勢い増すロビー活動 不都合な政策に企業が拒否権
アメリカン・デモクラシー③漂うマネー・惑う票
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN114NA0R10C22A2000000/
※ 『首都ワシントンの弁護士事務所に所属する別のロビイストは「トランプ政権は部外者が多く、我々の意見はあまり聞き入れられなかった。バイデン政権下でワシントンは平時に戻った」と証言する。「政権内部はエスタブリッシュメント(主流派)で構成され、ロビイストが接触しやすい」という。』…。
※ こういうところに、「政権の性格」が如実に出ているな…。
※ 「民主主義国」と一口に言うが、「政権回しているテクノラート(官僚)」層は、「毛並みのいい」「裕福な階級」出身者が殆どだ…。
※ しかし、時々、「そうでもない階級出身者」が大統領になったり、首相になったりする…。
※ それで、「既存の既得権益」にとらわれない「政策」を実施して、「成果を挙げる」ことがある…。
※ 日本じゃ、「田中角栄氏」が有名だ…。当時は、「今太閤」とか呼ばれて、もてはやされた…。
※ しかし、一族郎党の面倒をみたり、「蓄財」を目指したりして、「我欲」が出るもんだから、ムリして破綻してしまうことも多い…。
※ 逆に、「上流階級」出身者は、そういうムリは、しないで済むが、今度は「一般庶民の暮らし」に疎いから、打ち出す「政策」が「現実離れ」してたりする…。
※ 難しいもんだ…。
※ トランプ氏は、確かに「富豪」ではあるが、必ずしも「エスタブリッシュメント出身」というわけでは無かった…。
※ 2024年の大統領選挙は、どうなるんだろうか…。
※ 本人は、やる気まんまんという感じだが…。「税務調査」が入ってたりして、大変のようだ…。
※ 米国大統領選の行方は、「世界情勢」にも影響するんで、目が離せんな…。


『3月、米アップルは動画や電子書籍などのアプリから利用者を外部サイトに誘導できるよう規約を改定した。利用者は同社の決済システムを使わずにサービス提供企業から直接コンテンツを購入したり、サブスクリプション(継続課金)契約を結んだりしやすくなる。
アップルは「iPhone」上で配信する有料のアプリやコンテンツから原則15~30%の手数料を徴収している。アプリ開発企業からの「手数料が高すぎる」との批判を受け、各国の独禁当局が調査に動いていた。アップルは自主的に規約を見直すことで、批判の高まりをかわす狙いがある。
布石はあった。1月、米上院の司法委員会は「米国イノベーション・選択オンライン法案」を可決した。アップルやグーグルなどIT(情報技術)大手がプラットフォーム企業の立場を利用して自社の製品やサービスを優遇することを禁じる内容で、アプリ配信の囲い込みも規制対象となる可能性がある。
法案に賛成票を投じた共和党の重鎮クルーズ議員は委員会で「採決前にアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)から直接電話を受けた」と明らかにした。クック氏は40分間にわたってセキュリティーの懸念などを訴えたが、クルーズ氏は「考えを変えることはない」とはねつけた。
IT規制派のクロブシャー議員(民主)が提出した同法案は超党派が支持し、委員会では16対6の賛成多数で可決された。
危機感を強めるIT大手は有力議員の元スタッフらを動員して大規模なロビー活動を展開し、本会議で廃案に持ち込もうとしている。メタ(旧フェイスブック)はクロブシャー氏の元スタッフをロビイストに起用した。民主党と共和党が拮抗する上院本会議では法案の大幅修正を求める議員が多く、下院でも成立のメドが立っていない。
ロビー活動は企業の趨勢と産業政策の焦点を映す。かつてはゼネラル・エレクトリックやボーイング、エクソンモービルなどの製造・防衛大手や石油企業が中心を担った。西海岸のIT勢は政治と距離を置いてきたが、ここ数年、首都ワシントンでの存在感は急速に高まっている。米国のロビー活動費は2021年に20年比6%増の37億3000万ドル(約4700億円)と過去最高。支出額上位には米商工会議所などの業界団体に続き、メタやアマゾン・ドット・コムが挙がる。
労働者や消費者保護を掲げるバイデン政権の発足は大企業に逆風とみられてきた。だが、政権公約に掲げた法人増税や最低賃金の引き上げは経済界の圧力で棚上げされ、目玉政策だった石油・天然ガスの開発抑制も膠着したままだ。
バイデン大統領は21年8月に電気自動車(EV)の普及に関する大統領令に署名した。30年にEV比率5割という目標は意欲的に見えるが、一部の自動車メーカーが主張したプラグインハイブリッド車(PHV)がEVとして認められ、「大手の自主計画をなぞった内容」(自動車業界のロビイスト)だ。
首都ワシントンの弁護士事務所に所属する別のロビイストは「トランプ政権は部外者が多く、我々の意見はあまり聞き入れられなかった。バイデン政権下でワシントンは平時に戻った」と証言する。「政権内部はエスタブリッシュメント(主流派)で構成され、ロビイストが接触しやすい」という。
与野党が上院の50議席を分け合う数的バランスの中でロビー活動は勢いを増し、不都合な政策に対する企業の拒否権はかつてないほど強まっている。政策決定のキーマンとなった民主党のマンチン議員には、かねて関係が近かったエネルギー企業に加え、ITや自動車など各分野の大手が接触している。
米国では企業や団体がロビー活動を通じて規制当局や政策立案者と課題を共有し、市場の育成や規制のあり方について意見を交わしてきた。実情に即した制度設計が米経済の推進力となった一方、中国やロシアからは「合法の汚職」という批判もある。
消費者や投資家はロビー活動の目的を明確にし、資金使途を詳細に開示するよう求めている。不安定な政治バランスにつけ込んだ時間稼ぎが続くようなら、政治と企業の双方が信頼を失う。
(中山修志)
【関連記事】
・米「物言うCEO」の苦悩 政治と世論の圧力増す
・インフレ責任論、大企業に矛先 政権支持率低迷に焦り 』