タイのコメ輸出が前年比3割増 ウクライナ巡り小麦代替
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『【バンコク=アポンラット・プンポンピパット】タイのコメ輸出が急増している。1~2月の輸出量は前年同期より3割増えた。ロシアによるウクライナ侵攻で両国の小麦供給が大幅に減る見通しで、代替穀物として需要が拡大している。特に欧州、中東向けが好調だ。需給の引き締まりは価格に上昇圧力を加えるが、タイ通貨バーツ安が輸出価格に割安感を与えているようだ。
ロシアは2月24日に侵攻を始めたが、その数カ月前から同国の部隊はウクライナ国境付近に集まり、世界の食料安全保障を揺るがしていた。
ロシアとウクライナの小麦の輸出量は合わせて世界全体の3分の1近くを占める。戦闘でウクライナの小麦畑の一部は荒廃し、作付けが遅れている。米欧の制裁でロシア経済は打撃を受け、小麦生産にも影響が広がるとみられている。
タイのコメ輸出の業界団体によると、1~2月の輸出量は前年同期比28%増の110万トンだった。この団体は2022年の輸出目標をこれまでの700万トンから800万トンに引き上げる方向で検討を始めた。
団体のトップは「コメの輸入業者が買い付けを急いでいる」と明かした。「(ウクライナでの)戦争が予想よりも長引けば、食料価格を引き上げる圧力が一段と高まると警戒している」というわけだ。
貿易の関係者によると、コメ輸入の契約をいち早く結ぼうと急いでいるのは欧州の業者だ。ロシアの侵攻で穀物などの先物市場に投機的な買い注文が増え、価格が一段と上昇すると見通しているためだ。コメは小麦を完全に代替できる穀物ではないが、ウクライナでの戦争という地政学上の大きな問題が起こるなか、食料安保を確保するには役立つとみられている。
団体の有力者は「中東からの注文も増えている」と話す。主要な買い手はイラクだ。
イラクは1~2月に計13万トンのコメをタイから輸入した。前年同期の輸入量は計146トンにすぎなかった。
中国への輸出も急増した。1~2月のタイからのコメ輸出量は計約16万5000トンで、前年同期の7万2000トン弱を大きくしのいだ。
複数のアナリストは、バーツ安も、タイのコメ輸出にとって追い風になったと指摘する。ドル建ての輸出価格に割安感が出るためだ。バーツ相場は対ドルで2月から4月にかけて1ドル=32バーツから同33.6バーツに下がった。3月以降もタイのコメ輸出を促す材料になっているもようだ。
タイはコメの輸出量で世界3位の主要な供給国だ。22年は豊作が予想され、世界で高まる需要を満たす用意はできているとみられる。22年の生産量は約3300万トンと予想され、精米ベースでは2300万トン前後になる。
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