トルコ、シリア難民100万人の帰還計画 国民不満で

トルコ、シリア難民100万人の帰還計画 国民不満で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR033U80T00C22A5000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】トルコのエルドアン大統領は3日、100万人のシリア難民を母国に帰還させる計画を公表した。シリア北部のトルコ占領地に住宅やインフラの建設を進めるという。トルコは高インフレで庶民の生活が圧迫され、400万人超の難民を受け入れ続けることへの不満が強まっている。

エルドアン大統領は3日のビデオ演説で「シリア人の兄弟ら100万人が故郷に戻るための計画が準備されている」と述べた。トルコが実効支配する北部の国境沿いで地元や国際社会などと協力して住宅や学校、病院のインフラを整備し、産業も興すという。ソイル内相は同日、年末までに少なくとも10万戸の住宅を建設すると述べた。

2011年にシリア内戦が始まって以降、トルコは360万人のシリア難民を受け入れた。アフガニスタンやイラクなどの出身者を含めると、難民は計400万人超とみられる。イスラム教圏のリーダーを自認するエルドアン氏は、抑圧されたイスラム教徒の保護だとして寛容な姿勢をみせてきた。

ただ、足元で60%を超える高インフレなどの経済的苦境から、国民は長期化する難民問題への不満を募らせる。世論調査会社メトロポールの21年8月調査では、回答者の82%がシリアに帰還すべきだと答えた。特にエルドアン氏の支持基盤である中・低所得層は、最低賃金以下で働くことが多い難民への反発を強めている。

野党はシリアのアサド政権と対話してシリア難民の送還を急ぐべきだと主張しており、23年半ばに大統領選と議会選を控える政権は、難民への締め付けに転じつつある。

今年は2日に始まったイスラム教の断食月(ラマダン)後大祭でも緊張がみられる。親族が集まる時期で、多くのシリア難民も帰郷する。トルコ国内では「休暇に戻れるような国からの難民をいつまで受け入れ続けるのか」との声が高まる。これに対しソイル内相は3月末、大祭中に帰郷したシリア難民の再入国は認めないなどと発言した。

ただ、10年を超える内戦で、多くのシリア難民がトルコで生活基盤を築いた。トルコがインフラ建設を掲げる支配地以外の出身者も多い。エルドアン氏は「自主的」に戻る人が対象としているが、どれだけの難民が帰還の呼びかけに応じるかは不明で、望まない再移住を迫られる恐れもある。』