[FT]チリの新憲法制定に暗雲 国民の支持率が過去最低に

[FT]チリの新憲法制定に暗雲 国民の支持率が過去最低に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB152S40V10C22A4000000/

※ 今日は、こんなところで…。

『南米チリの新憲法の草案策定をめぐり、国民のいらだちがにわかに高まってきた。年内の国民投票を前に、投資家を優遇する急進的な草案が盛り込まれるのではないかとの不安が広がっている。

新憲法草案で中絶の権利が認められていないことに抗議する右派の活動家=ロイター

21世紀のチリにふさわしい憲法をつくろうとの機運が高まったのは2019年10月の大規模な反政府デモがきっかけ。格差や劣悪な公共サービス対する怒りを爆発させた国民が変革を求めて各地で街頭デモを繰り広げた。

草案策定に着手して9カ月が経過した今、当初の理念は複雑な起草作業という現実に突き当たり、多くの国民が危機感を抱いている。

チリの調査会社カデムによる4月の世論調査では、草案をめぐる審議が大詰めを迎えるなかで憲法改正を支持する人の割合は46%と過去最低に落ち込んだ。新憲法の採択を問う国民投票は9月初旬に予定されており、7月までには全ての条項の審議、承認、草案策定を終える必要がある。

「彼らは憲法ではなく、法令を作ろうとしているかのようだ」。チリ大学の政治学者ロバート・ファンク氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙にこう語った。「懸案事項を並べているが、世論調査によれば、彼らが重点的に討議している問題は国民の最大の関心事とは言えないようだ」

まだ承認前だが、上程された草案には資源の国有化や大麻の合法化、議会上下院の権力分立の廃止などが盛り込まれている。

議員は多彩な顔ぶれ

昨年5月の選挙で155人が制憲議会の議員に選ばれたが、公職経験のない無党派層出身者が多い=ロイター

制憲議会の白熱した議論は首都サンティアゴ市内にある新古典主義の建物から生中継されるが、議員は学校教師や医師、先住民族の代表、ソーシャルワーカーなどの顔群れで、政治経験の未熟さや理想主義に傾きがちな性向が際立っている。1月にはほぼ丸2日間議論した揚げ句、議長を指名できなかった。

社会党所属の制憲議会議員で弁護士のリカルド・モンテロ氏はFTに対し、「現時点では収拾が付かず、多くの事柄がまだ検討中だ」と述べ、多彩な顔ぶれの議員がガラス張りの議論をすること自体に制憲作業をする価値があると強調した。

「制憲議会は(約800年前に英国民の権利を定めた)マグナカルタではなく、新たな社会契約を策定しようとしている。国民が皆より良く暮らせるよう、あらゆる立場の人たちが議論しているのだ」

リカルド・ゴンザレス・ガイヤーさん(69)はピノチェト軍政下で制定された現行憲法の改正には賛成だが、手続きに問題があると話した。

ガイヤーさんは「制憲議会の議員構成にはうなずけない」と言う。155人の議員はコロナ下の21年5月に選挙で選ばれたが、公職経験のない無党派層出身者が多い。「国民投票の前に草案をじっくり読むつもりだ」とガイヤーさんは付け加えた。

元上院議員でバチェレ元大統領率いる中道左派連合に所属していたフェリペ・ハーボー議員も、議会では左派寄りの議員が多数を占めており全国民を代表していないと認める。

草案作りに対する信頼の低下は3月上旬に発足したばかりの左派政権にとって打撃だ。

大統領は公約実現の好機

ボリッチ大統領は新憲法制定を自らの進歩的な政策課題を法制化する好機と捉えている=ロイター

保守派のピニェラ前大統領(72)の後を継いだボリッチ大統領(36歳)は新憲法制定を自らの進歩的な政策課題を法制化する好機と捉えている。

ボリッチ氏は経済分野での国の役割を拡大し、より環境に優しく全国民に恩恵をもたらす経済成長を実現すると公約し、7月までに新憲法草案の策定を求められている制憲議会の支持に回った。

だが、ボリッチ氏も問題を抱えている。インフレの加速と金利の上昇を背景にチリ経済が減速するなか、ミレニアル世代の若き大統領の支持率が4月の世論調査で50%を割ったのだ。

原油輸入価格の上昇が物価に波及し、3月のインフレ率は年9.4%と08年以来の高水準に達した。中央銀行は同月、22年の予想成長率を1〜2%に下方修正した。前年は11.9%だった。
国民は新憲法の採否を9月4日に決める。この日は1973年に軍事クーデターが起きるまで伝統的に大統領選の投票が行われてた。新憲法が否決された場合、軍政下の1980年に制定された現行憲法が存続する。

米ニューヨーク大学の政治学者パトリシオ・ナビア氏はボリッチ政権について、あらゆる有権者層を満足させ、選挙公約した社会的目標のほほ全てを達成したがっていると指摘する。

「サンタへのお願いのように誰にでも届くプレゼントはあるだろうが、つまるところ(憲法で)何でも決められるわけではない」とナビア氏は言う。チリにとって大きなリスクとなるのは、時に矛盾を生じる権利や規定を不明確なままにして、外国からの投資決定が先送りされてしまうことだという。

神経とがらせる経済界

経済界は大幅増税や鉱山会社への環境規制強化に早くも神経をとがらせている。ある国際的な資源大手は匿名を条件に、今後の法改正を恐れた経営陣がサンティアゴに担当者を派遣し、改憲作業を詳細に監視させていると明かした。

専門家によると、制憲議会に対する支持率が低下している一因は有権者とのコミュニケーション不足にある。一方、改憲反対派はメディアやSNS(交流サイト)を通じて積極的にキャンペーンを展開している。

「まだどうなるか分からないが、政府は新憲法否決を真剣に考え始める必要がある」とチリ大学のファンク氏は言う。「(19年の)社会的暴動は完全に終結したわけではない。再発の可能性も十分にある」

新憲法制定への流れ

制憲議会では環境や司法、政治システムなど分野別の7委員会で構成。

各委員会が単純過半数で承認した事案は全体会議に回り、そこで3分の2の賛成を得た場合、新憲法草案に盛り込まれる。

否決された事案は修正を加えて本会議で再投票にかけることも可能。

草案策定後60日以内に国民投票を実施。投票は9月4日で、否決の場合には1980年制定の現行憲法が存続する。

By Lucinda Elliot

(2022年4月14日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

シンガポール、集団指導体制探る 次期首相候補に財務相

シンガポール、集団指導体制探る 次期首相候補に財務相
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM14E110U2A410C2000000/

『【シンガポール=中野貴司】シンガポールのリー・シェンロン首相(70)の後継首相にローレンス・ウォン財務相(49)が就く道筋が14日、定まった。

ウォン氏は新型コロナウイルス対策を指揮し、次世代の指導者としての評価を急速に高めてきたが、現職のリー氏に比べ経験不足は否めない。同世代の中堅政治家とのチームワークを重視する統治手法で、与党・人民行動党(PAP)政権の長期継続を目指す。

【関連記事】シンガポール財務相、リー・シェンロン首相の後継者に

「同世代のチームメンバーと共に、国民に心を込めて尽くし続けたい」。ウォン氏は14日夕にリー氏が事実上の後継者発表をした直後、SNS(交流サイト)で即座に決意表明した。短い文章の中に3回、「チーム」という言葉を盛り込み、集団指導体制を志向する考えをにじませた。次期首相レースで競い合っていたライバルの政治家たちも祝意と支持を相次ぎ投稿し、PAP政権の一枚岩を演出した。

ウォン氏がチームワークを強調するのは、経験不足の裏返しでもある。リー氏が副首相を14年間務めた上で、2004年に満を持して首相に就任したのに対し、ウォン氏は国会議員になってから11年しかたっておらず、財務相にも21年5月に就いたばかりだ。リー氏のようなカリスマ性や国際的な知名度も乏しく、禅譲を受けた後は、首相に権力を集中するよりも閣僚との役割分担を重視する統治を模索する見通しだ。

リー氏の説明によると、ウォン氏の選出はウォン氏と同世代の政治家の意見を集約した結果で、リー氏自身や上の世代の政治家は意見を求められることはなかったという。この選出手法は、ゴー・チョクトン氏が第2代首相に上り詰める過程と酷似する。ゴー氏の評伝によると、ゴー氏が1985年に第1副首相に就任する直前、同世代の政治家らが集まり、ゴー氏を次のリーダーにすることを決めたという。ゴー氏は5年後の90年にリー・クアンユー初代首相の後継として首相に昇格した。

ウォン氏は「普通の家庭」出身である点も、ゴー氏と似る。リー・シェンロン氏がリー・クアンユー氏の長男として英才教育を受け、早くからいずれ首相に就任するとみられていたのに対し、ウォン氏はシンガポールのメリトクラシー(能力主義)を体現する人物として自らを国民に売り込もうとしている。強い指導力よりも、国民からの共感を求心力にしたい考えだ。

リー・クアンユー、シェンロンの親子と一般家庭出身者が交互に首相に就く配列は、時にカリスマ性を、別の時には庶民性を求めるシンガポール国民の二面的な願望を反映しているかのようだ。独立以来、シンガポールではまだ3人の首相しか誕生しておらず、在任期間が20年近くに及ぶリー・シェンロン氏が首相職を禅譲する時は、シンガポール政治の大きな節目となる。

シンガポールは独立以来、PAPの一党支配が続いており、PAPの敷いた路線が覆ることはほとんどない。禅譲時期はまだ不確かとはいえ、今後はウォン次期首相に向けての基盤作りが着々と進んでいく見通しだ。ただ、20年の前回総選挙で野党が議席数を増やしたことからも分かるように、PAPの力もかつてほど絶対的ではなくなっている。国民がウォン氏を「首相の器」ではないと判断すれば、想定外の波乱が起きる可能性も残っている。』

シンガポール財務相、リー・シェンロン首相の後継者に

シンガポール財務相、リー・シェンロン首相の後継者に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM14BRJ0U2A410C2000000/

『【シンガポール=中野貴司】シンガポールのリー・シェンロン首相(70)は14日、ローレンス・ウォン財務相(49)が「次世代の新しいリーダー」になると発表した。近く内閣改造を実施し、ウォン氏を副首相に引き上げたうえで、2025年までに実施する次の総選挙前後で首相職を禅譲するシナリオが有力だ。

