[FT]世界経済はスタグフレーションへ ウクライナ侵攻で

[FT]世界経済はスタグフレーションへ ウクライナ侵攻で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB190T90Z10C22A4000000/

『ロシアのウクライナ侵攻でコロナ後の景気回復が腰折れし、2022年の世界経済は成長鈍化と高インフレの二重苦、すなわちスタグフレーションにさいなまれるという見通しが、フィナンシャル・タイムズ(FT)の調査で明らかになった。

米シアトルの港湾。米国では消費の好調が続き、インフレの制御が難しくなっている=ロイター

米ブルッキングス研究所とFTが共同で算出する「世界経済回復トラッキング指数(TIGER)」によると、物価上昇圧力の高まり、生産の伸び減速、景況感の悪化が、大半の国々で経済のマイナス要因になりつつある。

ブルッキングス研究所の上級フェロー、エスワー・プラサド氏は、各国の政策担当者が「難局」に直面すると見込む。

国際通貨基金(IMF)は近く、大半の国々の経済成長予測を下方修正する見通し。18~24日にはIMF・世界銀行の春季総会が開かれ、悪化する経済見通しへの対応策を話し合う。

各国の政策担当者は、急速なインフレに対策を講じ、債務水準が高い中での金利上昇リスクに対応することを迫られる。

IMFのゲオルギエバ専務理事は14日、ウクライナ戦争は世界経済にとって「大きな挫折」を意味すると発言した。

プラサド氏は22年について、「インフレ圧力が高まり、政策対応の余地が限られる状況下で、地政学的な勢力図の再編、根強い供給問題、金融市場の急変動にさらされ、緊迫感の強い時期」になる可能性があると指摘する。

TIGERは、世界全体と各国の実体経済活動、金融市場、景況感の指標をそれぞれの過去の平均と比較して算出し、足元のデータが平常時に比べてどれほど良いか、または悪いかを把握するのに用いられる。

半年ごとに集計されるTIGERは今回、先進国と新興国で21年終盤から成長が著しく鈍化したことを示した。景況感もピークから下がり、やがて金融市場も軟調に転じた。

米欧中の経済が難局に

プラサド氏は、世界の3大経済圏がそろって重大な困難に直面しているとみる。米国では消費が引き続き好調で、労働市場がコロナ前の状態に戻ったとはいえ、連邦準備理事会(FRB)にとって、インフレ圧力が高まるなかで物価安定という使命の遂行がきわめて難しくなっている。3月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.5%上昇し、40年ぶりの高い伸びとなった。

「FRBはインフレをコントロールできなくなる現実的なリスクに直面しており、これまでの説明より積極的な引き締めを余儀なくされる可能性がある。23年の成長が大きく下押しされる可能性が高まっている」とプラサド氏は語った。

中国は、感染力の比較的高い変異型「オミクロン型」の流行後も「ゼロコロナ」政策に固執したことから、さまざまな問題が派生している。上海での厳しい外出制限に代表されるロックダウン(都市封鎖)が消費や投資、生産を妨げていると同時に、将来的な金融政策の再緩和で金融市場が中長期的に不安定状態に陥るリスクも高まっている。

中国の22年1~3月の国内総生産(GDP)は18日に発表される。中国政府は今年、5.5%の経済成長を目指しているが、目標達成の難しさが浮き彫りとなりそうだ(編集注、18日に発表された1~3月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比で4.8%増だった)。

欧州は、ほとんどの国が、ウクライナ戦争の影響を最も大きく受けながら、ロシア産エネルギーへの依存解消に苦戦するなかで、景況感が急速に悪化した。

プラサド氏は、政策による簡単な解決の道がない状況にあり、行動を起こす意思も不足していると指摘し、以下のように語った。

「世界経済を適切な成長軌道に保つためには、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)による供給混乱を抑える方策や、地政学的な緊張を和らげる措置のほか、短期的な需要喚起策にとどまらず長期的に生産性を向上させるインフラへに支出するなど、根本的な問題に対処する協調行動が必要だ」

By Chris Giles

(2022年4月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

【関連記事】
・スタグフレーションが脅かす長期投資の定石(NY特急便)
・米金融政策、「インフレ退治」の難路
・日銀、「股裂き」の難局 物価高と経済下振れの同時進行
・政府・日銀が見過ごした「悪い円安」のシグナル
・米債券市場が警告 高インフレ・景気減速・金融環境悪化 』