ロシア軍、ウクライナに1万人追加 東部で戦闘激化へ

ロシア軍、ウクライナに1万人追加 東部で戦闘激化へ
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『【ワシントン=中村亮】ロシア軍は18日、ウクライナ東部2州の全面支配に向けて大規模な軍事作戦に着手したもようだ。米政府によると、ロシア軍は週末に1万人前後の兵士をウクライナに追加投入した。バイデン政権はウクライナ軍に遠方攻撃用の兵器を供与して対抗する。

AP通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は18日のビデオ演説で「ロシアが長い間準備してきた(東部2州が位置する)ドンバスでの戦闘を開始したと言える」と述べた。

ロシア軍は4月上旬、ウクライナの首都キーウ(キエフ)周辺から完全撤退して東部2州の支配を優先する方針に転じた。方針を実行に移し、2月下旬に始まったウクライナ侵攻は新たな局面に入る。

親ロシア派武装勢力は侵攻開始前、東部2州の約3割を実効支配しており、ロシア軍は支配を2州全体に広げる計画だ。ルガンスク州の大半をすでに支配し、同州の一部とドネツク州の西側をめぐる攻防が激しくなる。ロシアは2州を完全制圧すればウクライナとの停戦協議で優位に立てるとみているようだ。

ゼレンスキー氏の演説に先立って米国防総省高官は18日、記者団に対してロシア軍がウクライナの東部や南部に76個の大隊戦術グループを配置したと明らかにした。14日時点で65個と推計していた。1個あたりは兵士800~1000人で構成し、9000~1万1000人程度を増員したことになる。

ロシア軍は北・東・南からドネツク州に攻勢をかける構えだ。国防総省高官によると、北からはキーウから撤退したロシア軍が同国西部のベルゴロドやヴァルイキで弾薬や燃料、食料などを補給した。先週時点で両都市のエリアから10キロメートルを超えるロシア軍の車列がドネツク州に近いイジュームに向かった。

ロシア軍は南東部の要衝マリウポリの制圧を急ぐ。高官はマリウポリ制圧が完了すれば、ロシア軍は約12個の大隊戦術グループを別の地域に回せるようになると言及した。北上させてドネツク州の残る地域の支配に向けた任務にあてる可能性が高い。親ロシア派が実効支配してきたドネツク州の東側からも、同州の西に向けて攻勢をかけるとみられる。

ドネツク州の支配を巡っては、ロシア軍が主要都市クラマトルスクやスラビャンスクを掌握できるどうかがカギを握る。クラマトルスクでは4月上旬に駅がロシア軍のミサイル攻撃を受け、多数の一般市民が犠牲になっていた。

ロシア軍がドンバスを防衛するウクライナ軍を包囲する作戦をとることも考えられる。ウクライナ軍は同国西部から陸路で武器を東部へ運んでいるとみられ、包囲すれば補給路を遮断できる。ウクライナ軍が弱体化するのを待って消耗戦に持ち込む戦略だ。

ドンバスの戦いは主に開けた平地での交戦になり、兵士が身を隠す場所が少ないのが特徴だ。ウクライナ軍が成果をあげたキーウ周辺は住宅街や森林地帯での戦いで、ウクライナ軍は身を隠しながらロシア軍の戦車に接近し、対戦車ミサイル「ジャベリン」などで奇襲攻撃を仕掛けていた。

ドンバスではキーウ周辺と同じ戦術は通用しにくく、射程の長い火砲や短距離弾道ミサイルの撃ち合いや戦車同士の戦闘が増えると予想される。

バイデン米政権が13日、ウクライナ軍に対して8億ドル(約1000億円)規模の武器供与を決めたのは、ドンバスの戦いに備えたものだ。18基の155ミリりゅう弾砲の供与を初めて決めた。射程は2・5キロメートルのジャベリンを超え、数十キロメートルとみられる。ウクライナ軍に欠如していた長距離火砲をてこ入れする。

対砲兵レーダーも提供し、敵の砲撃地点を特定して迅速に反撃できるようになる。自爆攻撃機能を持つ無人機「スイッチブレード」は約10キロメートル先の敵を攻撃できる。米国防総省はいずれも簡単な訓練をウクライナ軍に実施し、比較的早く使いこなせるようになると説明する。

ドンバスでは2014年からウクライナ軍と親ロシア武装勢力の戦闘が続いてきた。ロシア軍とウクライナ軍が兵力をドンバスに結集すれば戦闘がさらに激しくなり、死傷者が拡大する可能性が高まる。

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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プーチン大統領の政治的な観点でいえば、5月9日のロシアの対独戦勝記念日までに、これまでのロシア軍の敗北であるキーウ周辺からの撤退、巡洋艦モスクワの撃沈などをカバーアップして、ロシア軍の優勢とプーチン大統領の軍事指導が正しいことを証明するための軍事的な成果が、何としてもほしいと考えており、そのための短期集中の大規模作戦と考えられます。

プーチン大統領にとっては負けられない戦いです。米国としてはウクライナへの軍事支援の質を上げて、プーチン大統領の政治的得点を防ぎ、ウクライナ側の犠牲をできるだけ少なくしようと考えていると思われます。

2022年4月19日 7:54

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

プーチンはもはやこの戦争をやめたくてもやめられないわなにハマっている。

ロシアの若い兵士は次から次へと戦場で命を失っている。しかし、独裁者は自分の権力のために、彼らを犠牲にする。ウクライナの国土の一部をとれるか、とれないかはこれらの兵士となんの関係もない。ただ、プーチンに「死ね」といわれ、戦場を赴き、死ぬだけ。
このことを考えれば、プーチンというのはほんとうに許せない独裁者

2022年4月19日 7:43

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

第2次大戦におけるドイツとソ連の戦いを描いた『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』の著者、大木毅氏は8日掲載の毎日新聞インタビューで、ウクライナでは「4月下旬には地面が乾いて大攻勢が可能になる」とした。

米国の在欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏はドンバス地方でのロシアの攻勢について、ウクライナでの従来の戦闘とは完全に異なるものになり、古典的な鉄と鉄のぶつかり合い、重火力による攻撃になると予測した。火砲・ミサイルで徹底した攻撃を加えた上で、広大な原野を戦車部隊が進撃する、「力攻め」のイメージが浮かぶ。

ウクライナ軍はそれに対抗する必要があるため、155ミリ榴弾砲などの兵器を米国は供与し支援するわけである。

2022年4月19日 7:24 』