[FT]干上がる「アフリカの角」 2000万人が飢餓の危機

[FT]干上がる「アフリカの角」 2000万人が飢餓の危機
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB060LE0W2A500C2000000/

 ※ 全く、世の中うまく行かないことだらけだ…。

 ※ こういう状況下で、世界最大級の小麦産地・輸出国のウクライナが、あの体たらくと来ている…。

 ※ 「餓死者」も出そうな深刻な状況のようだ…。「ラクダ」も生き残れない旱魃とか、想像を絶するな…。

 ※ 「気候変動」も、影響しているんだろうか…。

『250頭いたヤギの最後の1頭が死んだ時、牧畜民のアフドゥライ・アブディ・ワリさんは悟った。99年生きてきた中で「最悪」の、この干ばつから逃げ出さねばならない、と。
干ばつに見舞われているエチオピアの平原(世界食糧計画提供)=ロイター

「干ばつで土地を離れなければならなくなったのは初めてだ」。東アフリカのエチオピア南東部でのほぼ1世紀を振り返って、ワリさんは話した。

家畜が死んでしまった後、ワリさんは灼熱(しゃくねつ)の太陽の下で5日間歩き、ゴーデ郊外の仮設キャンプにたどり着いた。エチオピアの牧畜民1万人を収容して食料と水を提供している場所だ。

ケニア北部からソマリア、エチオピアの一部地域にまたがる「アフリカの角」では、すでに過去40年間で最悪となっていた干ばつが雨期の到来の遅れでさらに悪化し、2022年に最大2000万人が飢餓に陥る恐れが生じている。

直近の3つの雨期が小雨で4期目も同じになりそうな状況にある。作物は消えうせ、エチオピア南東部のソマリ州だけで100万頭以上の家畜が死んでいる。

ウクライナ戦争の余波

すでに壊滅的な状況であるのに、また雨期に雨が降らなければ過去1世紀で最悪の干ばつになると住民は危惧している。しかもウクライナでの戦争で、この地域も大きな影響を被る恐れがある。ウクライナ紛争で食料価格ばかりか肥料も数百万人の農民が買えない水準まで値上がりする恐れがあり、23年の収穫が危ぶまれる。

「世界的に、前例のないニーズの1年に直面している。紛争、気候ショック、食料・燃料価格の高騰で、何百万もの人たちが人道支援を必要としている」と国連世界食糧計画(WFP)のマイケル・ダンフォード東アフリカ地域局長は言う。

地球の気温が上昇する中で、アフリカの角の乾燥・半乾燥地帯での食料確保は一層危うくなっていると専門家は指摘する。干ばつは今に始まったことではないが、頻度と強度を増している。08年以降、この地域はほぼ毎年、干ばつに見舞われている。11年にはソマリアの飢饉(ききん)で25万人が死亡したとされる。

アフリカの角では各地で史上最高気温が観測されている。この40年間、雨期はますます短くなり、平均降水量は減少の一途をたどっている。

4月、エチオピアのゴーデで世界食糧計画が支援した小麦の袋を運ぶ男性=ロイター

そして今、エチオピアのソマリ州の村々では長老たちが、飢えかけたハイエナやサル、イボイノシシが食べ物を求めて栄養失調の子どもたちに襲いかかるほど深刻な状況だと話す。ゴーデからほぼ30キロメートル離れたガビア村の長老、モハメド・ダガネ・ディガベさんは「子どもたちを守るために町(ゴーデ)へ移さなければならなかった」と話した。

だが、逃げる先がない人も多い。

「地域全体のことなので、近隣の地区へ移るという選択肢はない」とソマリ州のムスタファ・モハメド・オマル知事はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙に語った。「ソマリアもケニアも、エチオピアのオロミア州も影響を受けている。この50年近くなかったほどの干ばつであることは確かだ。この100年なかったことだとも人々は言っている」

WFPはソマリアでひどい飢饉が発生する危険があると警告している。イスラム過激派による暴力が吹き荒れる同国で、総人口の4割にあたる約600万人が深刻な食糧難に直面している。一部の専門家によると、暴力より飢餓を逃れようとして国外に脱出する人のほうが多いという。

北部ティグレ州での激しい内戦に揺れるエチオピアでは、紛争の影響により同州と近隣のアムハラ、アファール両州ですでに900万人が食糧難に陥っていたが、WFPによると、ソマリ州など南部と南東部でさらに700万人が飢餓に苦しんでいる。

経済繁栄と安定度が上回るケニアでも、干ばつで300万人以上が深刻な食料難に陥り、支援を必要とする人が2年足らずで4倍以上増えた。「雨が予測できず、ケニア北部の大部分の人々を支える半遊牧の牧畜はますます持続困難になっている」と警鐘を鳴らすのは、同国の首都ナイロビでシンクタンク、国際危機グループ(ICG)のアフリカプログラムを統括するムリティ・ムティガ氏だ。「これは非常に大きな不安定化の要因となる」
4月、栄養失調でエチオピアのゴーデの病院に運び込まれた子供=ロイター

ゴーデの総合病院にある栄養失調の子どもの病棟では、体重が標準の半分しかない2歳児たちを医師が手当てしている。モハメド・アブディ・カッサ医長は「干ばつが終わらないので、栄養失調の患者の増加を見込んでいる」という。

WFPのダンフォード氏は、「干ばつに見舞われているアフリカの角の各地域において、私たちの目の前で広がっている紛れもない危機がある。ソマリアでは、雨が降らなければ数カ月内に飢饉が発生しうる非常に現実的な危険がある」と話す。十分な資金が拠出されないと、危機が広がっても人道支援機関は対応できないという。「人々が死ぬことになる。ごく単純な話だ」

WFPだけでも、当該3カ国での支援拡大に今後6カ月間で4億7000万ドル(約614億円)以上が必要と推計している。だが、資金拠出国側はコロナ下での財政出動に加えてウクライナ紛争にも気を取られ、十分な資金が集まる見込みは薄いと専門家はみている。ある外交官は「どこももうお金がない」と話す。

援助機関が持つ極めて重要な小麦は、(ともに主産地の)ウクライナ産とロシア産の備蓄が乏しくなっている。エチオピアでWFPと同国政府は、配給する小麦の約75%を2国から調達している。黒海沿岸地域産の小麦価格は21年以降、ロシアのウクライナ侵攻を主因に67%も跳ね上がっている。

「より大規模なウクライナでの非常事態やエチオピア北部での紛争に関心が集中していることが大きな原因となって、状況はさらに悪くなるだろう。物資などもそちらのほうへ振り向けられ、食料価格も世界的に高騰している」とソマリ州のオマル知事は語った。
ラクダも生き残れない

8人の子を持つ母親で、ゴーデ郊外の別のキャンプに最近移ったハリマ・モハメド・アブディさんは、先行きに不安を感じている。「これまでの干ばつでは、羊やヤギ、牛を失ってもラクダは生き残った」。それが今は、一般的に干ばつに耐えられるラクダも死んでいる。

「たとえ雨が降ったとしても、私たちにはもう何も残っていないので、政府や援助機関の支援を期待している」とアブディさんは話した。「助けがなければ、私たちも乾きと飢えで死んでしまう」

By Andres Schipani & David Pilling

(2022年5月3日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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