中国、ネット統制強化を転換 失速の経済テコ入れ

中国、ネット統制強化を転換 失速の経済テコ入れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM294FG0Z20C22A4000000/

『【北京=多部田俊輔】習近平(シー・ジンピン)指導部はアリババ集団や騰訊控股(テンセント)など中国ネット大手に対する統制強化を転換する。

ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルスを徹底して抑え込む「ゼロコロナ規制」などで最近の経済が失速しているため、ネット大手の活性化によって経済のテコ入れを狙うとみられる。

中国共産党が29日に開いた中央政治局会議で、プラットフォーマーと呼ばれるネット大手が手がける経済について、健全な発展を促進するとの方針を確認した。プラットフォーマーを対象とした規制強化の専門作業を完了させ、健全な成長をサポートする具体的な支援措置を打ち出すという。

香港メディアなどによると、今回の政治局会議の方針によって、習指導部が2020年から始めたネット大手に対する統制強化が一定の成果を上げたという認識となり、今後はネット大手の活性化を通じて減速する国内経済を下支えする方向に政策を転換する見通しだという。

習指導部の新たな方針にあわせて、規制当局は近く会議を開く予定だ。4月30日からの大型連休後にはネット大手の経営幹部らが参加する会合も開催するという。会合では当局がネット大手に新しい方針を示し、国内消費拡大に向けた協力などを議論するとみられる。

一連の報道を受けて、アリババやテンセントの株価は29日、10%以上の上昇となった。

習指導部のネット大手に対する統制は20年11月、アリババ傘下の金融会社アント・グループの上場延期で始まった。金融当局はアントの「企業統治が不健全」といった問題点を指摘。習指導部は金融市場で存在感を高めるアントに厳しい視線を向けた。

その後、当局は21年4月、アリババにネット通販事業などで独占禁止法違反にあたる行為があったとして過去最高の罰金も科した。当局はネット統制の法整備も進め、アリババに加え、テンセントや美団にも波及。配車アプリの滴滴出行(ディディ)は中国当局の指導を受けて米国上場を廃止する手続きを始めた。

習指導部は秋に5年に1度の党大会控え、異例の3期目に向けて足場固めを急ぐ。鄧小平時代の先に豊かになれるものを富ませる「先富論」から、格差縮小に向けて分配を重視する「共同富裕(共に豊かになる)」に路線を転換。その取り組みは巨額の収益を上げるネット大手に利益を還元させる圧力にもなった。

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浅川直輝
日経BP 「日経コンピュータ」編集長
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ひとこと解説

アリババや京東、テンセント、バイトダンスといった大手IT企業はこれまで中国当局による規制強化の逆風にさらされてきました。中国経済の先行きが不透明な中、大手IT企業の成長ポテンシャルに改めて期待が集まっている格好です。

一方で、教育やゲームなど、国民の思想・情操に関わる分野への規制は今後も続くと思われます。

2021年には民間教育サービスへの規制でEduTech企業の収益が悪化し、オンラインゲームへの規制では1万以上のゲーム会社が倒産しました。これらの企業の中には海外市場に活路を見いだそうとする動きもあり、その高い技術力でどのようなサービスを打ち出すか、日本においても注目を集めそうです。

2022年4月30日 8:11

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

このタイトルだけみると、ネット統制が緩和されると思う読者も多いのではないか。

実際は、ネット統制を引き続き強化するが、プラットフォーマーのビジネスに対する締め付けをある程度を緩める兆候がみられているということだろう。

しかし、政治指導者の発言に起因する株価の動きだけで政府の方針が転換するかどうか、判断できない。株価の変動は投資家の期待に基づくものが大きい。個人的に何をいうかというよりも、その行動をチェックしないといけないと思う

2022年4月30日 7:43 (2022年4月30日 8:53更新)』