シンガポールの次期首相レースは21年に最有力候補が辞退し、振り出しに戻っていた。

リー氏は14日のフェイスブック投稿で「ウォン氏と彼のチームが、シンガポールと国民のために最善を尽くすと確信している」と述べた。首相交代の時期には触れなかったが、禅譲に向け、近く内閣改造を実施する方針を明らかにした。

リー氏の説明によると、ウォン氏の後継確定は次世代の政治家たちによる集団的な決定で、リー氏の指名ではない。

ウォン氏は官僚出身で、リー氏の首席秘書官などを経て11年に政界入りした。20年以降、政府のタスクフォースの共同議長として新型コロナ対策を担い、一気に存在感を高めた。21年5月には重要閣僚の財務相に就き、次期首相の有力候補の1人だと目されていた。

リー氏の後継候補としては、21年4月までヘン・スイキャット副首相が最有力だとみられてきた。ただ、ヘン氏が高齢を理由に首相候補を外れると表明し、改めて後継を選ぶことになった。04年から首相を続けるリー氏は2月に70歳になった。ウォン氏が第4代首相に就けば、若返りが一気に進むことになる。』

原発稼働・親中国…マルコス氏独走のフィリピン大統領選

原発稼働・親中国…マルコス氏独走のフィリピン大統領選
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM123LP0S2A410C2000000/

『【マニラ=志賀優一】5月9日投開票のフィリピン大統領選はフェルディナンド・マルコス元上院議員が6割前後の支持率で独走態勢を続ける。ドゥテルテ大統領の娘の副大統領候補と共闘し、幅広い層の支持を得ている。

同国初の原子力発電所の稼働に意欲を示し、中国への融和姿勢は現職から引き継ぐ構えだ。原発では米国と協力する見通しで、実際に当選すれば、米中間での微妙なバランスが課題になる。

6年に1度の大統領選は最も多く得票した候補が当選する。決選投票はない。憲法は再選を認めておらず、ドゥテルテ氏は政界引退を表明済みだ。10人が立候補した。

調査会社パルスアジアが6日に公表した3月の世論調査で支持率は、マルコス氏が56%で首位。2位のレニー・ロブレド副大統領(24%)を大きく引き離した。3位は首都マニラのイスコ・モレノ市長(8%)、4位にプロボクサーとして国民的英雄とされたマニー・パッキャオ上院議員(6%)が続くが、現状ではトップに遠く及ばない。

マルコス氏の父親はかつての独裁者として知られる。1986年までほぼ20年間、フィリピンの大統領を務め、多数の市民が街頭で辞任を求めた「ピープル・パワー」で国を追われた。だが、選挙管理委員会によれば、有権者の50%以上が18~41歳の若さだ。

軍を背景に人権侵害も指摘された元大統領の印象は有権者の全体では薄い。むしろ、SNS(交流サイト)を通じ語りかける息子のマルコス氏に親しみを感じるようだ。

マルコス氏は上下両院で議員を務めた。「マルコス家」のブランドはなおマニラ首都圏を中心とするキリスト教徒が多い北部の中間層や富裕層に強い支持を受ける。

共闘する副大統領候補のサラ・ドゥテルテ氏はドゥテルテ氏の娘で、イスラム教徒が多い南部のミンダナオ島の中心都市ダバオで市長を務める。正副大統領は米国のような「ペア」でなく、それぞれ別の選挙で選ばれるが、マルコス氏とサラ氏は選挙集会などでしばしば一緒に対応する。サラ氏も副大統領選で支持率がトップだ。

ドゥテルテ家とマルコス家は数年前から親交を深めてきた。マルコス氏とサラ氏は結果的にフィリピンのほぼ全土に支持を広げ、選挙戦で当初から優位に立ってきた。

マルコス氏が当選後の公約に掲げるのは原子力発電の導入だ。3月にはサラ氏と共同で出した声明で「少なくとも1つは原発を持ち、低コストの発電で電力料金を下げるビジョンがある」と明言した。その前にドゥテルテ氏が原発推進を求める大統領令に署名しており、これを「(原発利用の)格好の踏み台になる」と指摘した。

2人の声明の直後にはフィリピンと米国の高官が原子力利用で協力を進める覚書を交わした。フィリピンは温暖化ガスの排出量が比較的多い石炭火力発電所の新設を2020年に禁止した。原発で脱炭素を進める考えだ。高値が続く石油の輸入を抑え、国際収支の改善も目指す。

原発稼働はマルコス家の「悲願」でもある。マニラの西にはマルコス氏の父親が大統領の時代に米国企業が軸になって建設されたバターン原発がある。1986年の政変と旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故の影響で、稼働しないままだ。この原発を改修するのか、新たに建設するのかは不明だが、マルコス氏が当選すればフィリピン初の原発稼働が実現する勢いだ。

南シナ海の領有権を争う中国には融和姿勢を示す。中国との経済関係を重視したドゥテルテ氏を「正しい」と評価する。21年10月に大統領選への出馬を申請した後、マニラで駐フィリピン中国大使と面会した。

現政権と同様、薬物の取り締まりには力を入れる方針だ。ドゥテルテ氏は国外からも「人権侵害」と批判されながら強引に進めたが、マルコス氏は健康被害の教育など「違った手法」で引き継ぐと説明している。

マルコス氏を追う候補 「中国への警戒」訴え

【マニラ=志賀優一】フィリピン大統領選に向けた支持率でトップのフェルディナンド・マルコス氏に引き離された候補は挽回に躍起だ。レニー・ロブレド副大統領、マニー・パッキャオ上院議員らは南シナ海の領有権を争う中国に「警戒すべきだ」と主張し、マルコス氏の対中融和姿勢を批判する。

ロブレド氏は、国連海洋法条約に基づきオランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年、中国が南シナ海のほぼ全域で主張する「管轄権」を否定した判断を前面に出す。この決定が「(中国の)侵略を阻むため外国に協力を呼びかけるカードだ」と主張する。

強権のドゥテルテ政権に不満を抱く大学教授ら270人以上がロブレド氏への支持を表明した。

パッキャオ氏は中国との領有権争いを解決するため「平和について議論する政府間パネルの創設」を提唱した。

マニラ市長のイスコ・モレノ氏の陣営は「貧困層などにサイレントマジョリティー(物言わぬ多数派)がいる」と主張し、世論調査にあらわれない支持者の掘り起こしに懸命だ
。』

[FT]パキスタン軍、カーン前首相の米陰謀説を否定

[FT]パキスタン軍、カーン前首相の米陰謀説を否定
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB150WQ0V10C22A4000000/

『パキスタンの軍指導部が、自分は米国主導の陰謀の犠牲になったというカーン前首相の主張を一蹴し、ロシアがウクライナに侵攻した日の同氏のモスクワ訪問を「恥ずべきこと」と表現した。
議会の不信任投票で失職したカーン前首相は、ロシアへの支持を理由に米国が自らの失脚を企てたと主張した=ロイター

パキスタン軍報道官のババル・イフティカル少将は14日、軍としては珍しい公式会見を開き、パキスタンの国家安全保障委員会が先月、クリケットの元スター選手のカーン氏を首相の座から下ろす陰謀があったと判断したとする同氏の主張を否定した。

カーン氏は、10日にパキスタン首相として史上初めて議会の不信任投票によって失職した。その追放劇をめぐり人口2億2000万人の国論が二分するなかで、イフティカル氏の発言はカーン氏に追い打ちをかけた。

カーン氏は自ら唱えた陰謀説の根拠の一つとして、2月のロシア訪問に米政府高官から抗議を受けたことを駐米パキスタン大使が本国に報告していたことを挙げた。3月下旬には国家安全保障委員会が、某国が「介入主義」の行動をとり、パキスタンが外交ルートで正式に抗議したという声明を出した。カーン氏はこの二つの件を結び付けた。

「ここに陰謀などという言葉が1つでも使われていますか。ないでしょう」。委員会の声明に触れて、イフティカル氏はこう語った。米政府は、同国が核保有国パキスタンの政権交代を求めているという見方を繰り返し否定している。

米政府が、ロシアを支持する自分の退陣を求めたというのがカーン氏の主張だ。米国主導の策略を想起させ、夜間の集会に参加した何万人もの支持者を沸かせた。

イフティカル氏は、軍は首相による2月のロシア訪問には同意していたが、戦争の勃発によって「非常に恥ずべき」事態になったと述べた。この発言は、ロシア政府がウクライナ侵攻計画についてパキスタン政府に予告していなかったことを示唆する。モスクワでは、カーン氏はあるロシア政府高官に向かって「すごいタイミングで来たものだ。興奮する」と語っている様子をカメラにとらえられた。
「軍による丁寧な忠告」

カラチ経営管理大学のフマ・バカイ准教授は今回の軍の発言に関して、パキスタンの二大都市であるラホールとカラチで予定されている大規模集会に先駆けて、カーン氏にメッセージを送る狙いがあったと見ている。

「軍は彼が大衆の前に姿を現すことを知っている。これは、非常に厄介になるような発言を控えるようにカーン氏に丁寧に忠告する方法だった」。バカイ氏はこう述べ、「イムラン・カーンも軍と真っ向から対立したくはないはずだ」と付け加えた。

複数のアナリストは、軍が米国との関係を守ろうとしている可能性があるとみている。米国は過去に度々パキスタンに武器を供給しており、米軍はテロ対策でパキスタンと連携している。

退役中将で、シャバズ・シャリフ新首相率いるパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)の元上院議員でもあるアブドゥル・カイユム氏は、「パキスタン軍としてはその関係を損ないたくない」と語る。

「カーン氏は陰謀論を押し出すことで、自らの政府の問題点を覆い隠そうとしてきた。そこへ今、軍が、非常に率直な見解を示している」

カーン氏のパキスタン正義運動(PTI)が2018年の総選挙で勝利を収めて以来、政敵は軍が同氏の後ろ盾になっていると主張してきた。だが、この数週間でパキスタンの政治的混乱が広がり、インフレに対する怒りから有権者が反カーンに傾いた時、軍は同氏を援護しなかった。

