東南ア、人件費増加の波 マレーシアも最低賃金引き上げ

東南ア、人件費増加の波 マレーシアも最低賃金引き上げ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM04CVR0U2A400C2000000/

『【シンガポール=中野貴司】東南アジアで企業の人件費増加圧力が強まっている。マレーシアが5月に最低賃金を最大36%引き上げるほか、シンガポールも2025年までに中程度の技能労働者向けのビザ取得に必要な給与額を3割超上げる。インフレや求人の増加で、各国の22年の昇給率も前年を上回る見通しで、進出する日本企業の利益を圧迫しそうだ。

マレーシアは5月1日から最低賃金を月額1500リンギ(約4万5千円)に引き上げる。首都クアラルンプールなど主要都市で月額1200リンギ、それ以外の地域で月額1100リンギの現在の最低賃金が25~36%上がる。イスマイルサブリ首相は3月の発表時に「生活費が上昇しており、特に低所得層への影響が大きい」と最低賃金改定の必要性を強調した。

インドネシアでは首都ジャカルタ特別州の最低賃金が1月から5.1%上がったほか、タイ政府も22年後半に引き上げを審議する。タイの最低賃金は首都バンコクで日額約330バーツ(約1250円)だが、労働者団体は全国一律で日額492バーツに上げるよう求めている。

賃上げの動きは最低賃金にとどまらない。外国人が人口の3割弱を占めるシンガポールは、中程度の技能者向けのビザ取得に必要な最低給与額を段階的に上げる。現在は2500シンガポールドル(約23万2500円)だが、9月から3千シンガポールドル、23年9月には3150シンガポールドル、25年9月には3300シンガポールドルとなる。専門職向けのビザの月給要件も9月に、4500シンガポールドルから5千シンガポールドルに上がる。外国人材を雇う企業のコストを押し上げる。

東南アジアの主要国は海外からの観光客受け入れなど経済の正常化を進めており、22年は飲食業や観光・宿泊業などの業績も持ち直す見通しで、賃金にも上昇圧力がかかる。コンサルティング会社のウイリス・タワーズワトソンの調査では、22年の主要6カ国の賃金上昇率はいずれも前年を上回り、ベトナムは7.8%、インドネシアも6.6%に達する見通しだ。
マレーシア日本人商工会議所の児島大司会頭は「国内経済はパンデミックからの回復が緒に就いたばかりで、多くの企業、とりわけ中小企業は最低賃金の急激な上昇に耐えられない」と、段階的な引き上げを求める。国営ベルナマ通信によると、経済界のこうした要望を受け、マレーシア政府は従業員5人未満の零細企業などを最低賃金引き上げの対象外とする方向だ。コストの低さが東南アジア進出の魅力の一つだったが、人件費の増加が懸念材料に浮上している。』