1~3月のユーロ圏、年率0.8%成長 物価高・ロシア侵攻で

1~3月のユーロ圏、年率0.8%成長 物価高・ロシア侵攻で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR28DVZ0Y2A420C2000000/

『【ベルリン=南毅郎】欧州連合(EU)統計局が29日発表した2022年1~3月期のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)は速報値が前期比0.2%増にとどまった。伸び率は前の期から小幅に鈍化し、年率換算でも0.8%だった。新型コロナウイルス対応の行動規制が段階的に緩和されたが、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源高や物流網の混乱で先行きは不透明感が強まっている。

28日に発表された米国が前期比年率換算で1.4%減とブレーキがかかるなか、欧州経済の回復の遅れも鮮明になっている。5月18日に公表予定の日本は民間エコノミスト10人の予測の集計で同2.1%減となっている。

国別では欧州最大の経済大国のドイツが前期比0.2%増となった。マイナス成長に転じた前の期からは持ち直したものの低空飛行が続いた。フランスは0%、イタリアは0.2%減。ユーロ圏以外の加盟国を含めたEU全体では0.4%増だった。

欧州経済はコロナ対応の行動規制がドイツなどで段階的に緩和されており、経済活動の再開に伴って飲食・宿泊といったサービス業で景況感が持ち直しつつある。米S&Pグローバルによるとユーロ圏における企業の景況感指数は2月に55.5と5カ月ぶりの高水準になった。

一方で、ウクライナ危機が逆風となっている。ドイツを筆頭にユーロ圏はロシアから天然資源を調達しており、経済制裁などによる供給不安から資源価格が高騰。天然ガスの指標価格である「オランダTTF」は3月に過去最高値を更新した。

インフレの長期化で企業収益や家計所得を圧迫する懸念も強まる。半導体不足や物流網の混乱もあり、自動車などでは生産に制約も生じている。

先行きも不透明感が高まっている。ロシアのウクライナ侵攻が長引く恐れが出ているためだ。交戦が激化するなか、隣国モルドバに戦闘が波及する恐れも浮上した。ロシアがポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止したことで、ロシア産の依存度が高いドイツでも供給不安に至るリスクシナリオが現実味を帯びる。

ドイツ政府は4月に入り、22年の独実質経済成長率の見通しについて従来の3.6%から2.2%に下方修正した。ドイツ連邦銀行(中央銀行)はロシアからの資源調達が全面的に止まれば、実質GDPが2%縮小すると警告する。

ウクライナ情勢だけでなく、中国ではコロナで大規模な都市封鎖に踏み切るなど供給網の混乱も長引きかねない。米モルガン・スタンレーは22年10~12月にかけてユーロ圏の成長率が0.1%まで落ち込むと試算する。』