中国ワクチン輸出97%減 オミクロン型に効果低く

中国ワクチン輸出97%減 オミクロン型に効果低く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2105R0R20C22A4000000/

『中国製の新型コロナウイルスワクチンの輸出が急減している。国連児童基金(ユニセフ)によると、ピークだった2021年9月に比べて4月はわずか3%に落ち込んだ。感染力の強い変異型「オミクロン型」の感染予防効果が欧米製より劣ることが影響したとの見方もできそうだ。ワクチン提供と引き換えに途上国で展開している「ワクチン外交」の逆風となる。

中国医薬集団(シノファーム)、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)、康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)の輸出量を集計した。瓶詰めなど一部工程を海外でてがける量を含む。4月は計678万回分で昨年9月(2億2508万回分)から97%減った。英調査会社エアフィニティのデータでも同じ傾向が裏づけられる。

一方、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンは4月の輸出量が5569万回。昨年9月比の減少幅は71%で、輸出量は中国勢の8倍超。米モデルナも4月は同57%減の1649万回で、初めて中国3社を上回った。

エアフィニティによると、中国製ワクチンは1~2回目の接種では使われても3回目の追加接種(ブースター接種)では利用が激減している。パキスタンは1回目と比べて3回目が98%減、インドネシアは93%減、バングラデシュは92%減、ブラジルは74%減だった。北京の調査会社ブリッジ・コンサルティングによると、ブラジルとインドネシアは21年に終了した中国製ワクチンの購入契約を更新しなかった。

新型コロナワクチンは中国、欧米勢ともに20年末ごろに実用化したが、輸出では中国勢が先行した。東南アジア、中東、南米などにいち早く供給し、20年12月~21年3月は中国3社がファイザーを上回った。欧米製はまず先進国が大量確保し、新興国や発展途上国は中国製しか選べなかった事情もある。

いったんはファイザーに抜かれたが21年9月に再逆転した。習近平(シー・ジンピン)国家主席も「世界の防疫に貢献している」と自賛したが、勢いは続かなかった。

背景にあるのが昨秋からのオミクロン型の感染拡大だ。中国の衛生当局も「中国製ワクチンのオミクロン型への有効性は下がる」と認める。香港大などが3月に公表した論文では、香港でワクチンを2回接種後に感染した約4300人の調査で、シノバックを接種した人の重症者はファイザー製の3倍以上だった。

中国勢は「不活化ワクチン」という昔ながらの技術が中心。遺伝情報物質を投与する「メッセンジャーRNA(mRNA)」という新技術を使うファイザーやモデルナに比べて「有効性は低い」(米マサチューセッツ大医学部の盧山教授)との指摘はかねてあった。

ワクチンの需要は世界で減少傾向だ。英オックスフォード大の研究者らが集計した「アワー・ワールド・イン・データ」によると、足元の1日あたりの接種回数(7日移動平均)は約1050万回と、昨年末から71%減少した。

エアフィニティのマット・リンリー氏は「オミクロン型は重症化しにくく、人々はワクチン接種の繰り返しに消極的」と説明するが、それを考慮しても中国製ワクチンの減少ぶりは突出する。中国国内のワクチン接種率は非常に高く、国内で需要が増えて輸出に回せないわけでもない。

中国製ワクチンの急減は「ワクチン外交」にも影を落とす。中国は途上国にワクチン供与をちらつかせ、台湾問題などで自らの主張に賛同するよう迫ってきた。南米ガイアナは対外事務所開設で台湾といったん合意したが、中国のワクチン寄付表明を受けた後の21年2月、合意を破棄した。

アジアで新型コロナの新規感染者が減るなか、中国では上海などで感染が止まらない。「中国本土では有効性の低い国産ワクチンしか許可されていないことが一因」(大連市の30代の男性会社員)との不満も出ている。

(大連=渡辺伸、武田健太郎)

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Spotlight/Coronavirus/COVID-vaccines/China-s-vaccine-diplomacy-spoiled-by-omicron-variant?n_cid=DSBNNAR 

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

ウィルスの感染力が強くなっているが、感染した場合の重症化リスクが低下していることから、ワクチンを接種するニーズが大幅に低下している。

もともとメッセンジャーワクチンと比べ、中国製不活化ワクチンの効果が低いといわれている。

中国は海外からワクチンの輸入を抑えているため、国内では、中国製ワクチンを接種されている。輸出にあたって、大幅に減少するのは想定内のことと思われる

2022年5月8日 7:36

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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ひとこと解説

中国がゼロコロナ政策を軌道修正できないのも、中国製の不活化ワクチンの有効性が低いためです。

ならばmRNAワクチンに切り替えればよさそうですが、バイオ創薬はノウハウのかたまり。開発は容易ではありません。

第3臨床試験まで進んだmRNAワクチンは世界で9つ。うち6つはモデルナとファイザーによる今とは別のワクチン。残り3つのなかに中国製ワクチン(雲南沃森生物技術などが開発中)があります。

ところがそこで開発が難航しているのです。「中国、新技術ワクチン開発難航――低い有効性、信頼回復遠く」(3月10日付日経)はその辺の事情を掘り下げています。国産にこだわり時間を空費するのはもはや〝人災〟とも思えます。

2022年5月7日 21:44 (2022年5月7日 22:50更新)』