プーチン氏、マリウポリの製鉄所の総攻撃中止と徹底封鎖を命じる

プーチン氏、マリウポリの製鉄所の総攻撃中止と徹底封鎖を命じる
https://www.bbc.com/japanese/61175971

『ウクライナの軍事侵攻を続けるロシアのウラジーミル・プーチン大統領は21日、制圧を目指す南東部の要衝マリウポリについて、ウクライナ兵がたてこもり徹底抗戦を続けるアゾフスタリ製鉄所への総攻撃を中止し、「ハエ1匹逃げられないよう」封鎖するよう命じた。

ロシア政府は同日、ロシア軍がマリウポリを完全に掌握したと発表した。

ロシア政府は、プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相が会談する様子をテレビで放送。その中でショイグ国防相がロシア軍がマリウポリを掌握したと報告すると、プーチン氏はマリウポリの「解放」を祝い、ロシア軍をたたえた。

Vladimir Putin and Defence Minister Sergei Shoigu

画像提供, Russian pool
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プーチン大統領(左)はマリウポリの製鉄所を徹底封鎖するよう、ショイグ国防相(右)に命じた

その上でプーチン氏は国防相に、アゾフスタリ製鉄所への総攻撃を中止し、徹底的に封鎖するよう命じた。大統領は、「この墓所の中によじ上って入り、工業設備の間を縫って地下まで潜る必要はない」と指示。ロシア軍には代わりに「ハエ1匹たりとも逃げ出せないよう、この工業地区を封鎖」するよう命令した。

プーチン氏はさらに、広大な工業施設を一気に襲撃するのは「合理的ではない」と述べ、総攻撃を中止するのはロシア兵の命を守るためだと話した。』

『ショイグ氏はこれに先立ち、約2000人のウクライナ兵が製鉄所内にたてこもっていると報告していた。

広大な地下シェルターのある同製鉄所内にとどまっているのは、ウクライナ海兵隊と、極右組織とつながりのあるアゾフ大隊。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアの攻勢を受けながら、マリウポリ防衛を続ける兵士たちを称賛している。

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プーチン大統領、ウクライナ兵がたてこもる製鉄所の総攻撃に中止命令 マリウポリ攻防
Mariupol

市民と負傷兵の脱出求める=ウクライナ副首相

アゾフスタリ製鉄所の封鎖をプーチン氏が命じた後、ウクライナのイリナ・ウェレシチュク副首相はソーシャルメディアで、製鉄所には「民間人約1000人と負傷兵約500人がいる。全員を今日中にアゾフスタリから脱出させなくてはならない」と要求し、避難用の人道回廊設置をただちに認めるようロシア側に呼び掛けた。

20日には製鉄所内にたてこもるウクライナ海兵隊の司令官がBBCに対して、閉じ込められた負傷兵は医薬品などがない状態で「腐りつつある」と訴え、部下たちを他国に出国させる必要があると伝えていた。

ウクライナで取材するBBCのジョー・インウッド記者は、ロシア政府はマリウポリを自力で完全制圧するのではなく、残るウクライナ守備隊と市民を飢餓状態に追い込み、降伏させることにしたようだと指摘する。

A handout still image taken from a handout video made available by the Russian Defence Ministry”s press-service shows smoke rising from the Azovstal steel plant during Russian fighter-bombers Su-34 airstrikes on Mariupol, Ukraine, 20 April 2022.

画像提供, EPA/Russia Defence Ministry
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ロシア軍がアゾフスタリ製鉄所を空爆した様子だとしてロシア国防省は20日、この写真を公表した

製鉄所総攻撃はロシアにとって軍事的に不要=元英総司令官

英軍統合司令部の元司令官、サー・リチャード・バロンズはロシア政府の発表について、製鉄所に籠城するウクライナ兵士を全滅させる作戦は「双方にとって大損害が出るのは必須」で、それをなくして実現するのはロシアにとって「本当に難しい」ことだったはずだとの見方を示した。

港湾都市マリウポリには、ロシアとクリミア半島を結ぶ道路が通るため、ロシア軍にとって制圧が重要な要衝とされてきた。

しかしバロンズ元司令官は、マリウポリ攻防戦の勝敗はもはや「それほど重要ではなくなった」と指摘。ロシア政府が現時点で「制圧した」と宣言したのは、ロシア正教のイースター(復活祭)を目前に「一定の成果」を国民に発表することが目的だったのだろうと、元司令官は解説した。

「さらに、軍事的に重要ではない製鉄所をめぐる戦いに、軍はこれ以上の兵や装備を費やさずに済む。そして、今となっては本当に重要な、ドンバス戦に傾注できるようになる」とも、元司令官は述べた。

ロシアとウクライナの戦争で現状ではどちら有利なのかという質問には、バロンズ元司令官は「非常に微妙なバランスだ」と答えた。

<解説> ロシア政府の広報マシーンがフル回転――ジェニー・ヒル(モスクワ)

クレムリン(ロシア政府)の広報マシーンがフル回転している。プーチン大統領がショイグ国防相と共にテレビに登場し、ロシアがマリウポリを掌握したと発表したのだ。

しかし実際には、この数日でとりわけ実質的に変化したことはない。ウクライナの兵士たちはまだアゾフスタリ製鉄所の中にいる。これは、すべてが計画通りに順当に進んでいるとロシア国民に伝えるための、ロシア政府の戦略の一環だ。

国営テレビは連日、ロシア軍がいかに前進しているか、いかにウクライナの軍事目標を攻撃し、いかに各地の町や地域を「解放」しているか、快活な調子で伝えている。

一方で、ショイグ国防相はあまり姿を見せていなかったので、ウクライナ侵略がうまくいっていないことについて、プーチン大統領の不興を買ったのではないかという憶測も出ていた。しかしそのショイグ氏もこの日は、テレビに登場し、ボスに良い知らせを報告していた。

<解説> プーチン氏がマリウポリで計画を変更か? その理由は――ポール・アダムズ外交担当編集委員

ロシア軍がアゾフスタリ製鉄所爆撃を中止し、徹底封鎖に作戦を変更するのか、プーチン大統領の発言通りになるのかは、今後の展開を見てから信じることにしたい。

しかし、もしその通りになるとしたら、なぜ作戦を変更したのか。

プーチン大統領は、ウクライナ東部ドンバス地域での大攻勢を早く進めたがっている。

マリウポリ攻防戦によってロシアは貴重な資源を失ったほか、多くのロシア軍部隊がここにくぎづけになり、ほかの作戦目標遂行のために回すことができなかった。

カルミウス川によってマリウポリ中心部から隔てられている製鉄所は、比較的簡単に孤立させられるはずだが、本当にプーチン氏の言うように「ハエ1匹たりとも逃さない」よう封鎖するには、かなりの軍勢を残す必要がある。

加えてゼレンスキー大統領は、マリウポリ守備隊が全滅させられたら和平交渉はあり得ないと誓っている。ということは、プーチン氏は外交プロセスを、少なくとも外交プロセスの外見だけは、残しておきたいのかもしれない。

経済的な要因さえ、関係しているかもしれない。

アゾフスタリは欧州最大級の製鉄所だ。何週間も続いた悲惨な破壊の後でも、まだ何か価値のあるものが残っているのではないかと、ロシア政府は期待しているのかもしれない。
(英語記事 Ukraine war latest news)』