[FT]欧州向けのアルジェリア産天然ガス 供給余力乏しく

[FT]欧州向けのアルジェリア産天然ガス 供給余力乏しく
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『アルジェリアに好機が到来したはずだった。北アフリカに位置する同国にとって、ロシア産ガスから離れようとする欧州の動きは、輸出を最大限に増やして欧州のエネルギー市場でシェアを高める絶好のチャンスになるものだった。

3月には米国のブリンケン国務長官がアルジェリアを訪問した=ロイター

欧州がロシア産ガスへの依存度を減らそうとする中で、欧米がアルジェリアの石油・ガス資源に新たな関心を向けていることを示す動きがここ数週間のうちにあった。イタリアのドラギ首相や米国のブリンケン国務長官などの要人が首都アルジェを訪問し、エネルギー安全保障について協議している。

この化石燃料の輸出国への関心と石油・ガス価格の高騰は、2014年秋以降の原油価格急落を境に外貨準備を減らしてきたアルジェリアにいくらかの救いをもたらしている。

しかし、エネルギー専門家は、欧州への天然ガス供給で第3位、約8%のシェアを占めるアルジェリアに、早急に輸出に振り向けられる十分な量の余剰なガスはないと指摘する。

石油・ガス部門への外国投資が長年にわたり不足し、増産能力は限られているという。一部の専門家は、アルジェリアの最大の外貨獲得源である石油・ガスをめぐる政策がしばしば、透明性を欠く政治エリートの派閥抗争の焦点となり、頻繁なルール変更につながっていることも挙げる。

イタリアやスペインにガス供給

すでにイタリア石油・ガス大手のイタリア炭化水素公社(ENI)や仏エネルギー大手トタルエナジーズなどが、パイプラインでガスをイタリア、スペイン、ポルトガルに供給するアルジェリアに進出している。政治リスクコンサルタントのアンソニー・スキナー氏は「アルジェリアは潜在力をフルに発揮するチャンスを逃した」と語る。「困難な契約条件や、官僚主義と意思決定の遅さが特徴となっている全体的な操業環境のせいで、国際石油大手の投資が長年不足していることが原因だ」という。直近14年の石油・ガス開発のライセンスラウンドで、落札されたのは31鉱区のうちわずか4鉱区にとどまった。

英オックスフォード・エネルギー研究所のモステファ・オキ上級研究員は、「短期的にはアルジェリアは欧州へのガス供給を数十億立方メートルしか増やせない」と話す。

ドラギ氏が訪問中の11日、アルジェリア国営炭化水素公社(ソナトラック)とENIが交わした契約により、アルジェリア側は徐々に輸出量を増やし、23~24年に追加量は90億立方メートルに達する。イタリアは現時点で年間210億立方メートルを購入している。

オキ氏は「新たなエネルギー地政学により、アルジェリアの石油・ガス部門の川上に国際提携が戻るようになるだろう」との見方を示す。だが、新たなガス供給の共同開発は長いプロセスとなり、欧州の脱炭素化計画と矛盾をきたす可能性もある。オキ氏は、アルジェリア国内の天然ガス需要の増加が輸出拡大の足かせになるとも指摘した。

一部の専門家は明るい材料になりうる兆しとして、石油・ガスに関する政策の調整を目的に、テブン大統領が議長を務める国家エネルギー評議会が最近発足したことを挙げる。
投資環境の整備遅れる

シンクタンク国際危機グループ(ICG)で北アフリカプログラムを統括するリカルド・ファビアーニ氏は「アルジェリアがただ目先の利益に焦点を合わせるのではなく、長期的戦略について考えることに役立つ可能性がある」と話す。「絶え間ないルール変更で、アルジェリアは投資環境が安定しないという認識が固まっていた」

公式統計によると、石油・ガスの輸出額は20年の200億ドル(約2兆6000億円)から21年の350億ドルへと増えている。この増収で政府は国民に不評な増税と補助金改革の計画を棚上げし、「怒りを抱く若者をなだめる」(スキナー氏)ための月額90ドルの失業給付も新たに導入できた。世界銀行が引用している最新データでは、アルジェリアの若年失業率は20年時点で31.4%に及ぶ。

アルジェリアでは数十年来、専制支配を受け入れるのと引き換えに政府が国民に補助金と雇用を与えるという暗黙の取引が政治システムを支えてきた。だが、14年秋以降の原油価格急落でこの仕組みにほころびが生じた。

テブン氏の前任ブーテフリカ氏は19年、汚職や生活水準の低下、専制支配に嫌気が差した国民の大規模な反政府デモの波が広がり、辞任を余儀なくされた。デモは1年にわたり続いたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響と政府の弾圧の下で消えていった。

ファビアーニ氏は「誰が大統領になっても権力基盤は限定的で、財政状態が厳しく、そうすることがより難しい時期に困難な改革の決断を下そうとすることになる」と説明する。「ひとたび原油価格が上がれば、改革をやめて人気取りのために金をばらまき始める」

改革に消極的な政治体制

英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中東・北アフリカプログラムのアソシエートフェロー、アデル・ハマイジア氏によると、テブン政権は農業や起業などの分野で民間投資を促そうといくつかの改革に着手したが、まだ「混然とした状況で、政府は改革の道筋を見つけ出そうとしているが、すでに寿命が尽きた超過利潤の分配を核とする社会契約に固執している」という。

持続可能な開発の専門家で、アルジェでコンサルティング会社AHCを率いるアリ・ハルビ氏は、経済成長と雇用創出、外資及び民間部門による投資はアルジェリア経済に必要な改革に不可欠だと強調する。

「今の私たちが持っているチャンスは、追加的な歳入を構造改革に使うことだ」と同氏は言う。「補助金やこれまでと同じ国営企業に振り向けられるべきではない。しかし、これは政治的問題だ。この国は独裁体制で官僚と軍に支えられている。彼らはある程度まで民間部門による開発を許容するが、常に統制を失うことを恐れている」

By Heba Saleh

(2022年4月20日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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