G7、ロシア産石油の輸入禁止 日本も原則禁輸表明

G7、ロシア産石油の輸入禁止 日本も原則禁輸表明
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『【ワシントン=鳳山太成、ベルリン=南毅郎】米欧日など主要7カ国(G7)の首脳は8日、ウクライナのゼレンスキー大統領を招き、同国への支援やロシアへの追加経済制裁についてオンラインで協議した。共同声明でG7としてロシア産石油の輸入禁止に取り組むと表明した。日本も原則禁輸の方針を示した。米国は取引禁止や輸出規制などの経済制裁を強化する。英国もウクライナへの軍事支援を拡大する。

ロシアが第2次世界大戦の対ドイツ戦勝記念日を9日に迎えるのにあたり、一定の「戦果」を示そうと攻勢を強めている可能性がある。節目の日を前にG7として結束を示す狙いがある。議長国ドイツのショルツ首相は8日公表の談話で「侵略者と戦うウクライナを支援する」と強調し、ロシアへの圧力を強めた。

共同声明は「ロシア産石油の段階的な輸入停止か禁止など、ロシア産エネルギーへの段階的な依存脱却に取り組む」と明記した。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は4日、年内に停止する案を公表した。米国や英国、カナダは表明済みで、G7として明確に打ち出す。

岸田文雄首相は9日未明、G7首脳とのオンラインでの協議に参加し、ロシア産石油を原則禁輸にする措置をとると表明した。これまで慎重な姿勢を示してきた日本も、G7各国と足並みをそろえて制裁強化に動く。

このほか共同声明では、ウクライナへの軍事支援の継続や、エネルギーや食糧の供給安定に向けた対応も盛り込んだ。ロシアの侵攻後、G7は240億ドル(約3兆円)を超える規模の追加的な支援を進めてきており、今後は具体的な復興対応も検討する方針だ。

招待を受けたゼレンスキー氏は「領土からロシアの軍隊と装備を完全に撤退させ、将来的に自衛能力を確保することがウクライナの究極の目的だ」と述べた。ウクライナ経済の安定に向けて、G7と緊密に協力していくことも確認した。

米国は対ロシア制裁を強める。米国企業がロシアの企業に会計やコンサルティングのサービスを提供するのを6月7日から禁じる。資産隠しなど、米欧日の経済制裁を避けるためのノウハウをロシア側に渡さないようにする。

ロシアの政府系テレビ局3社を制裁対象に加える。米国企業がカメラなどの放送機器を売ったり広告を出したりするのを禁じる。侵攻の正当性を主張するロシア政府のプロパガンダを食いとめる。

ロシアへの輸出規制品目も広げる。これまでは半導体やセンサーなどハイテク製品の輸出を事実上禁じてきたが、さらに産業機械用のエンジンやモーター、ブルドーザーなども加える。軍事品の生産や開発に打撃を与える狙いだ。

ロシアの政府高官や企業幹部など個人への制裁も拡大する。同国の最大手銀行ズベルバンクの幹部8人のほか、3位のガスプロムバンクの幹部27人を新たに資産凍結や取引禁止の対象とした。

他行に科している取引禁止の制裁をガスプロムバンクに適用するのは引き続き見送る。同行はエネルギー取引に強い。欧州の天然ガス調達に悪影響が及ぶリスクを考慮した。

一方、英政府はG7オンライン協議にあわせて、ウクライナへの継続的な軍事支援のために13億ポンド(約2100億円)を新たに準備したと表明した。ウクライナのニーズに応じて順次拠出する。累計の支援額は約30億ポンドとなる。英政府は2000年代初頭のイラクとアフガニスタンでの戦争以来の拠出額になるとしている。

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赤川省吾
日本経済新聞社 欧州総局長
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ひとこと解説

欧米はエネルギーの「脱ロシア」を急速に進めており、日本の対応が後手に回っています。日本はロシアでの資源開発を続けていますが、もはや現実的ではありません。

「米国は日本に禁輸を要請していない」「日本がロシアから買わなければ中国が買うので制裁する意味がない」。日本政府は、こう主張してきました。

けれどもウクライナ侵攻以降、米国はもとより欧州も本気で「脱ロシア」に転じました。
今回は石油だけですが、遅くとも来年にはガス禁輸にも踏み込むでしょう。来年は日本がG7議長国。ロシアで資源開発を続ける唯一のG7加盟国になってはならないと思います。

2022年5月9日 3:38 (2022年5月9日 3:39更新)

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松尾博文
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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分析・考察

日本のロシア産原油の輸入は全体の3.6%(2020年)。代替は可能でも、その調達先は高い確率で中東になる。

G7の輸入禁止への同調はやむを得ないが、1973年のオイルショック以降、日本が取り組んできた中東への依存度軽減と調達先分散の重要なソースを失うことでもある。日本の原油の中東依存度は92%。石油ショック時をも上回る高い依存率をさらに高めることがエネルギー安全保障上、好ましくないことは自明だ。

ウクライナ危機が突きつけた供給途絶のリスクは中東も例外ではない。石油危機をきっかけに加速した残る2つの選択肢、石油以外へのエネルギー多様化、エネルギー消費を減らす省エネが改めて求められることになろう。

2022年5月9日 3:24 (2022年5月9日 3:28更新) 』