北朝鮮「核攻撃力」誇示か 今年13回目、多様な形態試す
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『【ソウル=甲原潤之介、細川幸太郎】韓国軍合同参謀本部は4日、北朝鮮が同日正午すぎに平壌近郊の順安(スナン)から日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射したと発表した。3月には大陸間弾道ミサイル(ICBM)級、4月には新型の短距離弾を飛ばし、多様なミサイル技術を試す。核攻撃力を誇示する狙いとの見方も出ている。
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北朝鮮のミサイル発射は4月16日以来となる。日本の防衛省によると、2022年に入り13回目となった。
鬼木誠防衛副大臣は4日、防衛省で記者団に1発の弾道ミサイルが最高高度800キロメートル程度、距離500キロメートル程度で飛んだと明らかにした。日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したと推定されると話した。船舶などの被害の報告はないという。
岸田文雄首相は4日、「地域や国際社会の平和と安定・安全を脅かすもので断じて容認できない」と強調した。訪問先のローマで同行記者団の質問に答えた。日本政府は北朝鮮に北京の大使館ルートを通じて抗議した。
韓国の次期政権で国防相候補の李鐘燮(イ・ジョンソプ)氏は4日、国会の人事聴聞会でミサイルの特性を説明した。「ICBM級の可能性もあるが、それより射程が短いかもしれない」と述べた。
韓国の聯合ニュースはICBM級「火星15」を飛距離を短くして発射したとの専門家の分析を紹介した。中距離弾なら射程5000キロメートルで日本全土や米領グアムが入る。「火星15」なら米本土に届く。
北朝鮮のミサイルは種類が多様になっている。1月以降、短距離、中距離、ICBM級に加え「極超音速型」と主張する新型ミサイルや巡航ミサイルも試射した。4月に撃った短距離弾は「戦術核の運用」と位置づけた。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記は4月25日、核兵器について「戦争防止という一つの使命だけに縛られない」と述べた。核攻撃を選択肢として排除しない姿勢を示唆した。核使用の意思と能力を示すことで米国や韓国、日本に脅しをかける狙いがあるとみられる。
核を搭載したミサイルを実用化するには、ミサイル技術に加え核弾頭を製造する技術が必要になる。北朝鮮は2017年までに核技術の保有をめざし、6回の核実験を繰り返した。戦術核の実用化には追加の実験が必要との見方がある。
韓国では10日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が大統領に就任し新政権が発足する。21日に米国のバイデン大統領との初会談を調整している。バイデン氏の韓国訪問の前後に北朝鮮が7回目の核実験を断行するとの観測が出ている。
李鐘燮氏は国会での説明で「核実験を準備していると推定する。小型の戦術核兵器の方(の実験)ではないか」と語った。試射を繰り返す多様な種類のミサイルに小型核を搭載できるようになれば、日米韓は戦術核による攻撃の危険にさらされることになる。
韓国の新政権は北朝鮮との対話を重視した文在寅(ムン・ジェイン)政権と違い、北朝鮮に厳しい態度で臨む方針を示す。尹氏の「政権引き継ぎ委員会」は4日、声明を発表し「北朝鮮の挑発を強く糾弾する」と非難した。』