米軍、対中国へ分散戦略加速 補給体制と連動カギ

米軍、対中国へ分散戦略加速 補給体制と連動カギ
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※ 『米本土からの補給については、艦船が米西海岸から北東アジアへ移動する時間は3週間程度とされ、時間がかかる。中国のミサイルの射程に入ればただちに標的になる可能性があり、戦闘の前線に近づけない可能性が高い。』…。

※ まあ、そういうのが、「実情」のようだ…。

『【ワシントン=中村亮】中国の脅威を強く意識する米軍にとって、補給体制の充実が喫緊の課題に急浮上してきた。米軍はインド太平洋で部隊を分散させる戦略を推進しており、補給体制の複雑さが増す。過去の戦争で補給体制が勝敗を大きく左右した例があり、対中国に向けて日米の連携も試される。

「補給、補給、補給だ」。米海兵隊のデビッド・バーガー総司令官は4月中旬、訪問先のオーストラリアでロシアによるウクライナ侵攻の教訓を尋ねられて補給体制の重要性を真っ先に繰り返した。「どれぐらい遠くに、どれぐらい早く行けるかを左右する。補給は最後に計画するものであってはならない」と力説した。

高度な兵器は弾薬や燃料が不足すれば使えず、完璧な作戦計画があっても兵士に食料が届かなければ士気が下がり作戦実行は危ぶまれる。ロシア軍はウクライナの首都キーウ(キエフ)まで15キロメートルほどに迫ったが撤退を余儀なくされた。サイバーや宇宙に戦闘領域が広がり戦闘のハイテク化が進むなかでも、戦闘の基本である補給体制の重要性を浮き彫りにした。

補給体制の失敗は第2次世界大戦でのナチス・ドイツの例がある。旧ソ連との戦闘は想定以上に長期化してドイツ軍は燃料が不足。兵士には衣服が行き渡らずに真冬でも夏用の軍服で戦うことを余儀なくされ、食料も不足して犬やネズミを食べていたとされる。

米軍も2003年に始まったイラク戦争の序盤で前線部隊への補給に苦しんだ。軍事力に劣るイラクが米軍の補給網の寸断を狙ってきたからだ。弾薬などの不足によって前線部隊は数週間の作戦休止に追い込まれたとの見方がある。

米国防総省がアジアの補給体制の現状について「紛争下の作戦を支えるには不十分だ」と判断している理由は主に2つある。一つは米軍は小規模部隊を沖縄や台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」に分散させる態勢づくりを目指している点だ。

海兵隊は「遠征前線基地作戦」と呼ばれる戦略を進めている。有事が起きると離島や沿岸部に分散して臨時基地を設営し、対艦ミサイル発射や防空、情報収集などの拠点とする。同じ拠点には短期間しか滞在せずに別の離島などに移動して新たな拠点をつくる。俊敏に移動していくほど敵の攻撃対象になりにくくなるとみている。

新アメリカ安全保障センターのヤコブ・ストーク研究員は、米軍が分散戦略を進めるほど補給体制の難度が増すジレンマがあると指摘する。多数の地点に部隊が分散すると、それに合わせて弾薬や燃料、食料を供給する頻度や行き先が増えて複雑になり、一段と緻密な補給体制を確立する必要があるからだ。

中国が大量のミサイルを保有し、精度も上がっていることも補給を難しくする。米軍は制空権や制海権を確保しないなかで補給活動を実施しなければならない。中国が精密ミサイルで補給網を狙い撃ちし、米軍の作戦を遅らせるシナリオが考えられる。

米本土からの補給については、艦船が米西海岸から北東アジアへ移動する時間は3週間程度とされ、時間がかかる。中国のミサイルの射程に入ればただちに標的になる可能性があり、戦闘の前線に近づけない可能性が高い。

米ハドソン研究所のパトリック・クローニン氏は「米国は海における明確な優位性を失ってきており、重大な状況や緊急時には米国は日本などの同盟国による補給支援の拡大を必要としている」と指摘する。

日米は1月の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)後の共同文書で台湾有事などを念頭に「緊急事態に関する共同計画作業の確固たる進展」を確認した。有事では米国が日本の自衛隊に後方支援を要請する可能性があり、日米は補給活動を含めた緊密な協力を視野に入れる必要が出てくる。』