米中の国防閣僚協議、にじむ偶発衝突回避の思惑

米中の国防閣僚協議、にじむ偶発衝突回避の思惑
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『【ワシントン=坂口幸裕、北京=羽田野主】米中両政府は20日、バイデン政権が発足して初めてとなる国防閣僚による電話協議を開いた。ウクライナや台湾問題に関する立場の隔たりはあるものの、中国がこれまで慎重だった米国との対話に応じたことで、双方とも偶発的な軍事衝突を避けたい意思があることを印象づけた。

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「ウクライナ問題を利用して中国に泥を塗ったり、圧力をかけたりすべきではない」「台湾問題がうまく処理されないと両国関係に破壊的な影響を及ぼす」――。中国の魏鳳和国務委員兼国防相は20日、オースティン米国防長官に繰り返し警告した。

米国はウクライナへの攻撃を続けるロシアへの支援について中国に経済制裁をちらつかせて停止を求めてきた。オースティン氏は20日の協議で、ロシアに対する軍事支援を控えるよう重ねて要求したもようだ。中国はこれまで軍事支援の可能性を否定する一方で「ロシアと正常な経済や貿易活動は継続する」(中国外務省)としてきた。

台湾問題でも対立は続く。米国は「台湾海峡の平和と安定を損ねたりする一方的な取り組みに強く反対する」(バイデン大統領)などと繰り返し伝達。台湾への武器供与を強化し、台湾軍への訓練を実施するなど軍事面で接近している。

今回は3月の米中首脳による電話協議を踏まえた対話になった。米メディアによると、「重要な問題について大きな進展は期待していなかった」(国防総省高官)ものの、2021年1月に発足したバイデン政権で国防分野のトップ同士による対話は信頼醸成への一歩になった。

これまで台湾海峡や南シナ海で米中両国の軍が意図しない形で衝突するリスクが指摘されてきた。オースティン氏は「米中は責任のある方式で競争とリスクをコントロールし、両軍が直面する難題を適切に処理しなければならない」と訴えた。

中国はこれまで米国の要請を拒否してきたが、今回の対話には応じた。中国共産党系メディアの環球時報は21日付の社説で「中米関係が緊張している状況のもとで、国防相の対話は対外的によいシグナルを出した」と評価した。中国の外交・安全保障政策に詳しい米シンクタンク、ランド研究所のライル・モリス上級政策アナリストはロシアによるウクライナ侵攻が「対話のきっかけになった可能性がある」と指摘する。

幅広いテーマで隔たりが大きい米中にウクライナ問題という新たな火種が加わった。モリス氏は「国防相の間で意思疎通の仕組みを確立するだけでも価値がある。緊張や対立する分野があるからこそお互いに意見を交換し合うことは常に重要だ」と話す。』