プーチン氏、外相発言巡りイスラエルに謝罪 仲介役期待

プーチン氏、外相発言巡りイスラエルに謝罪 仲介役期待
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR062MM0W2A500C2000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎】「ヒトラーがユダヤ系だった」というロシアのラブロフ外相の発言にイスラエルが猛反発した件で5日、ロシアのプーチン大統領が謝罪した。プーチン氏の外国への謝罪は珍しい。ロシアはウクライナ侵攻を巡り、米欧から厳しい制裁を受け、経済が揺らいでいる。ウクライナとの仲介役を名乗り出ているイスラエルが米欧とのパイプ役になる可能性も考え、関係を重視したとの見方がある。

5日にプーチン氏とイスラエルのベネット首相が電話で話した後、同国首相府が発表した。具体的な謝罪の内容は明らかにしていない。首相府は、ベネット氏が謝罪を受け入れたうえで、プーチン氏がユダヤ人とヒトラーが率いたナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の「記憶への態度を明示したことに感謝した」と説明した。

ロシア側はプーチン氏による謝罪の有無を明らかにしていない。
ベネット氏はロシアとウクライナの仲介役を買って出ている=AP

ラブロフ外相は1日放送されたイタリアのテレビ局のインタビューでヒトラーに「ユダヤ人の血が流れている」と発言。ホロコーストが建国につながったイスラエルのラピド外相は「許されるものではない」と批判したが、ロシア外務省は「ラピド氏が反歴史的な発言」をしたと表明し、ラブロフ氏の指摘を正当化していた。

そのうえでのプーチン氏の謝罪は、ロシア外務省の主張を否定する行為で、異例だといえる。イスラエルとの関係悪化を恐れたとの見方が多い。

プーチン氏がイスラエルに気を使うのは、ベネット氏がウクライナとの仲介役を続けると表明しているためだ。トルコのエルドアン大統領らも仲介役を買って出ているが、ウクライナを支援する米国との関係はイスラエルの方が圧倒的に良好だ。国際社会で孤立を深めるなか、イスラエルとの連絡を維持すれば、米欧と対話が必要になった場合、役立つと考えているとみられる。

イスラエルがウクライナを軍事面で支援する可能性を消す狙いもある。同国のゼレンスキー大統領は3月、イスラエル国会でのオンライン形式の演説で「なぜ、あなた方から武器を受け取れないのか」と発言し、武器供与を求めていた。念頭にあるのはイスラエルの対空防衛システム「アイアンドーム」だ。イスラエルはこれを使い、敵対するパレスチナ側からの攻撃の多くを防いできた。

ゼレンスキー氏は自身がユダヤ系だと公言している。4日には、ラブロフ氏の発言を巡り、ベネット氏と電話で協議した。イスラエルとウクライナの接近を、プーチン氏は阻みたかった。

ユダヤ人社会は米国や欧州主要国にも広がり、金融やメディアに大きな影響力を持つとされる。ロシアは主要銀行がすでに国際銀行間通信協会(SWIFT)システムから排除され、貿易の基盤である外国と資金のやり取りが大きく制限されている。プーチン氏とすれば、いたずらにユダヤ人社会を敵に回しても有効でないと判断してもおかしくはない。
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

プーチン大統領が謝罪をするというのは極めて珍しいが、それでも謝罪せざるを得ないほど、ロシアは孤立化を恐れているということなのだろう。

また、ラブロフ外相や外務省とプーチン大統領の立ち位置が異なっているという点も気になるところ。ロシア政府内での横のつながりや戦略的方針のちぐはぐさが、結果的に今後の停戦交渉や終戦に向けての意思決定の不安定さを示唆している。

プーチン大統領の閣僚に対する権力掌握にも疑問を抱かせる一件。

2022年5月7日 4:28』