プーチン大統領 演説で侵攻正当化も「戦争状態」は言及せず
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220509/k10013617871000.html
※ 「戦争」ということになれば、「戦時国際法」が適用されて、いろいろと「制約」も生じて来る…。
※ それこそ、「戦争犯罪」の問題も、浮上して来る…。
※ 「特別軍事作戦」ということにしておけば、「対ゲリラ」「対テロリスト」と言うことで、「戦時国際法」の制約からは、逃れられる…。
※ 「汚い戦い」をやっている…、という自覚はあるんだろう…。


『2022年5月9日 18時37分
ロシアのプーチン大統領は9日、戦勝記念日の式典で演説し「ロシアにとって受け入れがたい脅威が直接、国境に作り出され、衝突は避けられなかった」と述べ、ウクライナへの軍事侵攻を重ねて正当化しました。
一方、一部で指摘されていた、戦闘による具体的な成果や「戦争状態」の宣言については言及しませんでした。
約10分にわたる演説
ロシアでは9日、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利して77年の記念日を迎え、各地で軍事パレードなどの記念式典が行われています。
首都モスクワでは、日本時間の9日午後4時から赤の広場で式典が開かれ、プーチン大統領が演説しました。
およそ10分にわたる演説でプーチン大統領は「去年12月、われわれは安全保障に関するさまざまな提案を行ったが、すべてむだだった」とし、安全保障をめぐるロシアの提案が欧米各国に受け入れられなかったと批判しました。
その上でウクライナのゼレンスキー政権が核兵器を取得する可能性を明らかにしていたなどと、一方的に主張しました。
そして「われわれにとって受け入れがたい脅威が直接、国境に作り出されていた。アメリカやその同盟国が背後についたネオナチとの衝突は、避けられないものになっていた」と強調しました。
そして「NATOの加盟国から最新兵器が提供されるようすを目の当たりにし、危険は日増しに高まっていた。必要で、タイミングを得た、唯一の、正しい判断だった」と述べ、ウクライナを軍事支援する欧米の脅威を背景に軍事侵攻に踏み切ったと正当化しました。
一方、プーチン大統領は、一部で指摘されていたウクライナでの戦闘による具体的な成果や「戦争状態」の宣言については言及しませんでした。
ゼレンスキー大統領「自由な国民支配できる侵略者などいない」
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、新たに動画を公開しました。
このなかで「これは2つの軍隊による戦争ではない。2つの世界観の戦いだ。ミサイルが、われわれの哲学を破壊できると信じている野蛮人による戦争だ」とプーチン政権を非難しました。
そして「ナチズムに勝利したこの日、われわれは新たな勝利のために戦っている。その道のりは険しいが、われわれは勝利を確信している」と述べました。
そのうえで「私たちの土地に根を張ることができる占領者はいない。自由な国民を支配できる侵略者などいない。もうすぐわれわれは勝利する」と訴え、徹底抗戦する姿勢を改めて示しました。
キーウ市民「プーチン発言はどうせ事実ではない」
ウクライナの首都キーウの市民からは、ロシア側にとって都合のいい理屈を並べただけだとして軍事侵攻を止めるべきだとあらためて求める声が上がっています。
このうちスポーツ用品店に勤める33歳の男性は「ロシアでの式典にはまったく興味がありません。プーチンの発言はどうせ事実ではない。軍事侵攻はすぐに止めるべきで、ウクライナ軍のおかげでわれわれが勝つのは間違いない」と話していました。
また弁護士の23歳の女性は「ニュースを見るかぎり、演説では『戦争状態にある』という発言も、ロシア国民を大量動員するという発言もなかったようだが、これはプーチン自身も軍事作戦がうまくいっていないことを認めざるを得ないからではないか」としたうえで「ロシアの軍事侵攻によって、逆にウクライナ国民はますます団結している」と話していました。
演説に対し日本国内からは
