ロシアのネオ・ナチ : 机上空間

ロシアのネオ・ナチ : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/28659611.html

『ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ侵攻の理由として上げているのが、ウクライナのネオ・ナチとウクライナ現政権との癒着、そして、ロシア系ウクライナ人に対する迫害です。最初に理っておきますと、これは、まったくの虚偽ではありません。ロシア親派の前大統領であるヤヌコビッチ氏が、国外逃亡を余儀なくされた時、政権打倒を祝う群衆の中で、ネオ・ナチの旗が翻っていました。

この革命騒動は、最も一般化すると、EU参加を求める国民と、それをロシアの影響を受けて、阻止しようとしたヤヌコビッチ氏が、対立し、市民のデモ隊に対して、秘密警察による暴力による鎮圧を計った事により、抗議活動が全国的に広がり、政権が倒れたと説明されています。まぁ、概要を短文で説明しろと言われたら、間違いではありません。しかし、国政というのは、そう単純なものでもなく、争いのあるところには、すきを狙って、様々な勢力が入り込んできます。

このブログで何回か説明した通り、歴史的な経緯で、ウクライナにおけるナチス・ドイツというのは、スターリンのソ連の圧政から解放してくれた解放軍と認識されています。実際、ドイツ軍がウクライナを制圧した時は、歓迎されて、ソ連に協力していた共産党員が、ドイツ軍へ突き出されています。その為、国政とナチズムというのは、切っても切れない縁でした。ネオ・ナチによる、ウクライナの左派議員への襲撃なども起きています。

それと、良く誤解されるのですが、ゼレンスキー大統領がユダヤ系の家系だから、ネオ・ナチと関係があるはずがないと説明する人がいますが、ウクライナにおける排斥すべき人種は、ユダヤ人ではなく、ロシア系ウクライナ人です。これも、何回か歴史的な経緯を説明していますが、スターリンが起こした人工飢饉であるホロモドールで、餓死したウクライナ人の土地を引き継ぐ形で入植してきたのが、ロシア系ウクライナ人です。なので、地方によっては、日常の言語がロシア語の地域があります。つまり、ウクライナというのは、人種間紛争の坩堝と言って良い土地柄なのです。

ゼレンスキー大統領も、就任直後ぐらいは、ネオ・ナチと対立路線を見せていましたが、結局のところ、ドンバス地方やクリミヤでロシアの圧力が高まると、カウンターで対抗する戦力として、ネオ・ナチの勢力と握手しています。勲章も授与していますし、国家の会合にネオ・ナチのリーダーを呼んでいます。必要から武装勢力と手を結ぶというのは、国情が不安定な国では良くある事です。それで、国を乗っ取られるのも、良くあります。カンボジアのポルポト政権なんかが好例です。

では、ロシアにネオ・ナチはいないのかと言えば、まったくそんな事はありません。ロシアのネオ・ナチは、ウクライナとは違って、侵略の歴史の結果ではなく、エリツィン大統領時代に混乱したロシア経済の結果として生まれました。エリツィン大統領は、改革派の騎手として、様々な政策を実行しますが、この時に西側に良いように取り込まれて、かなりロシアの資産を食い物にされています。大統領の任期後期には、病気と精神の衰弱で、まともに政権を維持できなくなり、エリツィンの親族が政治に口を出して、利権を漁るという腐りきった状態になっていました。この時のクレムリン宮殿大改修工事に関わるスキャンダルを揉み消して、功績を認められたのが今のプーチン大統領です。この事のプーチン氏は、権力の譲渡が完了するまで、徹底して、エリツィン氏の飼い犬を演じていました。

経済の混乱は、道徳の低下を生み、ロクに教育を受けられない多数の若者を生みました。どの時代でも、貧乏でコネの無い人間の頼みの綱は、その国の軍隊です。新兵として入隊した若者の10%が、読み書きができなかったと言います。そんな昔の話ではありません。

経済が困窮すると、一番簡単な不満の捌け口は、全ての責任を特定の対象に押し付ける事です。ロシアの場合、自分達よりも余裕のある暮らしをしているように見える外国人に向きました。ここでの外国人は、ロシア人以外と言う意味で、白豪主義とは少し違います。ただ、ロシア人の人種的な純血とか、外国人の排斥を言っているので、ナチズムとは親和性が高く、彼らの旗印は、鉤十字のシンボルですし、ナチス式の敬礼もします。頭は、連帯感を出す為に、スキンヘッドが標準で、多くの場合、入れ墨もセットです。典型的な右翼スタイルですね。

しかし、彼らは、深い絶望を味わった分、実際に酷く暴力的で、外国人旅行者を人種に関係無く、徒党を組んで襲撃したりします。ロシアという広い国土の中には、人種で言えばアジア、アラブ人。宗教で言えば、イスラム教徒もいますが、ロシア人(スラブ系民族)、ロシア正教徒以外は、全て排斥の対象です。なので、最終的には、全てロシアの国土から駆逐するべきと主張しています。実際、ロシアを旅行する場合、スキンヘッドを見かけたら、近づかないというのは、常識です。

ナチスに侵略された歴史を持つロシアにとって、これは都合の悪い事実なので、多くのロシア国民は知らないフリをしています。もしくは、愛国というオブラードに包んで、存在しない事にしています。場合によっては、非難の対象にもなります。ただ、経済的困難に巻き込まれた(悪い時期に生まれた)若者の攻撃性は、そんな事では収まるはずもなく、他民族に対するリンチや暴行、襲撃という形で噴出しています。悪いのは全部外国人というのは、ロシア政府も暗に利用してきた責任回避の方便でもあったので、強く取り締まる事はありませんでした。

ネオ・ナチと言っても、結局は、その地域のナショナリズムと結びつく、人種的優越性・外国人排斥・人種的純血崇拝の思想なので、迫害の対象がユダヤ人とは限らないし、その原因は、戦争や支配、差別や貧困から生まれた不満です。なので、ネオ・ナチの支部は、世界中にあります。アメリカにもあります。そして、政情が不安定な国では、国政レベルの影響力を持っているのです。

ネオ・ナチ一つをとっても、その国の歴史・経緯があるので、定型文で語れるものではありません。なので、国際紛争を評価する場合、ロシアの言い分にも正しいところがあるとか、ウクライナにも悪いところがあるとか言っても埒が明かないのです。つまり、解決するのに取った手段が、国際秩序に反しているかどうかで判断するしかありません。「力による一方的な現状の変更」を行使した時点で、他の事がどうであっても、ロシアが全面的に罰せられなければなりません。

仮に、ウクライナ人が、国内でロシア系ウクライナ人狩りを、ガンガンやっていたとしても、それに対する制裁は、一国の独善的な判断ではなく、国連で事実の調査を行い、合議の結果として、ウクライナに罰が与えられなくてはならないのです。もし、それが事実なら、経済制裁でも国連軍の派遣でも、あらゆる手段を使って、ウクライナに制裁すれば良いだけの話です。そうでない時点で、全ての非はロシアにあります。常任理事国が、やってはいけない事を、やったのです。』