ソーラー補助金、米で論争過熱 「格差助長」の声も

ソーラー補助金、米で論争過熱 「格差助長」の声も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25E7Z0V20C22A3000000/

『米カリフォルニア州で住宅用ソーラーパネルの余剰電力買い取り制度をめぐる論争が熱を帯びている。戸建てに住む富裕層への助成金を貧困層が負担しているとの批判を受け、州政府が約25年前にできた制度の見直しに着手したためだ。新旧電力産業の対立に環境保護に熱心なセレブらも加わり、先行きは混沌としている。

「太陽光発電システムを持たない人々は裕福な州民のシステムを補助するために毎年何百ドルもの費用を払っている」。消費者や環境関連など115の団体が参加する連合組織「アフォーダブル・クリーン・エナジー・フォー・オール」の広報担当者、ケイシー・フェアバンクス氏は制度改正は待ったなしだと訴える。

カリフォルニア州では1990年代にできた住宅用ソーラーパネルの余剰電力の買い取り制度が今も存続する。パネルの価格下落を十分に反映していないため、買い取り価格は1キロワット時当たり約0.25ドル(約30円)と高止まりしている。これは大規模太陽光発電施設からの買い取り価格の約8倍の水準だ。

余剰電力は送電網を運営する米PG&Eなどの地元電力大手が買い取り、費用は州内の電力契約者の料金に上乗せすることになっている。制度維持のための負担額は1世帯当たり年245ドルに上るとの試算もあり、同制度は「富裕層へのプレゼントだ」との批判を浴びてきた。

事態を重くみたカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)は2021年末、余剰電力買い取り制度の改正案を公表した。買い取り価格を引き下げるとともに、送電網を維持するための費用としてソーラーパネルの所有者に発電能力に応じて毎月一定額を請求するのが柱だ。
新旧電力産業で反応は二分

改正案に対する新旧電力産業の反応は真っ二つに割れた。ソーラーパネル所有者から割高な電力を購入したくない電力大手が改正案を支持する一方、ソーラーパネル事業者などでつくる太陽エネルギー産業協会は「州のクリーンエネルギーの遺産に泥を塗る」と猛反発した。
テスラのマスクCEOは電力買い取り制度の改正案について「奇妙な反環境運動だ」と批判する=ロイター

16年に米ソーラーシティを買収し、ソーラーパネル事業に参入した米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は改正案について「奇妙な反環境運動だ」と批判する。1月に開かれたCPUCの会合の外ではソーラーパネル業界の労働者らを中心とする抗議デモも発生し、対立は先鋭化している。

論争に拍車をかけたのが気候変動問題や環境保護に熱心な著名人らだ。映画「ファイト・クラブ」などで知られる米俳優のエドワード・ノートン氏は1月、ツイッターへの連続投稿のなかで改正案を支持するPG&Eなどの電力大手が「太陽光発電を潰すためにあらゆる機会を狙っている」との持論を展開した。

同州知事時代にソーラーパネル普及を推進したアーノルド・シュワルツェネッガー氏は米紙への寄稿のなかで改正案を「絶対に阻止すべきだ」と主張。代わりに「低所得者層にクリーンなエネルギーを提供するためのインセンティブをもっと高めるべきだ」と訴えた。
日本も買い取り価格下げ

電力買い取り制度がカリフォルニア州内の太陽光発電の普及を大きく後押ししてきたのは事実だ。州内では企業や政府機関の建物を含めて約130万の建物の屋根にソーラーパネルが設置されている。発電量は300万世帯の電力をまかなえる規模で、全米の約4割を占める。

日本でも12年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)によって住宅用ソーラーパネルの設置件数が急増したが、その後の買い取り価格の段階的な引き下げによってブームは下火になった。カリフォルニア州で改正案が成立すれば普及のブレーキとなるのは避けられない。

論争の行方は見通せておらず、CPUCは1月に予定していた改正案の採決を見送った。また太陽光発電産業を支持する団体が電力買い取り制度を維持する法律の制定を目指す計画であることも明らかになった。新旧電力産業の対立は長期化が必至の情勢だ。

(シリコンバレー=白石武志)』