バカイ氏によると、パキスタンではカーン氏の失職以来、ツイッターなどのSNS(交流サイト)で反軍感情が沸き起こったという。

バカイ氏は、イフティカル氏は「先日起きた政権交代に軍が加担したという臆測を一掃し、軍が(カーン氏よりも)権力を握った新政府に友好的だと見られている状況に終止符を打とうとした」と話している。

By Chloe Cornish and Farhan Bokhari

(2022年4月15日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

【関連記事】

・[社説]パキスタンは政情安定を急げ
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スリランカ

スリランカ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AB

『スリランカ民主社会主義共和国(スリランカみんしゅしゃかいしゅぎきょうわこく)、通称スリランカは、南アジアのインド亜大陸の南東にポーク海峡を隔てて位置する共和制国家。旧国称はセイロンで、現在もこの国が占める主たる島をセイロン島と呼ぶ。最大都市はコロンボで、首都はコロンボ郊外に位置するスリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ。人口は約2,167万人(2018年)である[3]。

1948年2月4日にイギリスから自治領(英連邦王国)のセイロンとして独立。1972年にはスリランカ共和国に改称し、英連邦内の共和国となり、1978年から現在の国名となった。

国語はシンハラ語とタミル語で、国民の3/4がシンハラ人で構成される。また、国民の7割が仏教徒(上座部仏教)である。国の花は青睡蓮、国の石はブルーサファイア、国技はバレーボール[4]。』

『歴史

詳細は「スリランカの歴史(英語版)」を参照

紀元前5世紀: 紀元前483年にシンハラ人の祖とされるヴィジャヤ王子がスリランカに上陸し、アヌラーダプラ王国を作ったとされる。王都はアヌラーダプラに置かれた。

紀元前3世紀: アショーカ王の王子マヒンダが仏教を伝えたとされ、これ以後、上座部仏教(テーラワーダ仏教)を主体として仏教が興隆し、その中心地となって、シンハラ人の多くは現在までその信仰を守ってきた。

紀元前2世紀以降: 南インドからタミル人を主体とする断続的な移住者があり、現在のスリランカ・タミル人の原型を形成したと考えられる。

5世紀: 409年、中国、東晋の僧である法顕が来島、2年ほど過ごし『仏国記』に記録を残す。477年、アヌラーダプラで父を殺した王子がシーギリアロックの岩山の頂に宮殿を築いて遷都してカッサパ1世となるも、数十年で元に戻る。

11世紀: 1017年、南インドのチョーラ朝の侵入により王都を放棄した。

11世紀: 王国はアヌラーダプラの南東90キロのポロンナルワに移動し、1070年にチョーラ朝の勢力は撃退され、繁栄の時代を迎えた。ポロンナルワが王都となる(1070年 – 1255年、1287年 – 1293年)。

13世紀: 南インドでの動乱に伴い、チョーラ朝のタミル人の侵入が激しくなった。王都は北部から中部・南部に移動し、ダンバデニヤやヤーパフワを経て、コーッテでやや安定する。マルコ・ポーロが来島し、『東方見聞録』に記録を残す。

14世紀: イブン・バットゥータが来島し、『三大陸周遊記』に記録を残す。

15世紀: 鄭和が1410年に来島し、形式上では明の朝貢国となった。中央部にキャンディ王国(1469年 – 1815年)が成立し、キャンディを王都とした。低地にはコーッテ王国(1371年 – 1597年)、北部にはジャフナ王国(14世紀 – 1620年)があった。

16世紀: 1505年にポルトガル人がコロンボに商館を建設し植民地化(ポルトガル領セイロン、1505年 – 1658年)[5]。植民都市ゴールも建設される。

17世紀: 1658年にオランダ人が来航。ポルトガルに代わりオランダが植民地化(オランダ領セイロン、1658年 – 1796年)。

18世紀: イギリスの東インド会社がコロンボを占拠し植民地化を始める(イギリス領セイロン、1796年 – 1948年)。

1802年: イギリス本国の直轄植民地 (crown land) になり、アミアン講和条約でイギリスの領有が確定する[5]。

1815年: イギリス軍はキャンディに入り、王権は消滅した。ウィーン会議でオランダからイギリスへの譲渡が正式決定。

1832年: コールブルックの改革( – 1833年)で、全土が均一に支配されるようになった。
1891年: ダルマパーラが仏教の復興を目指す大菩提会(英語版)を創立。

1931年: ドナモア憲法(英語版)が制定され、アジア初の普通選挙法が施行された。

1942年: セイロン沖海戦が勃発。イギリス海軍東洋艦隊の拠点であったコロンボ、トリンコマリーが、大日本帝国海軍により空爆される。』

『独立後

独立式典

1948年: 2月4日にイギリス連邦内の自治領(英連邦王国)として独立した。国名はセイロン。統一国民党 (UNP) のD. S. セーナーナーヤカが首相に就任した。

1949年: タミル人の選挙権を剥奪。

1951年: サンフランシスコ講和会議において、セイロン代表として会議に出席していたジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ大蔵大臣(のちにスリランカ第2代大統領)は「憎悪は憎悪によって止むことはなく、愛によって止む」という仏陀の言葉を引用して、日本への戦時賠償請求を放棄する演説を行った[6]。

1956年: 総選挙で人民統一戦線が勝利し、スリランカ自由党 (SLFP) のソロモン・バンダラナイケが首相に就任し、シンハラ語公用語法案を制定した。さらに、タミル人は公務員から排除された。このシンハラ・オンリーの政策によってタミル人との対立が高まり、のちの大規模な民族対立の原因となる。仏陀入滅2500年祭 (Bhuddha Jayanti) が開催され、シンハラ仏教ナショナリズムが高揚する。東部とコロンボでタミル人の民族暴動が起こる。

1959年: ソロモン・バンダラナイケが仏教僧によって暗殺される。

1972年: SLFPが選挙に勝利して、シリマヴォ・バンダラナイケが首相に就任(世界初の女性首相)。仏教を準国教扱いにする新憲法を発布した。共和制に移行し、国名をスリランカ共和国に改称。タミルの新しいトラ(TNT。LTTEの前身)が成立し、タミル人国家イーラム樹立の要求を掲げて、分離独立運動を開始した。

1977年: UNPが選挙に勝利し、ジャヤワルダナが首相に就任。資本主義の導入、経済の自由化が始まる。

1978年: 議院内閣制から大統領が執行権を行使する大統領制に移行し、現国名に改称。』
『26年にわたる内戦

詳細は「スリランカ内戦」を参照

1983年: シンハラ人とタミル人との大規模な民族対立が起こり、全土にわたって暴動が繰り返された。これ以後、2009年に至るまで長期間の内戦が継続した。シンハラ人とムーア人の対立、シンハラ人内部の対立も激化する。

1984年: 首都をコロンボからその南東15kmに位置するスリジャヤワルダナプラコッテへ遷都。ただし行政庁舎は旧首都に留め置かれる。

1987年: 反政府組織タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) が独立宣言し、内戦が続いた。 7月にはスリランカ・インド平和協定が成立、インド平和維持軍(IKPF)がスリランカへ進駐したが状況は収束せず、散発的なテロが続き再び戦いが起こった。 11月には憲法が改正、公用語にタミル語が追加された。

1988年: ラナシンハ・プレマダーサが大統領に就任し、内戦の終結を画策したが失敗する(1993年に暗殺)。

1989年: シンハラ人の急進派であった人民解放戦線(JVP。1967年成立)の指導者、ローハナ・ウィジェウィーラ(英語版)が殺害され、南部の治安が改善された。

1990年: インド平和維持軍(IKPF)が完全に撤退する。

1991年: インドのラジーヴ・ガンディー元首相が暗殺。LTTEの犯行声明が出される。

1994年: SLFPを主体とする人民連合 (PA) が選挙に勝利し、チャンドリカ・クマーラトゥンガが首相となり、のちに大統領に選出される。

2001年7月: LTTEによりバンダラナイケ国際空港襲撃事件が引き起こされる。

2002年: ノルウェーの仲介によって、政府はLTTEとの停戦に合意した。その後、日本も仲介に乗り出す。

2004年3月: LTTEの東部方面司令官であったビニャガマムーシ・ムラリタラン(英語版)が同勢力を離脱、カルナ派を立ち上げ。LTTEとの闘争状態に入る。

2004年12月: スマトラ島沖地震の津波により沿岸部に死者3万人以上という大きな被害を受ける。
ウィキニュースに関連記事があります。

スリランカ大統領選、ラージャパクサ首相が辛勝

2005年11月: マヒンダ・ラージャパクサが大統領に就任。LTTEに対しては強硬姿勢を示す。

戦闘の激化により避難する人々

2006年7月: LTTEが東部バッティカロア県にて政府支配地域への農業用水を遮断したことを理由に政府軍が空爆を実施。戦闘が再燃[7]。

2007年7月:政府軍が東部州におけるLTTE最後の拠点であったトッピガラ(英語版)を攻略、同州からLTTE勢力を一掃する[8]。

2007年11月: LTTE本拠地である北部キリノッチへの空爆で、LTTEのナンバー2で政治部門トップであり、和平交渉の窓口であったスッパヤ・パラム・タミルセルバン(英語版)が死亡[7]。

2008年1月16日: 政府はLTTEとの停戦合意を正式に破棄すると発表。

2009年1月: 政府軍はLTTEの本拠地キリノッチを2日に、最後の都市拠点ムッライッティーヴーを25日に制圧。

2009年5月17日: ムッライッティーヴーの海岸部を残して、LTTEの実効支配地域のほぼ全てが政府軍に制圧される。LTTEは事実上壊滅状態に陥り、LTTE側もセルバラサ(英語版)広報委員長が事実上の敗北宣言である戦闘放棄声明を発表した。5月18日には、LTTEの最高指導者ヴェルピライ・プラブハカラン議長の遺体が発見され、政府はLTTEの完全制圧と内戦終結を宣言した[7]。

内戦終結後

マヒンダ・ラージャパクサ大統領がLTTEの制圧と内戦の終結を宣言し、四半世紀に及ぶ内戦は2009年5月に終了した。

以後、ラージャパクサは内戦終結の功績を背景に政権の強化を図り、2010年1月には任期を前倒ししての大統領選挙により、内戦の司令官だったフォンセカ(英語版)前陸軍参謀長を破り再選を達成。

