イエメン内戦、サウジが和平模索 石油の安定供給目指す

イエメン内戦、サウジが和平模索 石油の安定供給目指す
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『【ドバイ=福冨隼太郎】「世界最悪の人道危機」とも呼ばれる中東イエメンの内戦を巡り、暫定政権を支えてきたサウジアラビアが本格的な和平に前向きだ。親イラン武装組織フーシ派と対立してきたイエメンのハディ暫定大統領を事実上の辞任に追い込んだ。ウクライナ危機で世界のエネルギー需給が逼迫するなか、サウジ石油施設へのフーシ派の攻撃を抑え、安定供給を目指す。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版、WSJ)は17日、政府当局者からの情報だとして、サウジが4月上旬にハディ氏に圧力をかけ、権限移譲に追い込んだと伝えた。サウジのムハンマド皇太子が、リヤドに滞在するハディ氏に新設の「大統領評議会」へ権限を移譲するよう書面で要求。ハディ氏も7日、全権限を委ねると表明した。

WSJは、サウジの複数の高官がハディ氏の「汚職の証拠」を公表すると脅したと報じた。

権限移譲の発表直後、サウジはアラブ首長国連邦(UAE)とともにイエメンへの30億ドル(約3800億円)の支援を表明。評議会にフーシ派との和平協議を促した。

権限移譲とともにフーシ派との関係が悪かった副大統領は解任された。評議会のメンバーは8人で、サレハ前大統領の下で副首相を務め、サウジに近いアリーミ氏が議長に就いた。ハディ氏は当面、暫定大統領にとどまる見通しだが、事実上の辞任だ。

2日に発効した停戦合意は2カ月間の予定で、おおむね順守されている。前半の約1カ月間は当事者の大半が信徒のイスラム教のラマダン(断食月)にあたる。仲介した国連の特使によると、停戦2カ月の間に人道支援を実施し、対話の糸口を探る。

サウジが和平を急ぐのは、同国の石油施設に対するフーシ派のミサイルやドローン(無人機)による攻撃が相次ぎ、生産に大きな打撃を与えかねないからだ。

ウクライナに侵攻した産油国ロシアに対する米欧の制裁で世界の石油需給は引き締まり、サウジに対して同盟国の米国は増産圧力を強めている。サウジは大幅な増産に応じていないが、歳入確保のためにも安定供給は続ける構えだ。

そのためにはフーシ派の攻撃停止が欠かせない。サウジはこれまで米国に供与された地対空ミサイル「パトリオット」を軸に防空体制を築いてきたが、フーシ派の攻撃は執拗で、最近ではパトリオットの在庫が底をつきかねないとの観測も浮上していた。

イエメンでは2015年1月にフーシ派がクーデターで大統領宮殿を制圧。逃れたハディ氏をサウジはかくまい、同年3月には軍事介入に踏み切った。

国連によると市民を含めた死者は少なくとも約37万人に達し、深刻な人道危機に陥っている。

サウジ国防相として介入を主導したのが皇太子就任前のムハンマド氏だ。フーシ派の背後にいるイランの勢力拡大を抑える「代理戦争」の様相を呈していた。

イエメン内戦はこれまでにも一時的な停戦を繰り返してきた。スイスのシンクタンクのアドバイザーで、イエメンの首都サヌアを拠点とするモハメド・アル・カディ氏は「フーシ派との取引をまとめるのは非常に難しいだろう」と指摘する。』