国民には求めるオンライン会議も拒否…国会と国会議員のITスキルがゼロに等しい実態

国民には求めるオンライン会議も拒否…国会と国会議員のITスキルがゼロに等しい実態
https://biz-journal.jp/2022/04/post_290025.html

 ※ 『そこで、大久保議員の秘書に「ヤマダ電機あたりに行って、プロジェクターとスクリーンを買ってきてください」とお願いした。さらに講演当日は、かなり不安だったために、講演開始時間よりも1時間以上早く会議室に到着した。』

 ※ 『すると、案の定、プロジェクターもスクリーンも、買ってきたままの状態で箱に入ったままだった。仕方がないので、自分で開封し、自分でプロジェクターもスクリーンもセットアップし、加えて、会議室の座席も、それを見やすいように配置を変えた。』…。

 ※ そりゃ、使ったことない人だったら、そうなるわな…。

 ※ 『すると、最前列に陣取っていた多くの国会議員から「おお! すごいね、君、絵が動くじゃないか!」と歓声が上がったのである。こちらとしては、そんなことはどうでも良くて、内容に注目してほしいと思うのだが、約1時間の講演を行っている最中ずっと、アニメーションの動きに「おお、おお!」という声が上がり続けていたのである。この講演会終了後、大久保議員の秘書に「湯之上さん、あなたは国会で初めてプロジェクターとスクリーンを使って講演をした人になりました」と言われた。これが2013年秋のことである。』…。9年も前の話しだぞ…。

 ※ 『湯之上 「私は、パワーポイントでアニメーションを多用します。したがって、自分でPCの操作を行う必要があります。私の意見陳述の際、PCのそばに移動しますがよろしいですね?」

事務局 「ダメです。参考人は席から移動してはいけません」

湯之上 「なぜですか?」

事務局 「そういう決まりになっているからです」』…。悪しき「前例主義」の典型か…。

 ※ ヒデーもんだ…。ヤレヤレだ…

 ※ 桜田議員だけの話しじゃ、なかったんだ…。

 ※ まあ、「秘書さん」が、カバーしてるんだろうな…。

 ※ そういうヤカラが、「日本のITの未来」について議論したり、「ITの観点からの経済安全保障の国家戦略」なんかの、「企画・立案」に参画しているんだぜ…。

 ※ 「デジタル庁」なんか、大丈夫なのか…。

『2022年3月23日は歴史的な日となった

 2022年3月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領が国会で初のオンライン形式の演説を行った。その演説内容はさておき、「国会でオンライン形式の演説が行われたこと」が歴史的であった。もちろん、喜んでいるのではない。今頃何をやっているだと嘆いているのである。

 新聞報道では、ゼレンスキー大統領からオンライン演説の申し入れがあった直後に、「前例がない」というネガテイブな意見が相次いでいたという(3月25日付日本経済新聞)。そして、その申し入れから1週間以上たった3月23日に、国会の本会議場ではなく、衆議院第一議員会館国際会議室及び多目的ホールにて、前掲のオンライン演説が行われたということである。恐らく、衆議院や参議院の本会議場に大型のスクリーンやパネルを設置することが難しいため、窮余の策として、そこに大きめのパネルを設置して、オンライン演説に漕ぎつけたのだろう。

 2020年に入ってコロナの感染が拡大するとともに、世界的にリモートワークが普及した。今や筆者の仕事は、ほぼすべてがオンラインだ。また、各種の国際学会やセミナーも、すべてオンライン、またはオンラインとハイブリッドで開催されている。にもかかわらず、国会では2022年3月23日に至るまで、オンラインでの会議が一切行われなかったわけだ。民間企業にオンラインを推奨しているにもかかわらず、その張本人たちがオンラインを行ってこなかったのである。これは、国会議員の怠慢といわざるを得ない。

 筆者は、国会に「リアルではなく、オンライン会議を行ってほしい」と要請したのに、「技術的に無理」と黙殺された経験がある。そこで本稿では、過去に筆者が国会との関りにおいて経験した内容をもとに、いかに国会ならびに国会議員たちのIT化が遅れているかを、実例を挙げて詳述したい。その上で、今回のゼレンスキーのオンライン演説を契機に、国会と国会議員が、せめて一般人レベルぐらいまではIT(PCも)を使えるようにするべきだということを、声を大にして言いたい。現状では、世界的に見て日本の国会議員の多くのITレベルは絶滅危惧種の水準である。