同年9月には大統領の三選禁止条項を撤廃する憲法修正案も可決させるなど、大統領への集権化を進めた[9]。

一方、内戦終結後は国防省を国防・都市開発省と改称し、統一の実現と平和の到来とともに余剰となった戦力をインフラ整備にも動員した。復興需要ならびに観光業の復活から、2010年、2011年とGDPが8%台の成長を続けるなど、急速な経済発展が続いた[10][11]。

2014年11月、2年の任期を残したラージャパクサは、三選を企図して早期選挙を実施。

しかし、与党SLFPの幹事長で保健相のマイトリーパーラ・シリセーナが政権を離脱、野党統一候補として立候補する事態となり、2015年1月の投票においてシリセーナに敗れた[12]。

しかし、大統領と首相の対立など政治的混乱に、経済成長の鈍化、さらに2019年にはイスラム過激派によるスリランカ連続爆破テロ事件が起きる[13]など不安定な情勢が続き、マヒンダ・ラージャパクサの弟のゴーターバヤ・ラージャパクサが第8代大統領に就任。マヒンダ自身も首相への復権を果たしている。』

[FT]スリランカ、経済危機で揺らぐ大統領一族の支配

[FT]スリランカ、経済危機で揺らぐ大統領一族の支配
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB143TI0U2A410C2000000/

『最大都市コロンボでの数千人規模の抗議デモ、食料・燃料価格の高騰、そして政府債務の返済の一時停止という前例のない事態――。南アジアの島国スリランカで深刻化する経済危機は、ラジャパクサ一族が牛耳る政治体制を揺るがしている。

スリランカ大統領府の近くで雄たけびをあげるデモ参加者=ロイター

デモ隊はゴタバヤ・ラジャパクサ大統領の経済失政を非難する。一方で、大統領の兄のマヒンダ・ラジャパクサ首相は、騒ぎを起こす市民自身が国の財政上の苦境をひどくしているのだと訴える。

「友であるあなたがたが街頭で抗議する1秒ごとに、私たちの国はドルを受け取る機会を失っている」とマヒンダ氏は11日、放送された演説で語った。同氏は2005~15年に大統領を務めている。

首相のこの言葉は、ラジャパクサ一族と不満を募らせる国民との間の大きな溝を浮き彫りにした。

ドル不足で輸入できない生活必需品

スリランカの外貨準備高は20億ドル(約2500億円)を割り込み、ドル不足で必需品の輸入が劇的に細っている。軽油から医薬品まで生活必需品に不足が生じ、計画停電が数週間前からの抗議に拍車をかけている。

スリランカ財務省は12日、乏しい外貨準備を食料と燃料に充てなければならないとして、同国史上初めて政府の対外債務の支払いを一時停止し、借り入れや債券の債務350億ドルを再編するための時間的猶予を債権者側に求めた。

スリランカ政府が国際通貨基金(IMF)と債務救済プログラムについて交渉し、インドと中国に支援を求めるなかで、大統領にとっては抗議運動が最も重大な問題となっている。かつて戦争の英雄と仰がれた大統領は今、危機の中で非難の的となっている。

「ラジャパクサ一族を政府から追い出したい」。コロンボの独立記念広場でデモに参加した女性弁護士のラガビさんは、姓を明かさずにこう話した。

ここ数週間、2200万人の国民が物価の高騰に見舞われる中で抗議デモは規模と勢いを増した。デモ隊はコロンボの大統領府前で「ゴタ(バヤ)は引っ込め」と叫び、首相の別荘周辺にも集結している。

非常事態宣言発令もすぐに撤回

機動隊が催涙ガスや放水銃でデモを鎮圧しようとしたが果たせず、大統領は2日にソーシャルメディアの停止を命じて非常事態を宣言したが、3日後に撤回を余儀なくされた。

先週には、国連の人権専門家グループがインターネットの遮断とデモ参加者への暴力を非難した。「私たちはスリランカ政府に対し、学生や人権活動家、その他の人々がオンライン及びオフラインで平和的な抗議、政治的意見の自由な共有、不満の表明を行うことを認めるよう求める」と同グループは表明した。

マヒンダ、ゴタバヤ両氏は09年、それぞれ大統領、国防相としてタミル人の反政府武装勢力を制圧し、26年にわたるスリランカの内戦を終結させた。

マヒンダ氏は15年、国民が汚職と独裁的な政治手法を問題視する中で再選に失敗した。しかし、200人以上の死者が出た19年春の連続爆破テロの後、ゴタバヤ氏がスリランカ史上初の軍人出身の大統領に選出された。

現在の危機が発生するまで、首相のマヒンダ氏や財務相の弟バジル氏、灌漑(かんがい)相の兄カマル氏など、ラジャパクサ一族はスリランカの28省庁の3分の1を率いていた。

バジル、カマル両氏とマヒンダ氏の息子ナマル氏は他の閣僚らとともに辞職したが、マヒンダ氏は首相としてとどまり、ゴタバヤ氏も国防相兼任のままで、多くのデモ参加者は納得しなかった。

うわべだけの内閣改造ではなく体制変化を

「私たちが期待しているのは、小規模な入れ替えといううわべだけの変化ではなく、体制全体が変わることだ」。コロンボでデモに参加したカトリック教会の神父は、影響を恐れて匿名を条件に語った。「未来は暗たんたるものにみえる」

ゴタバヤ氏は大統領就任時、主として減税による「繁栄する国」の実現を約束していた。だが、減税が行われたのは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が世界を経済混乱に陥れる直前のことだった。

歳入が大幅に減り、国の信用格付けが下がる中で、政府は対外債務の借り換えに苦慮している。

経済危機によってゴタバヤ氏は「ごく短期間でヒーロー(hero)からゼロ(zero)に転落した」とスリランカのシンクタンク、アドボカタのムルタザ・ジャフジー会長は指摘する。「彼は経済をよく理解していないので、ひどい判断をする経済チームに任せきりだった」

通貨スリランカルピーは年初以降、対ドルで37%超下落し、食料価格は3月に前年同月比で30%跳ね上がった。ルピー相場を支えるべく、スリランカ中央銀行のウィーラシンハ新総裁は8日、預金金利と貸出金利を7%ずつ引き上げた。

カギとなるIMFとの交渉

スリランカの対外債務のうち、約1割にあたる35億ドルほどが中国からの借り入れだ。インドは3月、スリランカに10億ドルの融資枠を提供したが、IMFのプログラムがさらなる支援のカギになるというのが専門家の見方だ。

ゴタバヤ氏は大統領にとどまる決意のようだ。与党幹事長のジョンストン・フェルナンド氏が議会に対し、「大統領はいかなる理由でも辞任しない。我々は抗議に屈しない」と述べている。

だが、ラジャパクサ一族の内部で崩壊の兆候が表れている。

ナマル氏はデジタル技術担当相を辞任する前日の3日、VPN(仮想私設網)を利用して政府によるソーシャルメディアのアクセス停止をくぐり抜け、「ソーシャルメディアのブロックを私は絶対に許さない」とツイッターに投稿した。「当局に対し、もっと進歩的に考え、この決定を見直すよう求める」

By Chloe Cornish and Mahendra Ratnaweera

(2022年4月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

中東アフリカ、対ロ制裁に冷ややか 食糧や兵器で依存

中東アフリカ、対ロ制裁に冷ややか 食糧や兵器で依存
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR213RO0R20C22A3000000/

『【カイロ=久門武史】ウクライナに侵攻したロシアへの米欧主導の制裁に、中東アフリカ諸国が冷ややかだ。食糧や兵器をロシアに頼る国が多く、産油国の連帯もある。人権を理由にした対ロ圧力にはいっそう消極的だ。ロシアが孤立を深めるばかりと言い切れない一因になっている。

国連総会で7日採択されたロシアの人権理事会の理事国資格を停止する決議は、過去の決議より態度を後退させる国が急増した。人道状況の改善を求めた3月24日の決議で棄権したが今回は反対に回った18カ国のうち、中東アフリカからは8カ国だった。賛成から棄権に転じた39カ国をみると過半を占めた。

ロシアによる切り崩し工作に加え、自らも強権的な体制で、かねて人権重視を掲げるバイデン米政権を煙たく思ってきた国は多い。決議を主導した米国との隙間風がささやかれるケースもある。それ以上に、ロシアとの実利的な関係を無視できない。

まず主要産油国の協力は揺らぎそうにない。ウクライナに侵攻直後の3月上旬、ロシアのプーチン大統領はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の指導者と相次いで電話協議した。ロシア大統領府によると原油生産を巡り「協調を続ける」ことで一致した。

アラブ産油国は伝統的に親米だが、今回ロシアへの制裁にはそろって背を向けた。サウジ主導の石油輸出国機構(OPEC)は非加盟のロシアを巻き込んだ「OPECプラス」として協調して産油量を増減させ、発言力を強めてきた。ロシアとの関係を損ね、この枠組みを危うくする理由はない。

サウジやUAEはイエメンの親イラン勢力との戦いで米国の支援が弱いと感じ、バイデン政権がイラン核合意の再建を目指していることも気に入らない。サウジには2018年の著名記者殺害を巡る疑惑で米欧から白眼視された苦い記憶もつきまとう。

穀物を輸入に頼る国が多く、一大産地のロシアを敵に回せない事情もある。人口が1億人と中東で最も多いエジプトは世界最大の小麦輸入国で、大半がロシアからだ。既に小麦価格の高騰に苦慮し、パンの価格統制に追われている。エジプトのスエズ運河庁は、ロシア艦船の通航禁止を米国が求めたとの臆測が浮上すると「運河は中立だ」と明確に否定した。

トルコもロシアの小麦を大量に輸入しているが、食糧安全保障に加え外交上の得点を狙っている。ロシアとウクライナの仲介役を演じ、国際的地位を高める思惑ものぞく。3月、両国外相の対面での停戦協議をお膳立てした。

アフリカを見渡せば、兵器や雇い兵の供給でロシアの影響力が強まっている。マリは旧宗主国フランスの部隊が撤退する空白を埋めるように、ロシアの民間軍事会社ワグネルと契約したとみられている。

