VW、EVの「円環」つくる ディーゼル敗北で覚悟 EVのリアル 第4部 テスラを追え㊤

VW、EVの「円環」つくる ディーゼル敗北で覚悟
EVのリアル 第4部 テスラを追え㊤
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 ※ ユーザー(消費者)とっては、自動車メーカーの「お題目」なんか、どうでもいい…。

 ※ そんなことよりも、降雪地において、ボンネットやグリルに積もった降雪は、溶けるのか…。寒冷地の冬において、寒い冬に電動ヒーターを作動させた場合、電池はどの程度持つのか…。暑い地域では、エアコン作動させた場合、電池はどの程度の消耗度なのか…、なんてことのほうが、よっぽど「重要」だ…。

 ※ 自腹切って、大枚はたいて購入するんだ…。いくら「鳴り物入り」で、煽っても、乗せられる人は、多くはいないだろうよ…。

『世界2位の自動車メーカー、独フォルクスワーゲン(VW)が米テスラを猛追している。2015年にディーゼル車での排ガス不正が発覚したことを機に、電気自動車(EV)にカジを切った。電池材料の調達から充電網の整備、電池のリサイクルまで、すべてのバリューチェーンを押さえにかかっている。EVのリアル第4部では、先行するテスラを追う欧州の自動車のビッグプレーヤーの変革を描く。

電気自動車(EV)専用車台「MEB」を初めて採用したEV「ID.3」

22年3月4日、VWは本社のあるニーダーザクセン州ウォルフスブルクに20億ユーロ(約2700億円)を投資してEV専用工場を建設すると発表した。同じ日、隣のブランデンブルク州は、テスラが同州グリューンハイデに建設している欧州初の工場での生産を条件付きで承認した。

VWが既存工場の改築ではなく、あえて更地から新工場を建設することに決めた背景には、テスラのグリューンハイデの新工場の存在がある。VWのヘルベルト・ディース社長は「グリューンハイデに直接対抗できるように、ウォルフスブルクの本社と工場を大転換する」と力をこめる。

生産時間3分の1

テスラはグリューンハイデの工場で量販タイプの多目的スポーツ車(SUV)「モデルY」を年間50万台生産する計画だ。1台生産するのにかかる時間は10時間とされる。VWのウォルフスブルクでの平均的な車種は生産に約30時間かかる。テスラが輸入時の関税がかからない欧州で生産することで価格競争力が高まるだけに、生産コストでも劣っていては戦えない。

VWは目下、ウォルフスブルクの新工場で26年から生産する車種を社運をかけて開発している。開発コード名は「トリニティ」だ。サイズは「ゴルフ」と「パサート」の中間で、レベル2プラスの自動運転機能を標準装備し、ベース価格は3万5千ユーロとしている。テスラが先駆けて採用する超大型のアルミダイカスト一体化部品を取り入れるなど自動化しやすい設計にし、10時間での生産を目指す。

VWの戦略はテスラを意識して模倣しているように見える。資源から電池、車両、充電、資源再利用といった「クローズドループ(完結する円環)」をつくりだし、バリューチェーンを切れ目なく押さえる戦略だ。

EVのコストの4割を占める電池で、性能のカギを握る電池セルについて、VWはかつてLG化学など外部から主に調達していた。だが電池の数量と性能確保は生命線だと、自前戦略に切り替えた。

19年にスウェーデンの電池メーカー、ノースボルトに約20%を出資した。ノースボルトが追加の資金調達で大きくなった今も比率を維持している。EV約500万台分に相当する年間240ギガワット時を30年までに生産するため、ノースボルトを含む自前工場を6カ所造ると21年に発表した。

VWが約26%を出資し筆頭株主となった中国の電池大手、国軒高科とは量販車向けの低コスト電池の生産を25年にドイツで始める。スペインで26年から、チェコで27年ごろから量産を予定している。

ガソリン車よりコスト安

生産する電池は原則、同一規格とし、大量調達・大量生産で原材料費を下げる。電池システムのコストを、1キロワット時あたり100ユーロより大幅に安くする。100ユーロを下回ればEVの完成車コストがエンジン車を下回るとされる。

電池セルのコストの7~8割を占めるコバルトやニッケルなどの鉱物資源でも手を打っている。出資した国軒高科はニッケルとコバルト鉱山の所有権を持つ企業との合弁会社を立ち上げた。VWは22年3月にコバルトを使った電池材料を手掛ける浙江華友鈷業と、ニッケル鉱山の権益を保有する青山控股集団の2社との提携を発表した。

EV利用で重要な充電分野でもパズルのピースを埋めている。英BPなどエネルギー大手と運営する欧州の急速充電設備数を、25年までに現在の5倍の1万8千カ所にする。独電力大手RWEなどの再生可能エネルギー発電プロジェクトに出資した。再生エネ電力を充電することでEVのライフサイクル二酸化炭素(CO2)排出を下げる。

劣化した電池からコバルトやニッケルなどを回収するため、ザルツギッターにリサイクルの実証工場を設けた。先の話だが十分なリサイクル材が確保できれば、採掘する原材料を大幅に減らせる。

