという考えでしょうか。
加盟にも、そして離脱にも制約が多い現在のEUの仕組みが窮屈という感覚は分からなくもないですが、同時に危険な提案であるように思います。
まず、第2EUは西欧勢の理念とそりが合わないハンガリーなどとの亀裂を広げるでしょう。
次に、マクロン大統領とドイツのショルツ首相が新機構作りで同調すれば、独仏というEU2大国への力の偏重が強まり、欧州結束に影響を与えかねません。
第3にロシアの反応はどうか。
マクロン氏の2期目の野望が伝わるものの、賢明な考えなのか。詳細がわかりませんが、短慮という印象を禁じ得ません。
2022年5月10日 8:09
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説
英国のEU離脱でEUが分裂の危機に直面していた。
ウクライナ問題によってEUは再び結束を強化している。
しかし、あらゆる地域連携の難題はメンバーの国々が自国の利益を最優先に重視するため、同床異夢の関係になってしまう可能性がある。
目下、ウクライナを取り込むことを優先にされているようだが、ハードルを下げすぎると、連携が弱くなる可能性もある。
2022年5月10日 7:53 』