北朝鮮、戦術核使用を示唆 金正恩氏「いつでも稼働」

北朝鮮、戦術核使用を示唆 金正恩氏「いつでも稼働」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM260EG0W2A420C2000000/

『【ソウル=甲原潤之介】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が25日、朝鮮人民革命軍創建90年の式典で戦場での核使用を示唆する演説をした。

核兵器について「戦争防止という一つの使命だけに縛られない」と述べた。基地攻撃に限定的に核を使う「戦術核」を念頭に置いた発言との受け止めが広がっている。

朝鮮中央通信が26日、式典や軍事パレードについて報じた。

金正恩氏は演説の後段で核開発の方針に触れた。「いかなる勢力であっても根本利益を侵奪しようとすれば、我々の核武器は『第2の使命』を決行しなければならない。いつでも稼働できるよう徹底的に準備する」と強調した。

過去にも金正恩氏が核に言及したことはある。

大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の兵器を完成させた後の2018年1月の演説で「米国本土全域が核攻撃の射程圏内にある。米国は決してわが国を相手に戦争できない」と語った。米国全土を核攻撃できる能力を持てば米国も北朝鮮を攻撃できなくなる、という考え方だ。
今回、金正恩氏が言及した「第2の使命」は18年の演説と異なる核の使い方を示している。他国からの「侵奪」に反撃する手段として核攻撃を位置づけたと読み取れる。

韓国で5月に就任する尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領は選挙戦で北朝鮮に対し「先制打撃能力」の保有を主張した。

米軍は4月、原子力空母を朝鮮半島近海に展開させ、韓国軍と合同で机上演習も開催するなど北朝鮮に圧力をかけている。

日本でも岸田文雄政権が国家安全保障戦略の見直しで、相手の基地や司令部に反撃する能力の保有について議論している。

金正恩氏の発言はこうした周辺国の軍事的な動きを踏まえたものとみられる。

戦術核への直接的な言及や日米韓の名指しを控えつつ、核兵器を使った反撃をためらわない姿勢をにおわせて日米韓に脅しをかける狙いが見て取れる。

25日、平壌の金日成広場で行われた軍事パレードに登場した新型ICBM「火星17」。26日付の北朝鮮の労働新聞が掲載した=コリアメディア提供・共同

パレードも北朝鮮の軍事力を内外に誇示する内容になった。

ICBM級の新型ミサイル「火星17」や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、極超音速ミサイルと主張する新型兵器などが勢ぞろいした。

金正恩氏は白い元帥服を着用し、李雪主(リ・ソルジュ)夫人を伴って登場した。

核・ミサイル開発を主導しながら昨年夏に降格していた李炳哲(リ・ビョンチョル)氏が政治局常務委員と紹介され、復権したことも判明した。

米韓は北朝鮮が17年以来となる7回目の核実験に踏み切る兆候があると警戒する。

北韓大学院大の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は「5月下旬に予定される尹氏とバイデン米大統領の会談の前後に北朝鮮が強力な挑発に出る可能性が濃厚だ」と指摘する。』