EV専用車台、鉛筆と紙で起草

EVの車台開発にも長く取り組んできた。VWが社運をかけて開発している新型車種「トリニティ」(開発コード名)は、EV(電気自動車)専用の車台「SSP」をVWブランドで初めて採用する。この車台は小型車から大型車、量販車から高級車までをカバーするグループ全体のEVの基盤だ。VW乗用車ブランドのトップでグループの量販車を統括するラルフ・ブランドシュテッター氏は「VWはグローバルのプラットフォームチャンピオンだ」と強調する。

EV専用車台の開発の始まりは、7年前に遡る。

2015年10月のある深夜、ウォルフスブルクに幹部が緊急招集された。呼びかけたのは現在のグループ社長のヘルベルト・ディース氏だ。7月に独BMWから招かれ、VW乗用車ブランドのトップに就いたばかりだった。VWは史上最大級の混乱の中だった。9月にディーゼル車による排ガス不正事件が発覚していた。

会社がつぶれるのではないかと不安を抱く従業員も少なくなかった。ディース氏が緊急招集した会議の目的は2つあった。ひとつは将来必要な技術への投資の原資を確保することだ。もうひとつはディーゼルを使わずに、欧州連合(EU)が20年に始める二酸化炭素(CO2)の排出規制に対応することだ。

当時、調達責任者だったブランドシュテッター氏は「我々には時間がなかった」と振り返る。世界で最も厳しいとされたEUのCO2排出規制は5年後に迫っていた。

トヨタ自動車など日本勢が得意なハイブリッド車の技術を、VWが持っていないことも響いていた。「クリーンディーゼル」で規制を乗り切ろうとしてきたが、不正発覚でそれが欺瞞(ぎまん)だと証明されてしまった。

追い込まれたVWに選択肢は限られていた。「結論は自明だった。ラインアップを電動化することが前に進む唯一の道だと」(ブランドシュテッター氏)。会議は熱を帯びた。当時、電動化といえばハイブリッドを意味し、純粋なEVの市場は極めてニッチだった。EVは本当に売れるのか、顧客を満足させられるのか。その中で議論が収れんしていったのは、VWの強みは何かということだ。

EVでも規模追う

ディーゼル車の失敗とは裏腹に、12年から取り組んできた「MQB」と呼ぶ基本設計を共通にすることを軸とした戦略が実を結び始めていた。基本設計を作り込むことが必要だが、設計が一度できあがれば、大幅に生産が効率化でき、コストを削減できる。高級車の技術の量販車への展開もしやすいため、VWや廉価ブランドのシュコダは飛躍的に品質が向上した。

EVでもこの戦略を使わない手はない。当時、開発トップだったフランク・ウェルシュ氏が紙と鉛筆を取り出しスケッチを始めた。描き出されたのは長方形の板に4つの車輪がついた車台だ。後輪にモーターを設置して、電気は前から後ろに流れていく。長方形の板には「『チョコレート』バッテリー 250~500km!」と記された。

EV専用車台「MEB」の誕生の瞬間だった。全く新しい基本設計の開発には莫大な資金と時間がかかる。規模を確保できなければ投資が回収できないおそれもある。MEBの開発決定は「EVで規模を追う」というVWの宣言だった。

テスラと差広がる

MEBの最大の特長は「スケーラブル」だ。様々な車種や電池に対応でき、規模の経済を追求できることを意味する。22年春の時点で4ブランドからハッチバックやSUV、ミニバンなど10車種以上を投入した。VW自社にとどまらず、米フォード・モーターへの供給も決まっている。

21年はEV販売台数が45万台と前の年の約2倍になり、欧米大手ではテスラに次ぐ2番手の地位を確立した。VWによると欧州でのEVのメーカー別シェアは25%で首位で、内燃機関車でのシェアを上回った。米国ではテスラに次ぐ2位のシェア8%となり、VWブランドで数年ぶりの黒字化の立役者になった。

だが、21年に93万台を売ったテスラとの台数の差はむしろ広がっている。そこで放つ次なる矢がSSPでありトリニティだ。トリニティは「ミッションT」と社内で呼ばれたプロジェクトから生まれた。Tとはもちろんテスラだ。

SSPでさらにEVの規模を追求するということと並んで重要なのが、グループ共通のソフトウエア「E3 2.0」の採用だ。MEBではハード中心の発想から抜け切れていなかったが、SSPはソフト中心に切り替えるという。テスラ対抗だけでなく、牙城の中国市場でもコネクテッドや高度運転支援機能を求める市場の需要との乖離(かいり)を埋める必要がある。

かつて作り手が考える理想のクルマを掲げた「Das Auto」(The Carのドイツ語)から、ソフトを軸にしたユーザー視点の電動モビリティー「NEW AUTO」へ。巨艦の再構築は今も続く。

(深尾幸生)

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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説

記事にあるような「計画」が実際にどうなっているかを取材すべき。

材料不足やコスト高止まりなどに各社苦悩しています。

「ガソリン車よりコスト安」、「EVでも規模追う」という小見出しですが、テスラも最近大幅値上げし、コスト削減の切り札のように書かれている超大型アルミダイカスト一体化部品は、ちょっとぶつけただけで全取替になるので修理費3万ドルにもなると不評を買ってます。

VWのCFOは4月6日Financial Timesに対して「量と市場シェアよりも質と利益率に専念する」と述べたと報じられています。

EV化は進むと期待していますが、EVだけが解になるのは困難であり、EV一神教は戦略を誤らせると思います。

2022年4月26日 12:32 』