[FT]米民主、中間選挙は惨敗も 石油備蓄放出で若者離れ

[FT]米民主、中間選挙は惨敗も 石油備蓄放出で若者離れ
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『大勢の人が一斉に落胆の声を上げたのではないだろうか。米ペンシルベニア州フィラデルフィア市が11日、屋内でのマスク着用を再び義務づけると発表したからだ。

民主党が期待できそうなことといえば共和党が自ら墓穴を掘ることだ=ロイター

これは民主党にとって悪い予兆にほかならない。この措置が必要かどうかは別として(米疾病対策センターなど大半の専門家は必要でないと考えている)、不可欠だとしても、行動の自由を制限するような政策を導入すればリベラル派はその代償を払うことになる。

米国の有権者は新型コロナウイルスが世界的に大流行してから1年以上にわたって学校が閉鎖されたことで腹を立ててきた。しかも今になってみれば学校閉鎖は行き過ぎだったとの印象が強い。マスク着用の再義務化は民主党にとってわが身に災いが降りかかるブーメランさながらだ。

インフレ・コロナ・移民など問題だらけ

問題は民主党が下り坂の党勢を回復できるかどうかだ。もともと11月の中間選挙では敗色濃厚とみられてきたが、最近の動向をみるとそれどころか惨敗の恐れすらある。

世論調査会社は「熱意のギャップ」という指標に注目している。共和党と民主党の支持者について、それぞれが投票に行くとする割合にどの程度差があるかを示す数値だ。2021年11月のバージニア州知事選で民主党候補が敗北した時、その差は既に11ポイントあった。それが今では17ポイントとさらに開いてしまった。

リベラル寄りとされるバージニア州で民主党が州知事選で敗北する原因となった要因の多くはその後さらに悪化している。

その一つがインフレで、3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%上昇し1981年12月以来の高い伸びとなった。新型コロナウイルスを感染抑制するための行動制限も長引いている。米国民の大半はこうした措置は撤廃すべきだと考えているため、不満が広がっている。

移民問題では、これまで感染拡大防止策として国境で実施していた「タイトル42」と呼ばれる不法越境者の即時送還措置を5月23日から廃止するとバイデン政権が決定した。そのため、来月以降は不法移民が増加するとみられる。

そして、中間選挙は歴史的に現職が不利という傾向もある。不安要因が多いこともあり、バイデン政権の支持率は下がり続けている。41%という数字は民主党が共和党に圧勝した18年中間選挙の前のトランプ大統領(当時)の支持率より1~2ポイント高いだけだ。

有権者が抱える不満の多くは突き詰めればインフレに収束する。米雇用市場は活況を呈しており、月別の新規雇用者数はバイデン氏が21年1月に大統領に就任して以来過去最高に近い水準を維持している。賃金上昇率もここ1年は5.6%と非常に高い。

だがインフレはこれを上回る水準で推移しており、物価調整後の賃金は同じ時期に3%近く低下している。

インフレや犯罪の増加などの有権者の不安を取り除くためにバイデン氏ができることは限られている。しかし、その限られた対策を講じれば民主党の左派、とりわけ11月に投票所へ足を運んでもらいたい若年層を遠ざけてしまうリスクが増す。

18~30歳のバイデン氏支持率は30%台前半という異例の低さで、どの年齢層とくらべても低い。

ウクライナ危機への対応でも不評

このような事態に陥った理由の一つはバイデン氏が3月31日に戦略石油備蓄を1日当たり平均100万バレル追加で放出すると発表したことにある。ガソリン価格を抑制するために導入したものの、値下げ効果はそこそこといったところだ。

何より問題なのは、脱炭素を目指して経済を変えていくという、若者に非常に人気がある政策とは矛盾することだ。

地球温暖化との闘いは最優先事項の一つだと宣言した当のバイデン氏が今ではシェールオイル採掘に使う水圧破砕(フラッキング)や連邦管轄地の掘削権を持つエネルギー会社に化石燃料を生産するよう迫っている。

これは方針を百八十度転換したに等しい。あらゆる1次産品が値上がりしているのはウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁が原因で、その責任はロシアのプーチン大統領にあると主張しても、有権者の心が動くとは思えない。米国の物価はロシアがウクライナに侵攻する1年前から、毎月上昇し続けてきたからだ。

バイデン氏はウクライナ危機への対応でも米国民から評価されていない。米NBCニュースの調査によると、有権者の10人に7人がバイデン氏のウクライナ侵攻への対応の信頼度は低いと回答した。

また、バイデン氏は北大西洋条約機構(NATO)はウクライナには直接干渉しないと明言しているにもかかわらず、7割を超える人々が米軍が戦場に派兵されることを懸念していると答えた。

このままでは中間選挙の結果が民主党にとって大惨事になるのは確実だ。これを回避するためバイデン氏にできることはあるのだろうか。民主党が期待できそうなことといえば共和党が自ら墓穴を掘ることで、その可能性は常にある。

また、保守派が多数を占める米連邦最高裁の動向も重要だ。今夏、米最高裁は妊娠中絶について憲法上の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド事件」の最高裁判決を覆すかどうかを審理する。

判決が覆された場合、女性有権者が再び民主党支持に戻ってくる可能性がある。ウクライナでの戦争がエスカレートすれば国民が大統領を中心に結束するようになるかもしれない。

なお、近年を振り返ると、任期1期目の大統領が、中間選挙で自身が所属する政党の過半数を議会で維持できたのは、米同時テロ発生から間もない02年のブッシュ大統領(子)の時だけだ。
敵対的な議会との対峙は不可避か

政治情勢に大きな変化がなければバイデン氏は任期の残り半分を、共和党が過半数を占める、敵対的な議会と対峙せざるを得ないことを覚悟する必要がある。

その2年後には米国民は20年の大統領選挙を再現したような対決をもう一度体験することになるかもしれない。トランプ氏は24年の大統領選に再び出馬したいと言い続けている。過去の事例をみれば、その言葉は文字通りに受け止めるべきだろう。

By Edward Luce

(2022年4月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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