「ウクライナの次」の標的か モルドバに飛び火の恐れは

「ウクライナの次」の標的か モルドバに飛び火の恐れは
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『ウクライナ南部と国境を接するモルドバの安全保障が脅かされる恐れが出てきた。ロシア軍中央軍管区のミンネカエフ副司令官は22日、ウクライナ南部の先にあるモルドバに向けて軍事行動していくと示唆。同国の親ロシア派支配地域では爆発が相次ぎ、27日には砲撃もあった。モルドバはどういう国で、なぜロシアによる「ウクライナの次」の標的になると米欧各国が警戒を強めるのか解説する。

・モルドバはどういう国か
・ウクライナでの戦闘が飛び火する恐れは
・米欧はどう対応していくのか

(1)モルドバはどういう国か

ウクライナとルーマニアに挟まれた小国で面積は九州よりやや小さい。エネルギー分野でロシアに依存しているが、長期的な外交目標として欧州連合(EU)加盟を掲げる。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始以降は、親欧米派の政権が反ロシアを鮮明にしている。

ロシアのウクライナ侵攻に絡んでモルドバが注目されるのは、親ロシア派が実効支配する「沿ドニエストル共和国」が国内に存在するためだ。ウクライナと接する東側の国境沿いに細長く広がる地域で、ロシア系住民が1990年に一方的に独立を宣言した。国際的に国家としては承認されていない。

英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)の「ミリタリー・バランス」によれば、ロシアは「平和維持」などを目的に約1500人の部隊を駐留させている。

ウクライナ東部では親ロシア派が実効支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」がある。モルドバも似た状況にあり、ロシアが軍事介入しやすい状況が整っているとみることができる。

(2)ウクライナでの戦闘が飛び火する恐れは

タス通信などによると、ロシア軍中央軍管区のミンネカエフ氏は22日、ウクライナ南部を制圧すれば、モルドバの親ロシア派地域と陸続きでつながると主張。モルドバも軍事的な標的になるとの見方が出ている。

親ロシア派地域では25日以降、爆発が相次ぎ、治安当局本部やラジオ電波塔などが被害を受けた。
爆発が起きた後に倒壊した電波塔(26日)=モルドバ東部の親ロシア派「内務省」提供・ロイター

爆発について、モルドバ外務省は22日の声明で「モルドバの主権と領土の一体性を支持するロシアの立場と矛盾している」と非難。ロシア大使を呼び出して「深刻な懸念」を伝えた。ウクライナや欧米は爆発はロシア側が企てたもので、モルドバでの反ウクライナ感情を高めるための「偽旗作戦」の可能性があるとみている。

一方、沿ドニエストル共和国トップのクラスノセルスキー「大統領」は26日、爆発は「テロ」だとし、モルドバのサンドゥ大統領を批判した。ロシア通信などが伝えた。

27日には親ロシア派地域側は弾薬庫がある村に向かって、ウクライナ側から砲撃があったと主張したと報じられた。ウクライナ側からのドローンが飛来したとも指摘した。

ロシアのウクライナ東部での振る舞いをみても、親ロシア派住民の保護などを口実にモルドバに駐留するロシア軍部隊が行動を起こす可能性は否定できない。

(3)米欧はどう対応していくのか

ブリンケン米国務長官は3月上旬にモルドバでサンドゥ氏と会談し、同国の主権と領土保全について支持を表明した。記者会見で米国によるモルドバの安全保障への関与を問われ、「ロシアのウクライナ侵攻に対して世界が対応に動いた。いつ、どこであっても侵攻があれば同じことをする」とも指摘した。

モルドバは北大西洋条約機構(NATO)非加盟国で、米国などにはウクライナ同様、防衛義務はない。ただ、もしもロシアがモルドバに侵攻すれば、戦禍が拡大し、隣国ルーマニアとの国境周辺などで軍事的な緊張が高まる。

モルドバは憲法で中立主義を掲げており、米国としても現段階で武器供与などには踏み込んでいないもようだ。米国務省によると、ロシアのウクライナ侵攻開始後、モルドバに対して人道支援で3000万ドル以上、長期的な民主主義や経済の強化に1億ドルの支援を打ち出している。

モルドバの人口(親ロ派地域を除く)は約260万人だが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の集計によると、25日時点で約43万5000人のウクライナ避難民を受け入れている。主要7カ国(G7)としても避難民対策の資金支援などに乗り出している。

(佐堀万梨映)』