ウクライナから和歌山大学に留学しているパーダルカ・オリハさん(22)は自宅で時折、涙を流しながら聞いていました。
オリハさんはウクライナの首都キーウにある国立大学で日本語を学び、ことし3月から和歌山市にある和歌山大学に留学しています。
オリハさんは「演説の内容はすべてうそばかりで、心が傷つけられて涙がこみ上げてきました。多くの人が亡くなっている今の状況で軍事パレードをするのも信じられない」と強く批判しました。
そのうえで「母国の家族や友人、すべてのウクライナの人が無事でいてほしい。戦争がもっと激しくなる心配はもちろんありますが、戦争が早めに終わってほしいです」と話していました。
札幌市に住む、ウクライナ人のベロニカ・クラコワさん(27)は、ロシアのプーチン大統領が戦勝記念日の式典での演説でウクライナへの軍事侵攻を正当化したことについて、「ロシアはとても良いことをしているという、思った通りの内容だった。なぜ市民が爆撃されているのか本当にプロパガンダでしかない」と強く非難しました。
またウクライナに残り、戦闘に参加している父親について「私の父がいる場所は詳しく言えないが、今激しく爆撃されている。父からの返事がないとすごく不安だが信じるしかない」と話していました。
そしてウクライナから避難し、先月9日に来日した母親のナタリアさんについては「来日したときはすごく疲れていたが、ここ1か月で元気になった。もちろん早く帰りたいと言っているし父のことも心配している」と話していました。
モスクワ出身で京都市に住むナイフズ・イアンさんは、自宅でプーチン大統領の演説を聞きました。
ナイフズさんは「とてもつらいです。きょうは先の戦争で犠牲になった家族や友人のことを思うロシア人にとって大切な日です。演説の中で、プーチン大統領は今の軍事侵攻と先の戦争が同じことのように話していましたが、全く違うことだと思います。ロシア人をごまかそうとするプロパガンダだと思います」と複雑な心境を明かしました。
そのうえで「なぜモスクワがこんな状態になり、なぜ今ロシアが戦争をしているのか、演説を見ていてとてもつらい気持ちになりました。開戦の宣言をしなくてよかったですが、ロシア出身者として、どうやって戦争を止めらるか分からず、何もできない無力感があります」と話していました。
40代のロシア人男性は「想像していたよりも演説が短く、新しい情報が盛り込まれていなかったことが印象的だった。役に立つ情報しか出さない今の政権のやり方の1つだと感じた」と話しました。
また、軍事パレードの様子について「私が子どものころ、『戦勝記念日』は戦争で亡くなった人を思い、静かに過ごす思い出の日だった。しかし今は祭りのような盛大な行事になってしまい、戦争に利用するためのものになってしまっている」と話していました。
日本に住む30代のロシア人の女性は「今までロシア人にとって5月9日はたくさんの人が命を落としたことや、戦後の大変な暮らしを思い出し戦争を終わらせてくれたおじいさんやおばあさんに感謝する記念日でした。
けれど、きょうテレビで流れていたパレードはみんなが嬉しそうにしていて、違和感がありました。本来は嬉しい記念日ではありません」と語りました。
そのうえで、ロシアによる軍事侵攻について「最近はロシア国民が戦争に慣れてきてしまい良くないことだと思っている。早く終わってほしいがどうすればいいかまったく分かりません」と話していました。
北方領土の元島民で、千島歯舞諸島居住者連盟根室支部の角鹿泰司支部長代行(85)は根室市内の自宅のテレビでプーチン大統領の演説を聞きました。
角鹿さんは「自分の国のことしか考えておらず、ウクライナのことを1つも考えていない。演説で言っていたことをプーチン大統領にそのまま返してあげたい」と話しました。
そのうえで「北方四島の返還を求めている身としては、いち早くこの軍事侵攻が終わって元に戻ってもらいたい。返還運動は続けていく」と話していました。
日本の政界反応
自民党の茂木幹事長は、記者会見で「明らかに誤った行為を正当化するための発言だ。
力による一方的な現状変更の試みは、世界のどこにおいても断じて受け入れられず、国際社会が一致団結して、ロシアに厳しく対応していくことが必要だ」と述べました。』