[FT]英国の難民移送計画 ルワンダの受け入れ体制不透明

[FT]英国の難民移送計画 ルワンダの受け入れ体制不透明
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『難民認定を求める人々を4000マイル(約6400キロメートル)離れたアフリカ東部のルワンダへ移送する計画について、批判派を納得させようとしている英国のジョンソン首相は、ルワンダは「世界で最も安全な国の一つであり、移民を温かく受け入れて社会に溶け込ませる実績で世界的に知られている」と説明した。
ロンドンで会談したカガメ・ルワンダ大統領㊧とジョンソン英首相(2020年1月)=ロイター

英野党が「恥ずべき」計画だとする難民受け入れと引き換えに、カガメ大統領率いるルワンダ政府は1億2000万ポンド(約198億円)の前払い金を受け取る。同国のビルタ外相は、政府は移送された人々が「守られ、大事にされ、力づけられる」ようにし、彼らが望めば「恒久的にルワンダに定住」できるようにすると述べた。

だが、この言葉とは裏腹に、ルワンダには同様の難民移送プログラムで問題を起こした過去がある。例えば、イスラエルが国外退去させるアフリカからの難民認定希望者をルワンダが受け入れる予定だった2014年の計画は、その後に破綻した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は17年、ルワンダを名指しはしなかったが、「この政策は秘密に包まれ、実施に関しては透明性が欠如している」と指摘した。

さらに最近では、内戦で混乱するリビアからの難民や難民認定希望者を救うアフリカ連合(AU)の計画への参加に同意して3万人の受け入れを約束したが、約190人しか受け入れなかった。21年にはイスラム主義組織タリバンによるアフガニスタンの権力掌握を受けて、同国の少女らを受け入れると申し出た。

一部難民に資金行き渡らず

UNHCRによると、人口1300万人のルワンダは21年末時点で約13万人の難民や難民認定希望者を受け入れている。隣国のコンゴ民主共和国とブルンジから来た人々が大多数を占める。

新たな定住者たちは就労の権利など、ルワンダ経済において役割を担うことを認められている。ブルンジの団体「難民キャンプで暮らす人々の権利擁護者連合」の幹部は「難民も職探しができるIDカードをもらっているので、政府と難民の関係は良好だ」と言う。

だがこの幹部は、ルワンダで一部の難民は十分な食料や医療サービスを購入するのに「十分なお金を受け取っていない」と指摘し、「ただ飢えている人たちがいる」と話した。ルワンダにいる難民への資金拠出は近年乏しくなり、一部の支援プログラムが削減されている。

4年前、ルワンダの警察は60人以上の難民を逮捕した。食料配給の削減に抗議した人々で、大部分はコンゴ民主共和国出身者だった。逮捕者の一部は「ルワンダに対する敵対的な国際世論をあおる目的で偽情報を広めた」として訴追された。

英国は他国からの難民を受け入れるルワンダの姿勢を称賛したが、1994年のジェノサイド(民族大量虐殺)以降に経済を繁栄させたとたたえられるカガメ政権が、国内外で反体制派を弾圧しているという非難から注意をそらそうとしているだけだとの批判もある。政権側は否定しているが、何人かの反カガメ派が謎に包まれた状況で死亡している。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)でアフリカ中部担当ディレクターを務めるルイス・マッジ氏は「ルワンダは法の支配も最も基本的な人権の一部も尊重していない国だ。政府やその政策に批判的だとみなされただけで標的にされかねない」と話す。
「ルワンダは国際法で難民に認められている保護を常に軽視してきた。ルワンダで難民は虐待され、政府はしばしば国外でルワンダ難民を拉致して連れてきて裁判にかけたり不当な扱いをしている」と同氏は言う。

「反対派の弾圧隠蔽が狙い」

批判派は、難民受け入れはルワンダの指導者らが安全保障上のかけがえのないパートナーであるというイメージを高めるとともに、反体派に対する弾圧を隠すための外交工作だとしている。

ルワンダは中央アフリカ共和国やモザンビークの紛争に軍事介入し、ルワンダ軍部隊はモザンビークで欧米が投資する海底ガス田からイスラム武装勢力を遠ざけるのに中心的な役割を果たしている。

「ルワンダは政府のイメージのためだけに英国から難民を受け入れようとしている」と語るのは投獄されたこともあるルワンダの野党指導者、ビクトワール・インガビレ・ウムホザ氏だ。この国の人々は「ウガンダのような貧しい国がどうして豊かな英国から難民認定希望者を受け入れるのかと思っている」と同氏は語る。英国との取り決めは、カガメ氏が「アフリカの偉大な指導者」であることを「誇示するため」だという。

国連は「ルワンダ並びに同国が既に受け入れた難民への支援に連帯を示す」のは豊かな国の責任であってその逆ではないとして、英国の移送計画に強く反対している。

「UNHCRは英国、ルワンダの双方に計画の再考を求めた。ルワンダは数十年にわたり、紛争や迫害から逃れようとする難民に安全な避難場所を提供してきたが、大半が経済的機会の獲得を制限されたまま難民キャンプで生活している」と同事務所は表明した。

今から約20年前、当時のブレア英首相は国内の難民認定希望者を受け入れてもらえるようタンザニアに説得を試みたが失敗した。ジョンソン氏はルワンダへ移送される人々には「活力に満ちた同国で新たな生活を築く機会が与えられる」と述べた。

だが同じ日に、ルワンダ側から受け入れる難民についてそれと食い違うメッセージが出された。ビルタ外相は「このプログラムは既に英国内にいる難民認定希望者向けのものだ」と述べた上で、こう表明した。「周辺諸国や隣国のコンゴ民主共和国、ブルンジ、ウガンダ、タンザニアなどからの人々は受け入れないであろう」

By Joseph Cotterill and Andres Schipani

(2022年4月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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