中央アフリカやモザンビーク、スーダンにもロシアの軍事支援は浸透し、兵器輸出ではアルジェリア、アンゴラなどでロシアが特に高いシェアを握る。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、ロシアはサハラ砂漠以南のアフリカに対する最大の輸出国になった。ロシアがそっぽを向けば自国の安全保障が揺らぎかねない。

米ブルッキングス研究所のダニエル・レズニク研究員は「アフリカ諸国は貿易や投資、支援の多様化へ東西両勢力のいずれとも関係を築こうとしている」と指摘する。ロシアや中国が急速にアフリカに浸透するなか、中ロと対立する米欧に肩入れするリスクも計算しているもようだ。

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

渡部恒雄のアバター
渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員

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分析・考察ロシアの資源輸出国としての中東との連帯と、軍事支援を通じてのアフリカ諸国への影響はかねてから認識されてきました。

だからこそ3月2日の国連総会緊急特別会合でのロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議に、141カ国の賛成票の中にサウジやUAEなどの産油国が入っていたことに意義があったと思います。

マリや中央アフリカなどのアフリカ諸国は棄権しました。サウジやUAEはバイデン政権に不満もありますが、米国からの軍事支援が自国の生き残りに重要なことに変わりはありません。

また今後、厳しい経済制裁が効力を発揮していくなかで、ロシアがアフリカ諸国に軍事支援をしていくような余力はなくなっていく可能性もあります。

2022年4月15日 9:48いいね
3

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授

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ひとこと解説 国連人権理事会のロシアの理事国資格停止をめぐる採決結果は、賛成93票、反対・棄権が82票とかなり僅差であった。

3月の人道決議に関する決議とは雲泥の差だ。

世界ではマイノリティの権利を重視する民主主義の国は非常に少なく40ヵ国に満たないと聞く。

このためそもそも人権や民主主義を強く推し進めることに違和感をもつ国も多いのだろう。

しかもアフリカや中東では国によっては食料危機にも直面する。

またロシアの働きかけだけでこうした結果になったのではない可能性もある。

ウクライナ問題が、世界の分断を促さないためにはどうしたらよいのか戦略を考えていく必要があり、日本はその一役を担うことができると思います。

2022年4月15日 9:31 (2022年4月15日 9:36更新)』

プーチン氏、エネルギー輸出先の多様化指示 欧米以外に

プーチン氏、エネルギー輸出先の多様化指示 欧米以外に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14EJH0U2A410C2000000/

『【ロンドン=篠崎健太】ロシアのプーチン大統領は14日、石油・天然ガス部門の現状に関する政府の会議に出席し、エネルギー資源について「輸出先を多様化しなければならない」と述べた。欧米諸国がロシア依存の脱却を急ぐなか、売り先としてアジアや中東・アフリカに力点を移すよう指示した。

大統領府によると会議はオンラインで開かれ、閣僚や大統領府高官、エネルギー企業の代表者のほかロシア中央銀行のナビウリナ総裁らが参加した。

プーチン氏は「急成長している南方や東方の市場に一歩ずつ輸出の方向を変えていくという、近年の傾向を固めることが重要だ」と語った。西側へのエネルギー供給は当面減っていくとの認識を示し、売り先を広げるべきだと訴えた形だ。アジア向けの輸出インフラを整備する必要性にも言及した。

ウクライナへの侵攻後、欧米を中心にロシアからのエネルギー調達の中止や依存脱却の表明が広がった。国際エネルギー機関(IEA)は4月の石油市場リポートで、ロシアの石油供給量は5月以降に3月比で日量300万バレル減る可能性があるとの見通しを示した。石油・ガスはロシアの歳入の約4割を占めており、プーチン氏の指示には収入源維持への危機感がにじむ。

欧米を補う形でアジアなどへの輸出が増えれば、戦争の原資を干上がらせることを狙う経済制裁の抜け穴が広がりかねない。ウクライナ侵攻で欧米がロシア産の石油の調達見合わせに乗り出す一方、割安感に着目したアジアなどから引き合いが強まった。IEAによると3月のロシアの原油出荷量は欧米向けが落ち込む一方、ほぼゼロだったインド向けは日量31万バレルに増えた。

【関連記事】
・エネルギー、制裁の弱点に 中韓台などロシアから輸入増
・ロシア産石油、5月以降に日量300万バレル減も IEA予測
・ドイツ、ロシア依存の脱却急ぐ 原油輸入を年内停止

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

この記事にある会議の様子はテレビ放映されたようであり、ロイターによると、「現時点で欧州には合理的な(ガスの)代替品は存在しない」とプーチン大統領は発言。

欧州はロシア産エネルギー供給を断ち切ると発言することによって、価格を押し上げ、市場を不安定にしているという見方を示した。

欧州経済がエネルギー調達におけるロシア依存脱却を一朝一夕に実現出来ないことを見越した強気の発言である。

自国に対する経済制裁は上記の欧州要因ゆえに踏み込み不足のものにとどまらざるを得ないという点で、自信を持っているようにも見える。

販売を今後増やしていく「急成長している南方や東方の市場」には、インドと中国が含まれているのだろう。

2022年4月15日 13:09 (2022年4月15日 14:02更新)

白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

ロシア産の原油や石炭は欧州に代わる代替先を時間をかけて模索する可能性がある。

ただ天然ガスはパイプライン供給の場合、すぐ代替先がみつけることができず設備投資に時間がかかるだろう。

LNG供給の増加についても設備投資が必要ですぐに増やすのは難しいのではないか。

欧州にとって当面の代替先をノルウェー、米国、カタール、アフリカなどに求めるとしてもやはり追加投資が必要になるのではないか。

いずれにしても欧州が代替先をみつけると、将来的にはエネルギー価格は供給過剰となり価格が大きく低下する可能性もある。そうしたことを予想して設備投資資金があつまるのかどうかにも注目している。

2022年4月15日 12:05 』

国民には求めるオンライン会議も拒否…国会と国会議員のITスキルがゼロに等しい実態

国民には求めるオンライン会議も拒否…国会と国会議員のITスキルがゼロに等しい実態
https://biz-journal.jp/2022/04/post_290025.html

 ※ 『そこで、大久保議員の秘書に「ヤマダ電機あたりに行って、プロジェクターとスクリーンを買ってきてください」とお願いした。さらに講演当日は、かなり不安だったために、講演開始時間よりも1時間以上早く会議室に到着した。』

 ※ 『すると、案の定、プロジェクターもスクリーンも、買ってきたままの状態で箱に入ったままだった。仕方がないので、自分で開封し、自分でプロジェクターもスクリーンもセットアップし、加えて、会議室の座席も、それを見やすいように配置を変えた。』…。

 ※ そりゃ、使ったことない人だったら、そうなるわな…。

 ※ 『すると、最前列に陣取っていた多くの国会議員から「おお! すごいね、君、絵が動くじゃないか!」と歓声が上がったのである。こちらとしては、そんなことはどうでも良くて、内容に注目してほしいと思うのだが、約1時間の講演を行っている最中ずっと、アニメーションの動きに「おお、おお!」という声が上がり続けていたのである。この講演会終了後、大久保議員の秘書に「湯之上さん、あなたは国会で初めてプロジェクターとスクリーンを使って講演をした人になりました」と言われた。これが2013年秋のことである。』…。9年も前の話しだぞ…。

 ※ 『湯之上 「私は、パワーポイントでアニメーションを多用します。したがって、自分でPCの操作を行う必要があります。私の意見陳述の際、PCのそばに移動しますがよろしいですね?」

事務局 「ダメです。参考人は席から移動してはいけません」

湯之上 「なぜですか?」

事務局 「そういう決まりになっているからです」』…。悪しき「前例主義」の典型か…。

 ※ ヒデーもんだ…。ヤレヤレだ…

 ※ 桜田議員だけの話しじゃ、なかったんだ…。

 ※ まあ、「秘書さん」が、カバーしてるんだろうな…。

 ※ そういうヤカラが、「日本のITの未来」について議論したり、「ITの観点からの経済安全保障の国家戦略」なんかの、「企画・立案」に参画しているんだぜ…。

 ※ 「デジタル庁」なんか、大丈夫なのか…。

『2022年3月23日は歴史的な日となった

 2022年3月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領が国会で初のオンライン形式の演説を行った。その演説内容はさておき、「国会でオンライン形式の演説が行われたこと」が歴史的であった。もちろん、喜んでいるのではない。今頃何をやっているだと嘆いているのである。

 新聞報道では、ゼレンスキー大統領からオンライン演説の申し入れがあった直後に、「前例がない」というネガテイブな意見が相次いでいたという(3月25日付日本経済新聞)。そして、その申し入れから1週間以上たった3月23日に、国会の本会議場ではなく、衆議院第一議員会館国際会議室及び多目的ホールにて、前掲のオンライン演説が行われたということである。恐らく、衆議院や参議院の本会議場に大型のスクリーンやパネルを設置することが難しいため、窮余の策として、そこに大きめのパネルを設置して、オンライン演説に漕ぎつけたのだろう。

 2020年に入ってコロナの感染が拡大するとともに、世界的にリモートワークが普及した。今や筆者の仕事は、ほぼすべてがオンラインだ。また、各種の国際学会やセミナーも、すべてオンライン、またはオンラインとハイブリッドで開催されている。にもかかわらず、国会では2022年3月23日に至るまで、オンラインでの会議が一切行われなかったわけだ。民間企業にオンラインを推奨しているにもかかわらず、その張本人たちがオンラインを行ってこなかったのである。これは、国会議員の怠慢といわざるを得ない。

 筆者は、国会に「リアルではなく、オンライン会議を行ってほしい」と要請したのに、「技術的に無理」と黙殺された経験がある。そこで本稿では、過去に筆者が国会との関りにおいて経験した内容をもとに、いかに国会ならびに国会議員たちのIT化が遅れているかを、実例を挙げて詳述したい。その上で、今回のゼレンスキーのオンライン演説を契機に、国会と国会議員が、せめて一般人レベルぐらいまではIT(PCも)を使えるようにするべきだということを、声を大にして言いたい。現状では、世界的に見て日本の国会議員の多くのITレベルは絶滅危惧種の水準である。

