ドル指数上昇、5年ぶり高水準 世界景気不安で資金逃避

ドル指数上昇、5年ぶり高水準 世界景気不安で資金逃避
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『【ニューヨーク=斉藤雄太】外国為替市場でドル高が加速している。27日はドルの代表的な指数が一段と水準を切り上げ、約5年3カ月ぶりの高水準になった。米国の金融引き締めが他の先進国より急ピッチで進むとみる投資家のドル買いが続いた。ウクライナ危機や中国の強硬な新型コロナウイルス対策で高まる世界景気の先行き不安も「安全通貨」とされるドルの強さにつながっている。

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27日のニューヨーク外国為替市場では、米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するドル指数が一時103.28と前日比で1%上昇し、2017年1月以来の高さになった。同指数は円やユーロ、ポンドなど主要先進国の通貨と比べたドルの相対的な強さを映す。この日はロシアによる東欧2カ国への天然ガスの供給停止をきっかけに、欧州のエネルギー調達や景気への不安が再燃。ユーロ相場が対ドルで1ユーロ=1.05ドル台と約5年ぶりの安値を付け、ドル指数を押し上げた。

ドル指数は過去1年間で13%上がった。4月だけでも5%高と上昇ピッチが急だ。対円では今月に一時1ドル=129円台と20年ぶりの円安・ドル高水準になり、足元でも128円台とドル高基調を維持する。対ポンド相場でも1年9カ月ぶり、さらにドル指数に含まれない中国の人民元に対しても約1年ぶりのドル高水準にあり、独歩高の様相を呈している。

バノックバーン・グローバル・フォレックスのチーフ市場ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は「米連邦準備理事会(FRB)による非常に積極的な金融引き締めに投資家が確信を強めたことがドル高の主因」と話す。

2月下旬のロシアのウクライナ侵攻後、FRBはインフレ抑制に向けた0.5%の大幅利上げをためらったことが3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で明らかになっている。しかし現在はFOMC参加者の大半がより積極的な利上げが必要との見方に傾き、市場は年内に複数回の0.5%利上げに動くと予想する。金融緩和を継続する日銀や、利上げにはまだ距離のある欧州中央銀行(ECB)との違いは大きい。「米国と欧州などの金利差は拡大する一方だ」(米オアンダのエドワード・モヤ氏)と見込んだ投資家のドル買いが入りやすい。

ウクライナ危機による資源高や景気への影響を巡る米国と他国の温度差もある。国際通貨基金(IMF)は今月公表した世界経済見通しで22年の主要国の実質成長率予想を軒並み引き下げた。だが米国は0.3%低い3.7%と、ユーロ圏や日本より落ち込み幅が小さい。米国でもFRBの急速な引き締めが来年以降の景気後退を招くとの懸念はくすぶるものの「大きな不確実性があるときに人々は結局、ドルに逃避する」とバノックバーンのチャンドラー氏は指摘する。

市場ではドル高基調が当面続くとの見方が優勢だ。20年春に起きた急激なドル高は、新型コロナの感染拡大でパニックに陥った投資家がドル資金確保に殺到したため生じた。現在は各国との金融政策の方向感や景気の強さの違いといったファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に即した動きになり、ドル売りに転じるきっかけがつかみにくい。

17年初頭にかけてのドル高も、当時のトランプ政権の通貨安志向やFRBへの金融緩和圧力などで長続きしなかった。現在のバイデン政権はインフレ抑制のためFRBの引き締め姿勢を支持している。慢性的な貿易赤字国の米国では、ドル高で輸入物価をある程度抑制できる面もある。一方、ドル高は

他国の通貨安と輸入物価高を通じてインフレを悪化させる要因にもなり、世界経済の新たな不安要素になりかねない。』