S&P、スリランカ債「一部不履行」 IMFは増税要求

S&P、スリランカ債「一部不履行」 IMFは増税要求
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『【ムンバイ=花田亮輔】米格付け大手S&Pグローバル・レーティングは25日、スリランカの外貨建て国債の信用格付けを「部分的なデフォルト(債務不履行)」にあたる「選択的デフォルト(SD)」に引き下げた。国際通貨基金(IMF)は支援の条件として増税などを求めるが、物価高騰で市民らの抗議デモが相次ぐ現状では難しい。中国、インドなどの2国間支援が焦点になりそうだ。

S&Pによると、スリランカは2023年と28年に満期を迎える総額12億5000万ドル(約1600億円)の国債の利払いを、期日の18日までに実施できなかった。猶予期間である30日以内の支払いも困難だと判断した。米ブルームバーグ通信によると、18日に期限を迎えた利払い額は7800万ドルだった。

スリランカは深刻な外貨不足に陥っている。経常収支の赤字は慢性的で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で経済の柱である観光業が打撃を受けた。最近ではロシアのウクライナ侵攻に伴う原油や穀物の価格上昇が重なり、外貨準備が急減。3月末には約19億ドルと、1年前に比べ半減した。

輸入の停滞で品不足が生じ、エネルギー、食料を中心に物価が高騰。ラジャパクサ大統領らの辞任を求める抗議活動が最大都市コロンボを含む各地で続いている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、国連がスリランカ政府に対し、一時的なベーシックインカム(最低所得保障)の導入を求めたと報じた。

スリランカ政府はIMFなどへの緊急融資の要請を決定。同国財務省は12日、交渉がまとまるまで債務の支払いを一時停止すると発表していた。

スリランカのメディアによると、同国の対外債務残高は510億ドル前後だとみられる。

スリランカ政府の代表団は18~22日にワシントンでIMFと協議した。IMFは22日の声明で「(スリランカ側と)実りのある技術的な議論をした」と表明し、スリランカを支援する方針を示した。

協議の後でIMFの担当者はロイター通信に対し、増税を含む財政規律の徹底をスリランカ側に求めたと明かした。だが、交渉の見通しや、金融支援の詳細などについては明言を避けた。

スリランカ政府は経済や外交で関係が深い中国やインドからの支援も模索する。同通信によると、スリランカ政府は26日、中国と債務の借り換えについての協議を始めたと明らかにした。

スリランカはかつて同国南部の港湾開発を巡り、対中債務を返済できず、99年間の運営権を譲渡した経緯がある。今後の支援交渉によっては、中国にさらに多くの権益を与える可能性がある。

インドのジャイシャンカル外相は3月下旬にスリランカを訪れ、ラジャパクサ氏と会談し、金融支援の方針について確認した。4月にはインドのシタラマン財務相が、IMFのゲオルギエバ専務理事にスリランカ支援を働きかけた。

スリランカは、中国が中東・アフリカ方面から石油や天然ガスを運ぶシーレーン(海上交通路)上のインド洋にある要衝だ。中国は広域経済圏構想「一帯一路」の一部としてスリランカのインフラ整備を支援してきた。一方、中国との間で係争地を抱えるインドは中国のインド洋進出を警戒し、スリランカへの影響力を競っている。』