2013年に国会デビュー

 筆者は、当時与党だった民主党の経済産業常任委員長を務める大久保勉議員から、拙著『日本型モノづくりの敗北』(文春新書)の内容を民主党の政策会議にて講演してほしいと依頼を受けた。そして、2013年11月6日、衆議院第二議員会館地下1階 第8会議室にて、質疑を含めて90分の講演を行った。この講演に際しては、事前に大久保議員の秘書に「プロジェクターとスクリーンを用意してください」とお願いした。すると、「それは何ですか?」と言われ、愕然としてしまった。どうも国会のあらゆる会議は資料を紙で配布し、プロジェクターとスクリーンを使ってパワーポイントでプレゼンを行う文化がまったくなかったことが、このとき判明した。

 そこで、大久保議員の秘書に「ヤマダ電機あたりに行って、プロジェクターとスクリーンを買ってきてください」とお願いした。さらに講演当日は、かなり不安だったために、講演開始時間よりも1時間以上早く会議室に到着した。すると、案の定、プロジェクターもスクリーンも、買ってきたままの状態で箱に入ったままだった。仕方がないので、自分で開封し、自分でプロジェクターもスクリーンもセットアップし、加えて、会議室の座席も、それを見やすいように配置を変えた。その上で、十数人の国会議員と数十人の経済産業省の役人を前に、拙著と同じタイトルの『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』で講演した。

 筆者は、講演にアニメーションを多用する。特に、定番となった自己紹介では、DRAMのシェアの低下とともに部署を転々とする技術者人生をコミカルなアニメーションで説明する(図1)。

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『すると、最前列に陣取っていた多くの国会議員から「おお! すごいね、君、絵が動くじゃないか!」と歓声が上がったのである。こちらとしては、そんなことはどうでも良くて、内容に注目してほしいと思うのだが、約1時間の講演を行っている最中ずっと、アニメーションの動きに「おお、おお!」という声が上がり続けていたのである。この講演会終了後、大久保議員の秘書に「湯之上さん、あなたは国会で初めてプロジェクターとスクリーンを使って講演をした人になりました」と言われた。これが2013年秋のことである。
2回戦は2021年6月1日

 国会での講演の2回戦は、昨年2021年6月1日となった。「衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会」に半導体の専門家として参考人招致され、15分(実際は20分強)の意見陳述を行ったのである。この様子は、衆議院が撮影し、動画をYouTubeにアップしている。

 この頃は、東京ではコロナの第4波が到来しており、緊急事態宣言の最中にあった。そのような時に国会に呼び出されたわけであるが、違和感を覚えた筆者は、最初の要請のメールが来た際に、「オンラインではダメですか?」と聞いてみたところ、「国会でオンラインはない」と一蹴されてしまった。

 さらに、会議の開始時刻は午前9時だが、プロジェクターとスクリーンを使う場合は、8時20分までに会議室に到着するように言われていた。なるほど、2013年から8年の間に、国会の会議室にプロジェクターとスクリーンは設置されていたわけだ。しかし、プロジェクターとスクリーンを使う場合に、なんで40分も早く行かなくてはならないか、理解に苦しむ。さらに、もっとバカバカしい事態が、筆者を待ち受けていた。
参考人は席を移動してはいけません

 6月1日の2週間ほど前のことである。どのような意見陳述を行うか、頭を悩ませていたが、間違いなくパワーポイントを使うことになると思ったので、衆議院の事務局にその旨を伝えたところ、以下のようなやり取りを電話で行った。

事務局 「委員会には、PC、プロジェクター、スクリーンをこのように設置することになります(図2)」

国民には求めるオンライン会議も拒否…国会と国会議員のITスキルがゼロに等しい実態の画像3

湯之上 「私は、パワーポイントでアニメーションを多用します。したがって、自分でPCの操作を行う必要があります。私の意見陳述の際、PCのそばに移動しますがよろしいですね?」

事務局 「ダメです。参考人は席から移動してはいけません」

湯之上 「なぜですか?」

事務局 「そういう決まりになっているからです」

湯之上 「では、私の前に、PCを持って来てください」

事務局 「それもできません」

湯之上 「なぜです?」

事務局 「ケーブルが短くて届きません」

湯之上 「長いケーブルを買ってきてください」

事務局 「できかねます」

湯之上 「なぜですか(もう相当イラついている)」

事務局 「とにかくそういうことはできないことになっているのです」

湯之上 「じゃあ、私がPCのそばに行くしかないですね」

事務局 「だから参考人は席から動いてはいけない決まりになっていると、さっきから言っているでしょう(相手もイラついている)」

湯之上 「じゃあ、どうしたらいいんですか?」

事務局 「誰か助手はいないのですか? 助手に操作させればいいじゃないですか」

湯之上 「私は個人事業主です。1人で仕事をしています。助手などいません。それに、アニメーションの操作は複雑なので、私しか操作はできません。例え助手がいたとしても、自分でやります」

事務局 「とにかく席を移動してはいけません」

 激しくバカバカしいが、このような言い争いが本当にあったのである。マジにめげそうになった。そして、「参考人は席から移動してはいけない」ということは最後まで事務局が貫き通し、結果として筆者は、YouTubeの動画の通り、自席から移動できなかったのである(ただし、事務局も可能な限りPCを私に近づける努力はした)。国会において、かくも「前例がない」というパワーは強大なのだ。

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『幻に消えた第3回戦

 そして、この意見陳述から1週間たった6月7日(月)の午後、その委員会に参加していた山岡達丸衆議院議員から、国会が終了となる6月16日までに、もう1回、私を国会に呼び出して半導体の勉強会をやりたいという依頼が来た。このときの経緯は、拙著記事『衆議院議員の非常識な対応に呆れ返った…国会議員に半導体政策立案を行う資格なし』(2021年6月11日)に詳述した。

 ここでは、オンラインに関係する部分を抜き出して記載する。筆者としては、緊急事態宣言が出ている最中に何度もリアルの会議を行うのは、はっきり言って迷惑であった。そこで筆者からは、「コロナ禍でもあり、オンラインで行いたい」と連絡した。それに対する山岡議員の回答は以下の通りである。

<大会場のプロジェクターを設けてカメラとマイクを用意し、双方向で質疑応答を行うという機材を6月15日までに揃えることが難しいということが分かり、完全オンライン形式にするか、開催を先送りするかという点で、明日、企画の発起人で協議を行うことになっています>

 筆者は、奇しくも、ウクライナのゼレンスキー大統領と同じ要望を、衆議院に対して行ったわけである。そして、ゼレンスキー大統領のケースと同様に、「前例がない」という壁に直面した。結果的に、筆者が講師となる半導体の勉強会は開催されなかった。

 これが、国会および国会議員のITの(ないに等しい)実力である。国会議員たちは、オンライン会議一つできないのである。そういえば、6月1日の衆議院の意見陳述終了後、30人以上の国会議員と名刺交換をしたが、その名刺のほとんどにメールアドレスが書かれていなかった。そのため、もしかしたら国会議員のほとんどがPCを使えないのではないかと思ったほどだ。
国会と国会議員のIT音痴をなんとかしてくれ

 3月24日付日経新聞『オンライン国会、実現に向け議論』という記事が掲載された。ウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン演説を契機に、日本の国会でもオンライン化を進めるべきかどうかの「勉強会」が開かれたそうだ。コロナの感染拡大は、第6波が収束せず、第7波に突入しようとしている。民間企業では、オンラインやリモートが当たり前になっている。ウクライナのゼレンスキー大統領も連日、オンラインで自説を世界中に発信している。

 それなのに、かの国は、いまだに「勉強会」のレベルである。国会議員たちは、その「勉強会」を一度、オンラインでやってみるといい。それができない国会議員は、議員の資格をはく奪したらどうだろう? 国会および国会議員のIT音痴は、それほど深刻である。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)

●湯之上隆/微細加工研究所所長

1961年生まれ。静岡県出身。1987年に京大原子核工学修士課程を卒業後、日立製作所、エルピーダメモリ、半導体先端テクノロジーズにて16年半、半導体の微細加工技術開発に従事。日立を退職後、長岡技術科学大学客員教授を兼任しながら同志社大学の専任フェローとして、日本半導体産業が凋落した原因について研究した。現在は、微細加工研究所の所長として、コンサルタントおよび新聞・雑誌記事の執筆を行っている。工学博士。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『電機半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北』(文春新書)。

・公式HPは http://yunogami.net/

ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2022/04/post_290025_3.html
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アメリカ  中間選挙を控え“敏感”な移民問題 5月から国境での即時送還措置を廃止

アメリカ  中間選挙を控え“敏感”な移民問題 5月から国境での即時送還措置を廃止 移民増加の懸念
https://blog.goo.ne.jp/azianokaze/e/04a04b9335c7b2a7c764c236e98bf124

 ※ 『「民主党は、昨年流入した不法移民200万人を未来の票田と見なしている。』…。

 ※ なるほど、根本には、こういう「政治的な利害」が絡むわけだ…。

 ※ 『「移民というだけで犯罪者扱いされる。悪事を働くために米国を目指すのではない。私たちは保護や安全を求めているだけだ」』…。

 ※ 叫びは、「悲痛」だが、「自国を、自らの手で少しずつ変えていく。」という視点は、どうなっている…。それが、「民主主義」というものじゃなかったのか…。

 ※ 世の中、何でも、「人道主義」とか、「一定のイズム」を唱えるだけでは、殆んど解決にはならない…。

 ※ と言って、オレに「妙案」も無い…。

 ※ 「三方(ここでは、民主党、共和党、移民か)に、それほど酷いことにならないようなところの、着地点を探ろう。」という、いつもの常識的な線を、言うだけだ…。

『(ウクライナからの亡命者も。ロシアのウクライナ侵攻以後、米国への亡命を求めてメキシコ国境に到着するウクライナ人が過去1週間で2倍以上に増加している。ティフアナで7日撮影【4月8日 ロイター】)

【中間選挙を控え、“敏感な問題”にもなる移民問題】

どこの国でも国民の最大の関心事は自国内の内政問題です。「外交は票にならない」とも言われるように、国際問題への関心には一定の限界があります。

大統領選挙が行われているフランスで、現職マクロン大統領が“極右”とされるルペン氏の猛追を受けているのは、マクロン大統領がロシアとの外交にかまけ(しかも、成果を出せず)、国民生活に直結するインフレなどの問題をないがしろにしているとの批判が背景にあってのことと思われます。

