中国「共青団」勢力に陰り 要職輩出継続が焦点に
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『【北京=羽田野主】中国共産党の将来のエリート候補を養成する役割を担ってきた党の青年組織、共産主義青年団(共青団)が5日で結成100年となる。習近平(シー・ジンピン)総書記が権力集中を進める中で、存在がかすんでいる。共産党幹部の人事を決める5年に1度の今秋の党大会で、要職に人材を送り込めるかが焦点だ。
共青団は共産党結党の翌年の1922年5月に成立した。14~28歳を対象に将来の幹部候補生を育成する役割を担ってきた。
地方出身者が多く、党中央に地方の声を反映する役割が期待されてきた。若者は直接入党することもできるが、共青団を経て入党するのが出世コースとみなされてきた。
共青団出身の胡錦濤(フー・ジンタオ)氏が総書記だった時代に共青団は最盛期を迎えた。ちょうど10年前、2012年5月の共青団90年の式典で胡氏は「共青団は政権の重要な支柱だ」と強調した。
習氏が12年秋に党トップに就いたころから勢力の減退が目立つようになった。21年末の団員数は7371万人と、10年前に比べて400万人余り減った。党員は9500万人と10年間で1000万人以上も増えているのとは対照的だ。
習氏ら党の最高指導部が執務室を構える北京の中南海近くにある大型書店「新華書店」では共青団100年を記念した展示をしているが、小さな丸型の台に関連する本を陳列してあるだけで、よく探さないと気づかない。一方で習氏の関連著作は壁一面を使って大きく宣伝している。
党トップに就いた当初の習氏はいまほど強力な権力基盤を築いていなかっただけに、人材の層の厚さや高い団結力を誇る共青団の影響力を警戒してきたとされる。共青団出身の李克強(リー・クォーチャン)首相ともかねてより溝が指摘されてきた。
李首相は23年3月に首相職を退くことが決まっている。後継候補の1人として名前が挙がるのが共青団出身のホープ、胡春華(フー・チュンホア)副首相だ。重要な食糧問題や貧困対策で陣頭指揮をとるなど実務能力には定評がある。だが習氏と距離があるとされ、微妙な情勢だ。
習氏は福建省や浙江省でトップを務めたときなどに知り合った部下を積極的に引き上げてきた。
首相後継候補にも胡春華氏のライバルとして習氏側近で上海市トップの李強同市党委員会書記や広東省トップの李希同省党委員会書記らの名前が挙がる。』