半大統領制

半大統領制
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『半大統領制(はんだいとうりょうせい、英: semi-presidential system)とは、議院内閣制の枠組みを採りながら、元首として大統領を有する政治制度。』

『概説

半大統領制は議会と政府との関係の点から見た政治制度の分類の一つで[1]、議院内閣制の枠組みを採りながら大統領が大きな権限を持つ政治制度である。広義では大統領制に分類されており、首相を除いて議員と政府の役職は兼務できない。
定義

フランスの政治学者モーリス・デュヴェルジェは、半大統領制の条件として以下の3点をあげている[2]。

選挙で選出される大統領がいること

大統領が憲法上大きな権限を持っていること

議会の過半数の支持により成立する首相と内閣があること

(つまり大統領に制度上の首相任免権があっても、実際の選出や信任・不信任の決定は議会がこれを行い、大統領はただそれを踏襲するのみ)

但しデュヴェルジェによる半大統領制の定義は、大統領の選出方法や国家元首の権限など、著作ごとに変化していることが指摘されている[3]。

半大統領制をデュヴェルジェが提唱した1970年の”Institutions politiques et droit constitutionnel”では、国家元首の直接選挙を特徴にフランス、フィンランド、オーストリアを例示していたが、フィンランドでは選挙人団による間接選挙が行われていた[3]。

また、大統領権限での定義が曖昧な問題もあり1980年のデュヴェルジェの論文でも、大統領は「かなり重要な諸権限(quite considerable powers)」を持つという曖昧さを残したもので研究者によって判断が分かれる結果となった[3]。

イタリアの場合

「イタリアの政治」および「共和国大統領 (イタリア)」も参照

イタリアの大統領は選挙といっても議会上下両院の議員と地方代表による間接選挙で選出され、国家元首としての権威はあっても行政や軍事に関する権限は首相のもとにある。

その首相は大統領によって任命されるが、通常は議会が指名した首班をそのまま受け入れるにすぎず、事実上の首相の任命者は議会ということになる。

このようにイタリアの政治体制を検証してみると、同国の大統領の権限は首相のそれに比べると微々たるものであることから、通常は議院内閣制に分類される。

それではイタリアの大統領はあくまで国家の象徴にすぎないのかというと実はそうでもなく、例えば議会の解散権は各方面との調整の上で機を見て大統領一人がこれを決断する専権事項となっている。

また、特例ではあるが首相の任命に関しても大統領大権によって議会に議席を持たない民間人を起用することが憲法上は可能である[4]。イタリアではこれらが政界再編に影響を及ぼすことが度々あった。上記の定義をもってすれば、イタリアは半大統領制の国と言えなくもない。

このように半大統領制とは「明らかな議院内閣制でも、明らかな大統領制でもない、共和制の一つの体制」という、いわばグレーゾーンにある政治制度であり、相当数の国がこれに当てはまる可能性がある。

このため比較政治学においてもその定義にはコンセンサスが存在しないという、いわば玉虫色の制度と言うことができる[5]。

フランスの場合

「フランス政府」および「フランス第五共和政」も参照

フランスでは第二次大戦後制定された第四共和国憲法の下で、小党が分立して不安定な政府が連続したため、1958年にド・ゴール首相のもと、議院内閣制のシステムを採りながらも大幅に大統領権限を強化した第五共和国憲法を採用した。

これにより、形式的・儀礼的な権限しか持たなかった大統領は「三権の総攬者」として議会解散権・閣僚任免権・条約批准権など大幅な権限を有することとなった。

大統領に大きな権限があるにも関わらず、議院内閣制の枠組みを取っていることから「半大統領制」あるいは「大統領制的議院内閣制(presidential-parliamentary system)」と呼ばれる。このフランスの政治体制が、典型的な半大統領制と見なされている。

フランスでは大統領が首相の任免権を有するが、議会も首相の指名権・不信任権を持っているため、実際には議会の多数党から首相が選ばれるのを常としている。権限の分担としては大統領は外交政策に、首相は内政に責任を有するとされている。

なお、半大統領制における大統領と首相が対立関係にある政党から選出されている状態をコアビタシオン(cohabitation、保革共存)と呼ぶ。

この状態によって、両者の性格や政治信念、両政党のイデオロギー、そして支持層からの要求などで両者の抑制と均衡が効果的に機能する場合もあれば、ひどい確執が国家の運営に大きな支障をきたす場合もある。

主な半大統領制の国家

先述のように、半大統領制の定義や分類については研究者によって大きな隔たりがある。
本項では、フランス型(大統領制的議院内閣制)の国を挙げる。

ウクライナの旗 ウクライナ

スリランカの旗 スリランカ

中華民国の旗 中華民国(台湾)

    総統(大統領職に相当)が行政院長(首相職に相当)を任命。立法院(国会)の承認は不要。総統による立法院の解散は、立法院が行政院長不信任決議を採択した場合のみ、行政院長の要請を受けた上で実施できる。

ニジェールの旗 ニジェール

    2012年に大統領制に移行する予定であったが、軍事クーデターにより半大統領制を維持。

パキスタンの旗 パキスタン

    1998年以後パルヴェーズ・ムシャラフ大統領による実質的な軍事独裁政権が継続したが、ムシャラフが2008年に辞任に追い込まれると名実ともに民政移管となった。

フランスの旗 フランス - 典型的な半大統領制。

ポルトガルの旗 ポルトガル

マダガスカルの旗 マダガスカル

モンゴル国の旗 モンゴル - 但し大統領は議会解散権を持たない。

リトアニアの旗 リトアニア

ルーマニアの旗 ルーマニア - 行政権は首相が負う。

レバノンの旗 レバノン

    大統領はキリスト教マロン派、首相はイスラム教スンナ派、国会議長はイスラム教シーア派から選出するというのが不文律。

あくまでも慣例であり法制上の拘束力はないが、レバノン内戦の最中に非ムスリム・キリスト教徒の軍人が首相に就任したことにより内戦が悪化した例もあり、長年にわたってこの不文律が尊重されている。近年では首相の権限が徐々に強大化している。

ロシアの旗 ロシア

    首相は内政のみに責任を負い、外交や国防の関連省庁の所轄権限を保持しない。

など 』