米政権にインフレの逆風 中間選挙まで半年、支持率低迷

米政権にインフレの逆風 中間選挙まで半年、支持率低迷
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『【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領への審判となる連邦議会の中間選挙が半年後に迫った。バイデン政権は長引くインフレなどで支持率が低迷し、与党・民主党は上下両院での過半数維持が危うい状況だ。2024年の大統領選をにらむトランプ前大統領は推薦候補を選挙に送り込み、野党・共和党内で勢力拡大を狙う。

11月8日投開票の中間選挙は任期6年の上院(定数100)の3分の1(35議席)と任期2年の下院の全435議席を争う。共和党が多数派を奪還すればバイデン政権の政策が一段と停滞するおそれがある。

20年の選挙では大統領と上下院の多数派をいずれも民主党が占める「トリプルブルー」を勝ち取ったが、数は拮抗する。

バイデン氏は4月30日、ホワイトハウス記者会主催の夕食会で演説し「(議会で)党派の膠着状態がさらに続くかもしれないが、大統領として残りの任期中に解決できると確信している」と述べた。次の大統領選に意欲を示しつつ、11月8日投開票の中間選挙は厳しい戦いになると認めた。

裏付けるのが米国の世論調査だ。米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスによると、21年1月の発足直後に56%だったバイデン氏の平均支持率は5月5日時点で42%に落ち込んだ。

中間選挙で惨敗し、政策の停滞を招いたオバマ政権2期目の支持率を下回る。アフガニスタンからの米軍撤収を巡る混乱で国内外から批判を浴びた21年8月以降、不支持率が支持率を上回る状況が続く。

足元では歴史的なインフレが低支持率に追い打ちをかける。ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が8.5%と約40年ぶり水準を記録した。資源高によるガソリン価格高騰などで有権者の不満は募る。

米紙ワシントン・ポストと米ABCテレビが4月24~28日に実施した世論調査によると、インフレ対策への支持は28%だったのに対し、不支持は68%に達する。現在のインフレ水準について44%が「怒りを感じている」、50%が「懸念している」と回答した。

保守派とリベラル派が対立する女性の人工妊娠中絶も論点に急浮上した。米メディアが米連邦最高裁が中絶を憲法上の権利と認めた1973年の判決を覆すと報じた。伝統的に中絶を認めていないキリスト教保守派を重要な支持母体とする共和党と、女性の選択の権利を重視する民主党との間で、中絶の是非は最大の争点の一つだ。

最高裁の方針転換の背景には「トランプ人事」がある。最高裁判事の構成はトランプ氏が大統領当時に保守派3人を指名し、現在は保守派が6人、リベラル派が3人と保守派優位だ。

バイデン氏が2月に指名したリベラル派のケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏の承認人事では、共和党から重鎮のロムニー氏ら3人の上院議員が賛成した。3人は連邦議会占拠事件に関する21年2月のトランプ氏の弾劾裁判でも有罪評決の支持に回った造反組だった。

トランプ氏は、そのうちのひとりで次の中間選挙で改選となるマコウスキー氏が出馬するアラスカ州の予備選に「刺客」となる対立候補を擁立した。ポスト紙によると、トランプ氏は上下両院で40人超の候補を支援し、党内での影響力拡大へ足場を固めようともくろむ。

トランプ氏を前面に出して選挙戦に臨むことは、党派対立や過激な主張を敬遠する中間層の浮動票が離反するリスクと背中合わせでもある。

米メディアでは、特に下院選での民主党の苦戦を予想する見方が多い。中間選挙で共和党が多数派となれば、上下両院で過半数を持つ現在ですら法案成立に苦戦するバイデン政権の政策実行力はさらに鈍る事態に陥る。

中絶を巡る最高裁の方針に反発する民主党リベラル派は、支持層を結束させる材料になると位置づけ、中間選挙で民主党に投票するよう働きかけを強める。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

バイデン政権にとって黄色い信号が点滅している。まあ、ポピュリズム政治がここまで蔓延ると、誰がやっても、支持率が上がらない。そのなかでこの人の内政と外交のいずれもアメリカ人に好かれないだろう。アフガン撤兵の混乱ぶりからみても、組織力のなさがすでに明らかになっている。ウクライナ問題も最初は制裁や支援や結構やっているなと思いきや、今、息切れ感が出てきた。内政に目を転じると、インフレ抑制のために、有効策が打たれず、FRBは拙速な利上げを決定。アメリカはここまで混乱すると、世界は大混乱に陥る
2022年5月8日 7:48
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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

今朝来たNYタイムズのニューズレターのタイトルは「この戦争はもっと危険度を高め、それをバイデン大統領は知っている」。そして同レターのトップニュースは「中絶を巡る論争が米国をさらに分断させる」。中間選挙ではインフレ懸念が最大の論点となっている一方、ウクライナ危機はまだ当然予断を許さない状況であり、そんななかで民主党に数少ない追い風となっているのが最高裁の漏洩をきっかけとする中絶問題というのが現在の構図ではないかと思います。議会3誌の一つポリティコの今朝のトップ記事では、「民主党は盛んに中絶問題を論点化しようとしているのに対し、共和党はインフレ等の経済問題を論点化しようとしている」と報じています。
2022年5月8日 8:14 (2022年5月8日 8:22更新) 』