豪野党、ソロモン「失策」批判 総選挙で安保焦点に
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『【シドニー=松本史】5月に総選挙が行われるオーストラリアで、南太平洋のソロモン諸島を巡る与野党の舌戦が激しさを増している。豪州と伝統的に関係が深いソロモンと中国の安全保障協定締結について野党は与党の失策と批判し、独自の支援策を公約に掲げた。安全保障面で中国とどう向き合うかが、今回の総選挙の焦点となりつつある。
「モリソン氏は失点を重ねてきた。彼が(南太平洋地域から)姿をくらましている間に中国は我々の目の前で安全保障協定を交渉し署名してしまった」。豪州の最大野党・労働党で「影の外相」を務めるウォン氏は26日、ソロモンと中国の協定に言及しモリソン首相を手厳しく批判した。
この日労働党は公約として、南太平洋地域への政府開発援助(ODA)を今後4年間で5億2500万豪ドル(約480億円)増額すると発表した。「豪太平洋防衛学校」を新設し、太平洋島しょ国の防衛・治安部隊に訓練を実施する方針も明らかにした。4月19日に協定締結が発表されてから、労働党は「外交政策の大失敗だ」(アルバニージー党首)とモリソン政権の批判を強めてきた。
これに対して与党・保守連合のペイン外相は26日に記者会見を開いて反論。「(現政権による政策の)継続や模倣、表面的な変更にすぎず内容がない」と労働党の公約をこき下ろした。防衛訓練についても「すでに豪太平洋安全保障大学で行っている」と切り捨てた。
経済政策や気候変動問題が主要争点になることが多い豪総選挙で、南太平洋地域が大きな話題となるのはまれだ。与野党が舌戦を繰り広げる背景には同地域での中国の影響力拡大への危機感がある。ソロモン側は中国による軍事基地の建設を否定するが、事前に流出した草案ではソロモンへの中国軍の派遣などを認める内容が盛り込まれていた。
ソロモンと中国の安保協定は21年にソロモンでデモ隊が暴徒化し、中国系住民が多く住む地域で被害が出たことが一因とされる。豪グリフィス大学のテス・ニュートン・ケイン博士は「(安保協定締結のような)特定の動きに反射的に対応するのではなく、通常の政策策定の一環として豪州の政官界を挙げて島しょ国が何を必要としているのか理解を進めるべきだ」と指摘する。
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