アメリカの場合も、国民の最大の関心事は経済問題にシフトしつつあります。

今年3月のギャラップ調査【2022.3【ギャラップ調査】アメリカで最も重要な問題】で「今日この国が直面している最大の問題は何だと思いますか?」という問いに対し
高い生活費・インフレ 17%(昨年12月は6%) 経済一般 11%(同11%)燃料・石油価格 4%(同1%)

一番多いのは政府・貧弱なリーダーシップ22%(同21%)ですが、これは要するに共和党支持者、特にトランプ支持者などの現政権が気に入らないというものでしょう。

さすがにウクライナ問題を受けて「ロシアとの状況」が9%(同0%)を占めていますが、経済問題には及びません。

「コロナウイルス・病気」は3%(同13%)と、すでに過去の問題にもなったようです。

経済問題と並んで政治問題化しやすいのが移民問題。

「移民」は5%(同7%)と今は経済問題ほどの高さにはなっていませんが、先月2月は8%と、そのときどきの状況で跳ね上がる敏感な問題です。

バイデン政権にとって、メキシコ国境に押し寄せる中米などからの移民にどのように対処するかは、非常に悩ましい問題です。

厳しく対処すれば、政権支持基盤でもある、移民の権利を擁護するリベラル勢力からの批判を受けます。

緩めて移民が増加すると、共和党などからの激しい批判にさらされ、与野党間の「争点」となります。

国境に移民が押し寄せる限り、どっちにしても批判を受ける政権基盤を揺るがす問題です。

今後、コロナ対策を理由にした対応ができなくなり、人の動きも再び活発化するなかで移民増加予想されており、中間選挙を左右する問題にもなります。

【「メキシコ待機」復活で与党内からの批判も】

政権は昨年末、トランプ前大統領が導入し、バイデン大統領が就任後に撤回した移民政策「メキシコ待機」プログラムを裁判所命令に従って再開すると明らかにしたことで、移民を人権を擁護する勢力や与党内からの批判を浴びました。

****米政府、トランプ政権の移民政策を復活へ バイデン氏に非難****

米政府は(2021年12月)2日、ドナルド・トランプ前大統領が導入し、ジョー・バイデン大統領が就任後に撤回した移民政策「メキシコ待機」プログラムを再開すると明らかにした。

この政策は、亡命を希望する移民を、申請手続きを行う間メキシコ側に待機させるもので、治安の悪い環境に移民が置かれることが問題となっていた。再開をめぐり、バイデン氏を非難する声が上がっている。

移民関連団体は、「メキシコ待機」政策の復活は、国境にある移民キャンプでの犯罪や暴力行為を誘発しかねないと指摘する。

バイデン氏は1月の大統領就任後、この移民政策を「非人道的」だとして撤回する大統領令に署名した。しかし連邦裁判所はこれを認めず、同政策の再開を命じていた。
アメリカとメキシコの両政府は、この政策を再開させることを認めた。

バイデン政権は、トランプ政権時代のもう1つの主要な国境政策「タイトル42」を維持している。これは、公衆衛生上の理由があれば移民を迅速に追放できるというもの。

なぜ「メキシコ待機」が復活するのか

トランプ前大統領は、当時「移民保護プロトコル」と呼ばれていたこのプログラムを導入し、6万人以上の亡命申請者をメキシコに送り返した。メキシコ側で待機する亡命希望者は、時には犯罪組織の餌食になることもあった。

慈善団体ヒューマンライツ・ファーストによると、メキシコに戻された移民に対する誘拐やレイプ、拷問、そのほかの虐待行為の事例が1500件以上報告されている。(中略)

ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は1日、同プログラムによる「不当な人的損失」に関するバイデン氏の考えは、過去の主張と変わっていないと説明。「ただ、我々は法に従うことにもなる」とした。

「メキシコ待機」政策は、メキシコの懸念に対処するため、亡命申請1件あたりに費やす時間を6カ月に制限するなど内容を修正したうえで、来週からテキサス州とカリフォルニア州の入国地点で再開される。

「暗黒の日」

「メキシコ待機」政策の再開の動きをめぐっては、移民支援団体やバイデン氏率いる与党・民主党の議員から非難の声が上がった。

米国移民評議会は、「メキシコ待機プログラムをより人道的な方法で管理できる」というバイデン政権の主張を一蹴し、「今日はアメリカと法の支配にとって暗黒の日だ」と付け加えた。

同プログラムの対象を西半球からのあらゆる移民(ハイチ人など非スペイン語圏のグループを含む)に拡大することで、バイデン氏は「プログラムをトランプ政権下よりもさらに広範なものにした」と、同評議会は指摘した。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)もこの動きを非難しており、「メキシコ待機」政策の実施に協力することを拒否した。

米自由人権協会(ACLU)は、この政策の再開は「拷問やレイプ、死を含む恐ろしい虐待」につながるとした。

ヴェロニカ・エスコバル下院議員(民主党、テキサス州)は米政治専門紙「ザ・ヒル」に対し、この政策は「国としての我々の価値観をむしばむ」ものであり、「亡命手続きに反する」ものだと述べた。(中略)

一方、野党・共和党のケヴィン・マカーシー下院院内総務は同政策の再開を歓迎した。
「バイデン政権にこの常識的な措置を適用させるために、訴訟を起こさざるを得なかったのは残念なことだ」
【2021年12月3日 BBC】

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【「タイトル42」廃止で移民増加の懸念 共和党側は中間選挙「争点」にする構え】

一方、“トランプ政権時代のもう1つの主要な国境政策「タイトル42」(新型ウイルス流行国からの難民・移民を迅速に追放できるというもの)”については、5月23日に廃止すると発表しましたが、これは共和党側からの強烈な批判を浴びています。

****「米史上最悪」の移民危機、バイデン氏に責任 米共和党議員団****

米共和党の上院議員団は30日、ジョー・バイデン大統領が意図的に移民危機をつくり出したと非難した。人権団体は移民危機について、大勢の移民が虐待やレイプなどの被害を受けたと主張している。
 
メキシコから入国する移民の数はここ数週間で急増している。共和党指導部が配布した2通の文書は、バイデン氏とカマラ・ハリス副大統領が「米史上最悪」の移民危機をつくりだしたとしている。
 
議員団は記者会見で、バイデン氏が国境問題で弱腰な姿勢が、大勢の移民が米国を目指して北上する旅の途中で悪質な人身売買業者の犠牲となる事態を招いていると主張した。
 
テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員は「南部国境で今、日を追うごとに危機が高まっている。バイデン氏とハリス氏がつくり出したものだ」として、「それにもかかわらず、大統領も、副大統領も、民主党議員も気に掛けていない」と続けた。
 
2021年度(20年10月〜21年9月)のメキシコ国境での不法移民の拘束者数は約170万人で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)などで少なかった前年度の約4倍に増加した。22年度上半期は100万人を超える見通し。
 
クルーズ氏は「民主党が多数派を握る議会で国境警備法案の審議が進まないのは、民主党が政治的な問題として、不法移民を支援すると決めたからだ」と主張した。「民主党は、昨年流入した不法移民200万人を未来の票田と見なしている。幼い子どもが身体的・性的暴行を受けることになる結果もいとわない」と続けた。

議員団は、バイデン氏がドナルド・トランプ前政権が導入した移民抑制政策「タイトル42」を終わらせれば、移民の数がさらに増加すると警告している。「タイトル42」は新型ウイルス流行国からの難民・移民を迅速に追放できるというもの。
【3月31日 AFP】

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共和党側は、この問題をことさらに強調して中間選挙の「争点」にしたい思惑が見られます。

****米首都へ「不法移民バス」=テキサス州、バイデン政権に反発****

米国への移民希望者の即時送還を取りやめるとしたバイデン米政権の決定に、移民の経由国メキシコと接する南部テキサス州が反発を強めている。移民殺到を危惧する同州のアボット知事(共和党)は抗議のため、入国手続きを終えた越境者をバスや飛行機で首都ワシントンに送る「奇策」に出た。
 
バイデン政権は1日、新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に移民希望者を即時送還してきた措置について、5月23日に廃止すると発表した。同措置の廃止で月に数十万人の移民希望者が押し寄せるとも指摘され、アボット氏は「バイデン政権の国境開放で、危険な犯罪組織や麻薬が流入する」と猛烈に批判していた。
 
FOXニュースによると、コロンビアやキューバからの越境者を乗せた最初のバスが13日朝、連邦議会議事堂の近くに到着した。「バイデン(大統領)が国境の混乱を見たくないのなら、国境を目の前に持って行ってやる」。アボット氏は同日のツイッターに、バスから降りる人々の画像が載ったFOXの記事を投稿し政権を挑発した。
【4月14日 時事】

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共和党からだけでなく、中間選挙を控えた与党内にも移民増加を懸念する声があります。
****米、国境での即時送還措置を廃止へ 不法越境増加、与党からも懸念****

米疾病対策センター(CDC)は1日、新型コロナウイルスの感染防止のために国境で拘束した不法越境者を即時送還する措置を5月23日に廃止すると発表した。

だが、バイデン政権下で過去最多に達しているメキシコ経由の不法越境者がさらに増えるとの懸念が与党・民主党内にもある。2022年11月の上下両院選を含む中間選挙に向けた政権側の不安材料になっている。

この措置は20年3月にトランプ前政権が導入した。バイデン政権は未成年の単独越境者は例外としたが、成人の受け入れ拒否は引き継いだ。「バイデン政権は移民に寛容だ」との期待感からメキシコ経由の不法越境者が急増する中、秩序を維持して送還を容易にする名目として利用してきた側面もあった。

しかし、新型コロナの感染が減少傾向にある中で、移民受け入れを推進する民主党左派や人権団体から「非人道的な措置を続ける理由がない」との突き上げが厳しくなっていた。21年9月にはハイチからの移民を馬に乗った国境警備当局者が追い立てる映像が公開され、与野党から批判が上がった。