2013年に国会デビュー

 筆者は、当時与党だった民主党の経済産業常任委員長を務める大久保勉議員から、拙著『日本型モノづくりの敗北』(文春新書)の内容を民主党の政策会議にて講演してほしいと依頼を受けた。そして、2013年11月6日、衆議院第二議員会館地下1階 第8会議室にて、質疑を含めて90分の講演を行った。この講演に際しては、事前に大久保議員の秘書に「プロジェクターとスクリーンを用意してください」とお願いした。すると、「それは何ですか?」と言われ、愕然としてしまった。どうも国会のあらゆる会議は資料を紙で配布し、プロジェクターとスクリーンを使ってパワーポイントでプレゼンを行う文化がまったくなかったことが、このとき判明した。

 そこで、大久保議員の秘書に「ヤマダ電機あたりに行って、プロジェクターとスクリーンを買ってきてください」とお願いした。さらに講演当日は、かなり不安だったために、講演開始時間よりも1時間以上早く会議室に到着した。すると、案の定、プロジェクターもスクリーンも、買ってきたままの状態で箱に入ったままだった。仕方がないので、自分で開封し、自分でプロジェクターもスクリーンもセットアップし、加えて、会議室の座席も、それを見やすいように配置を変えた。その上で、十数人の国会議員と数十人の経済産業省の役人を前に、拙著と同じタイトルの『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』で講演した。

 筆者は、講演にアニメーションを多用する。特に、定番となった自己紹介では、DRAMのシェアの低下とともに部署を転々とする技術者人生をコミカルなアニメーションで説明する(図1)。

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『すると、最前列に陣取っていた多くの国会議員から「おお! すごいね、君、絵が動くじゃないか!」と歓声が上がったのである。こちらとしては、そんなことはどうでも良くて、内容に注目してほしいと思うのだが、約1時間の講演を行っている最中ずっと、アニメーションの動きに「おお、おお!」という声が上がり続けていたのである。この講演会終了後、大久保議員の秘書に「湯之上さん、あなたは国会で初めてプロジェクターとスクリーンを使って講演をした人になりました」と言われた。これが2013年秋のことである。
2回戦は2021年6月1日

 国会での講演の2回戦は、昨年2021年6月1日となった。「衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会」に半導体の専門家として参考人招致され、15分(実際は20分強)の意見陳述を行ったのである。この様子は、衆議院が撮影し、動画をYouTubeにアップしている。

 この頃は、東京ではコロナの第4波が到来しており、緊急事態宣言の最中にあった。そのような時に国会に呼び出されたわけであるが、違和感を覚えた筆者は、最初の要請のメールが来た際に、「オンラインではダメですか?」と聞いてみたところ、「国会でオンラインはない」と一蹴されてしまった。

 さらに、会議の開始時刻は午前9時だが、プロジェクターとスクリーンを使う場合は、8時20分までに会議室に到着するように言われていた。なるほど、2013年から8年の間に、国会の会議室にプロジェクターとスクリーンは設置されていたわけだ。しかし、プロジェクターとスクリーンを使う場合に、なんで40分も早く行かなくてはならないか、理解に苦しむ。さらに、もっとバカバカしい事態が、筆者を待ち受けていた。
参考人は席を移動してはいけません

 6月1日の2週間ほど前のことである。どのような意見陳述を行うか、頭を悩ませていたが、間違いなくパワーポイントを使うことになると思ったので、衆議院の事務局にその旨を伝えたところ、以下のようなやり取りを電話で行った。

事務局 「委員会には、PC、プロジェクター、スクリーンをこのように設置することになります(図2)」

国民には求めるオンライン会議も拒否…国会と国会議員のITスキルがゼロに等しい実態の画像3

湯之上 「私は、パワーポイントでアニメーションを多用します。したがって、自分でPCの操作を行う必要があります。私の意見陳述の際、PCのそばに移動しますがよろしいですね?」

