中国首相人事、習氏側近の上海トップ逆風 コロナで批判

中国首相人事、習氏側近の上海トップ逆風 コロナで批判
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『【北京=羽田野主】中国共産党の高官人事を決める5年に1度の党大会が秋に迫るなか、中国の李克強(リー・クォーチャン)首相の後継レースが混沌としてきた。

習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の側近で上海市トップの李強氏が有力視されてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大への対応に批判が相次いでいるからだ。

上海市共産党委員会書記の李強氏は、習氏が浙江省トップを務めていたときに秘書長として支えた側近。党大会で最高指導部の政治局常務委員に昇格し、2023年3月に退任する李首相の後任に就くと目されてきた。

ところが3月から上海で新型コロナの感染が急拡大し、李強氏への逆風が止まらない。

「私たちの生活の問題をどうやって解決してくれるのか」「上海人は物資が欠乏しているんだ」。李強氏に中年女性が詰め寄る動画がインターネット上で拡散しては当局が削除するいたちごっこが続く。中国で党幹部の失態をさらす動画が出回るのは異例だ。

香港紙、明報は12日付紙面で「李強氏の(コロナ対策の)成績は天津市や広東省、深圳市のトップよりも劣る」と指摘した。上海より先にコロナ感染が広がった3地域と比較し、李強氏に異例の厳しい評価をくだした。

上海市では「コロナの拡散を抑え込むことができなかった」として末端組織幹部の更迭も相次ぐ。「トップではなく現場の責任」と印象づける狙いもありそうだが、あるベテラン党員は「党内で李強氏の手腕を疑問視する声が増えている。習氏が強引に首相に就かせれば混乱は避けられない」との見方を示す。

歴代の上海トップは党大会で政治局常務委員になってきた。習氏も07年に上海トップに就き、同年秋の党大会で常務委員に昇格、12年に党トップに上り詰めた。李強氏が常務委員就任を逃せば06年に汚職で失脚した陳良宇氏以来となる。

新型コロナの感染者ゼロをめざす「ゼロコロナ」政策は20年の感染初期には機能し、習氏の成功体験となった。民主主義国と比べ、社会を機能させるためには個人の私権を大胆に制限できる「一党支配の優位性」を示すと中国政府は主張する。

だが、感染力が極めて強い「オミクロン型」の流行後、中国は毎月のように都市を封鎖し、経済への打撃も大きい。上海の混乱はゼロコロナの矛盾が噴き出したものだ。すでに限界はあらわだが、習氏の権威に傷をつけかねないため、政策を転換できない。

李強氏が失速する一方で、首相候補のライバルは手堅い。

汪洋(ワン・ヤン)全国政治協商会議(政協)主席は3月下旬に米欧が人権問題でやり玉に挙げる新疆ウイグル自治区を視察。現地の党幹部に「新疆のイスラム教の中国化を深く推進せよ」と指示し、引き締めた。胡春華(フー・チュンホア)副首相も実務能力の高さに定評がある。

汪氏は習氏と接点が少なく、胡氏は胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席や李克強現首相らを輩出した中国共産主義青年団(共青団)と関係が深く、習氏とは距離がある。党内で李強氏昇格への慎重論がさらに広がれば、習氏が2人のいずれかの起用を迫られる可能性もある。

中国では国家主席が政治や外交に責任を負う一方、首相は経済運営の責任者だ。

習氏は党大会で異例の3期目続投が確実視されるが、経済の安定が3期目の政権運営を左右する。

潜在成長率が下がるなか、中国経済のかじ取りは難しさを増す。習氏と距離のある人物が首相に就けば、習氏の政権運営にも微妙な影響を与えそうだ。』