事務局 「ダメです。参考人は席から移動してはいけません」

湯之上 「なぜですか?」

事務局 「そういう決まりになっているからです」

湯之上 「では、私の前に、PCを持って来てください」

事務局 「それもできません」

湯之上 「なぜです?」

事務局 「ケーブルが短くて届きません」

湯之上 「長いケーブルを買ってきてください」

事務局 「できかねます」

湯之上 「なぜですか(もう相当イラついている)」

事務局 「とにかくそういうことはできないことになっているのです」

湯之上 「じゃあ、私がPCのそばに行くしかないですね」

事務局 「だから参考人は席から動いてはいけない決まりになっていると、さっきから言っているでしょう(相手もイラついている)」

湯之上 「じゃあ、どうしたらいいんですか?」

事務局 「誰か助手はいないのですか? 助手に操作させればいいじゃないですか」

湯之上 「私は個人事業主です。1人で仕事をしています。助手などいません。それに、アニメーションの操作は複雑なので、私しか操作はできません。例え助手がいたとしても、自分でやります」

事務局 「とにかく席を移動してはいけません」

 激しくバカバカしいが、このような言い争いが本当にあったのである。マジにめげそうになった。そして、「参考人は席から移動してはいけない」ということは最後まで事務局が貫き通し、結果として筆者は、YouTubeの動画の通り、自席から移動できなかったのである(ただし、事務局も可能な限りPCを私に近づける努力はした)。国会において、かくも「前例がない」というパワーは強大なのだ。

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『幻に消えた第3回戦

 そして、この意見陳述から1週間たった6月7日(月)の午後、その委員会に参加していた山岡達丸衆議院議員から、国会が終了となる6月16日までに、もう1回、私を国会に呼び出して半導体の勉強会をやりたいという依頼が来た。このときの経緯は、拙著記事『衆議院議員の非常識な対応に呆れ返った…国会議員に半導体政策立案を行う資格なし』(2021年6月11日)に詳述した。

 ここでは、オンラインに関係する部分を抜き出して記載する。筆者としては、緊急事態宣言が出ている最中に何度もリアルの会議を行うのは、はっきり言って迷惑であった。そこで筆者からは、「コロナ禍でもあり、オンラインで行いたい」と連絡した。それに対する山岡議員の回答は以下の通りである。

<大会場のプロジェクターを設けてカメラとマイクを用意し、双方向で質疑応答を行うという機材を6月15日までに揃えることが難しいということが分かり、完全オンライン形式にするか、開催を先送りするかという点で、明日、企画の発起人で協議を行うことになっています>

 筆者は、奇しくも、ウクライナのゼレンスキー大統領と同じ要望を、衆議院に対して行ったわけである。そして、ゼレンスキー大統領のケースと同様に、「前例がない」という壁に直面した。結果的に、筆者が講師となる半導体の勉強会は開催されなかった。

 これが、国会および国会議員のITの(ないに等しい)実力である。国会議員たちは、オンライン会議一つできないのである。そういえば、6月1日の衆議院の意見陳述終了後、30人以上の国会議員と名刺交換をしたが、その名刺のほとんどにメールアドレスが書かれていなかった。そのため、もしかしたら国会議員のほとんどがPCを使えないのではないかと思ったほどだ。
国会と国会議員のIT音痴をなんとかしてくれ

 3月24日付日経新聞『オンライン国会、実現に向け議論』という記事が掲載された。ウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン演説を契機に、日本の国会でもオンライン化を進めるべきかどうかの「勉強会」が開かれたそうだ。コロナの感染拡大は、第6波が収束せず、第7波に突入しようとしている。民間企業では、オンラインやリモートが当たり前になっている。ウクライナのゼレンスキー大統領も連日、オンラインで自説を世界中に発信している。

 それなのに、かの国は、いまだに「勉強会」のレベルである。国会議員たちは、その「勉強会」を一度、オンラインでやってみるといい。それができない国会議員は、議員の資格をはく奪したらどうだろう? 国会および国会議員のIT音痴は、それほど深刻である。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)

●湯之上隆/微細加工研究所所長

1961年生まれ。静岡県出身。1987年に京大原子核工学修士課程を卒業後、日立製作所、エルピーダメモリ、半導体先端テクノロジーズにて16年半、半導体の微細加工技術開発に従事。日立を退職後、長岡技術科学大学客員教授を兼任しながら同志社大学の専任フェローとして、日本半導体産業が凋落した原因について研究した。現在は、微細加工研究所の所長として、コンサルタントおよび新聞・雑誌記事の執筆を行っている。工学博士。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『電機半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北』(文春新書)。

・公式HPは http://yunogami.net/

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