CDCは1日の声明で「公衆衛生の現況やワクチンなど新型コロナ対策が増えたことを踏まえ、もはや移民受け入れを制限する必要はない」と説明した。

ただ、措置廃止によって、不法越境者がさらに増えるとの懸念もある。米税関・国境警備局(CBP)によると、南西部のメキシコ国境で拘束された越境者は21予算年度(20年10月〜21年9月)に約173万人で過去最多を記録。21年10月以降も前年を上回るペースで増えている。越境者が急増すれば、収容施設が過剰収容になるなどの問題が深刻化しかねない。

メキシコ国境地帯を抱える西部アリゾナ州選出の民主党上院議員であるケリー、シネマ両氏は3月24日に連名で「国境での治安や秩序を守るため、包括的な対策の準備ができていない状況で即時送還措置を変更すべきではない」とバイデン氏に書簡で注意を促していた。

「国境の混乱」は、厳格な移民政策を求める野党・共和党に格好の攻撃材料を与えることになる。政権側も越境者のさらなる増加を懸念しており、国土安全保障省のマヨルカス長官は1日の声明で「密入国仲介業者が弱い立場にある移民から搾取するため、(米国に入国しやすくなるという)誤った情報を広めるのは分かっている。明確にしておくが、米国にとどまる法的根拠を示せない場合は送還する」と警告した。
【4月2日 毎日】

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【移民にすがる人々にとっては変わらない現実の壁】

母国での事情から移民を強いられている人々からすれば、“タイトル42が停止された場合、移民希望者が国境に押し寄せる可能性があり、受け入れに消極的な層からの政権批判が高まることが予想される。中間選挙を控え、バイデン政権が積極的な受け入れに転じるかどうかは定かではない。”ということで、結局「トランプ政権と変わらない」という声も。

****「トランプ政権と変わらない」…コロナ禍理由に移民希望者を111万人「門前払い」****

メキシコ国境から米国入りを目指す中南米の移民希望者に対し、新型コロナウイルスの感染拡大を理由とした「門前払い」が続いている。亡命申請も出せないまま米国外に送還された移民希望者は昨年だけで約111万人に上った。移民に寛容な姿勢をアピールしてきたバイデン政権だが、実際にはコロナ禍を盾に移民を排除しているとの批判が根強い。

メキシコ国境

世界有数の犯罪都市として知られるメキシコ北部シウダー・フアレス。2020年の殺人件数は1642件で、人口10万人あたりでは首都メキシコ市の7倍以上に達する。貧困層が多い一角に、移民希望者向けのシェルター「サン・マティアス」はある。鉄条網付きの白壁に囲まれ、出入り口は常に施錠されている。
 
滞在する移民希望者たちは、豚や鶏などを飼育し、ビニールハウスではレタスなどの野菜も栽培する「半自給自足」の生活を送る。
 
シェルターは、キリスト教会が所有する土地に19年5月に設立された。3月現在、メキシコやグアテマラ、エルサルバドル、ベネズエラなど中南米を中心とした移民希望者約50人が滞在し、半数を子供が占める。
 
滞在者の多くは、正規の手続きを経ずに米国に入国後、移民・関税執行局(ICE)などに拘束され、メキシコに送還された人たちだ。暴力や貧困から逃れるため、米国への亡命を目指す。
 
メキシコ中部出身のヤディラ・バルガスさん(35)は、夫(39)と息子(12)と既に約8か月間滞在する。「暴力や誘拐が蔓延まんえんする故郷に戻る選択はない」と話す。
 
「半自給自足には食費の削減にとどまらず、暴力から逃れてきた人々の心を癒やす一種のセラピー効果もある」。シェルターを運営するヘクター・トレホ神父(42)は語る。
 
シェルターに滞在期限はない。米国に移住するには原則、亡命申請し、認められる必要があるが、シェルターに滞在する移民希望者の多くは申請も出せずに送還された人たちのため、今後の見通しは立たない。

みかじめ料

トレホ神父が運営する別のシェルター「エスピリトゥ・サント」で暮らすエルサルバドル出身のクリスティアン・ゴメスさん(24)は、母国ではコックとして働いていた。月400ドル(約5万円)以上の収入があったが、地元ギャングから「レント」と呼ばれる月200ドルのみかじめ料を強要された。失業で支払いに窮し、警官に相談すると、「(ギャングは)自分のおいだ。お前は終わりだ」と脅された。
 
「このままでは殺される」と恐怖を感じ、昨年8月に妻(29)と長男(1)と母国を出た。3週間かけ、メキシコ北東部レイノサから米国との国境を流れるリオグランデ川をいかだで渡り、米国に入った。ICEに出頭すると、妻子と離ればなれにされ、施設に8日間拘束された。
 
亡命申請を希望したが、ICEの職員から「スペイン語は話せない」と言われ、相手にされなかった。エルパソまで移送され、国境の橋の前でバスを降ろされた。メキシコ移民局の担当者からシェルターを紹介され、ようやく家族と合流できた。
 
不法移民に厳格なトランプ政権下の米疾病対策センター(CDC)は2020年3月、新型コロナのパンデミック対策として、「タイトル42」と呼ばれる規則を発令した。
 
移民希望者は従来、亡命申請後に裁判所の判断が出るまで米国の滞在が認められてきた。この規則では、亡命申請させないまま米国外への送還が可能だ。バイデン政権は21年1月の発足後、タイトル42から同伴者のいない未成年を除外したが、規則自体は存続させた。
 
税関・国境取締局(CBP)の統計によると、20年3月〜今年2月の間、米南西部国境での拘束者数は計約283万人に上り、このうち、約59%の約166万人がタイトル42によって国外に送還された。バイデン政権発足後だけでも約122万人に達する。
 
治安の悪いメキシコ北部に送還された移民の生活は過酷だ。米国の人権団体「ヒューマン・ライツ・ファースト」が今年1月に公表した報告書によると、過去1年間に、メキシコに送還されるなどした移民希望者に対する殺人や誘拐、性的暴行などの被害が8705件確認された。移民問題に詳しいホリー・ウェブ弁護士によると、レイノサにある国境なき医師団の施設で治療を受けた人の12%が一度は誘拐に遭っていた。

バイデン政権

移民希望者の過酷な境遇への批判が高まる中、首都ワシントンの連邦控訴裁判所は3月4日、タイトル42を巡る訴訟で、迫害などの恐れがある場合、未成年の子供を伴う家族には適用できないと判断した。3月上旬には、戦禍のウクライナを逃れ、米国への亡命を求めた女性と子供3人が、タイトル42を理由にメキシコから陸路での米国入りを拒否された。批判を浴びたバイデン政権は、一転して入国を認めた。
 
そもそも米国とメキシコは連日50万人以上が陸路で国境を行き来しており、新型コロナを理由に移民希望者を排除する合理性は薄れていた。CDCは今月1日、ようやくタイトル42を5月23日で停止すると発表した。
 
タイトル42を巡る訴訟に携わったニーラ・チャクラヴァルトゥラ弁護士は「バイデン政権発足から1年以上たったが、やっていることは前政権と変わらない。安全で公正な亡命プロセスを確立すべきだ」と指摘する。
 
ただ、タイトル42が停止された場合、移民希望者が国境に押し寄せる可能性があり、受け入れに消極的な層からの政権批判が高まることが予想される。中間選挙を控え、バイデン政権が積極的な受け入れに転じるかどうかは定かではない。
 
サン・マティアスに滞在するバルガスさんは亡命を望みながら、タイトル42のために申請できていない。「移民というだけで犯罪者扱いされる。悪事を働くために米国を目指すのではない。私たちは保護や安全を求めているだけだ」と訴える。【4月14日 読売】

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イラン核合意復活に立ち塞がる3つの難問

イラン核合意復活に立ち塞がる3つの難問
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/26316

『イラン核合意の復活を巡る交渉につき、3月23日、イランのアブドラヒアン外相は「今日、我々はかつてない程合意に近付いている」と述べたが、交渉は最終局面にあるとされ、政治的決断が求められる段階に至っていると報じられ始めてから5、6週間を経過するというのに未だ合意に至らない。

テヘラン筋によれば、20ページの文書(制裁、核に関するコミットメント、復活した核合意の実施の手順と検証に関する付属文書を含む)が用意されているらしいが、合意に至る前に処理を要する障害がある。
grynold / iStock / Getty Images Plus

 第一に、対ロシア制裁がロシアのイランとの貿易、投資、軍事協力を阻害しないことの保証をロシアが米国に要求したという一件があった。

しかし、イランは制裁解除を得るために核合意の復活を実現することに決しており、ロシアの妨害を嫌った様子である。イランの不興を買うことは面白くないと判断したのかロシアはこの要求を取り下げた。

 第二は、かねてのイランの要求であるが、米国が再び核合意を離脱しないことの保証である。

この件について、2月21日、イラン外務省の報道官は、米国が離脱しないとの政治的保証を提供し得ないのであれば、イランは「本来的な保証」を受け入れるであろうと述べ、その意味は、米国が再び離脱し制裁を課すことがあれば、イランは迅速に核合意違反を始めるということだと示唆した。

 「本来的な保証」という概念を問題視する向きもあるが、米国が再び離脱した場合にもイランが前回のように相当の期間核合意を順守し続けるとは誰しも予想しないであろう。そうであれば、そしてイランが国内対策として何らかの文章を必要とするのであれば、工夫出来ないことはないであろう。

 第三は、革命防衛隊に対する外国テロ組織の指定の解除を求めるイランの要求である。
イランは、この指定が、仮に核合意が復活し米国の制裁が解除されても外国企業のイランへの投資を阻害することになるとしているのであろう。

 というのは、革命防衛隊はイラン経済のそこここの枢要な部分に支配的な地位を有しているためである。逆に、

イスラエルは指定が革命防衛隊の暴虐な性格を世間に認知させ、資金流入を阻止する効用を持つことを重視しているであろう。米国は結論に至っていないが、核合意復活の交渉の枠外で双方が了解を遂げること、あるいはイランから何等かの見返りの約束を取り付けることなど、打開の道を探っているようである。』

『湾岸諸国やイスラエルが持つ懸念

 核合意の復活には湾岸諸国やイスラエルの懸念が強い。

フィナンシャル・タイムズ紙のデビッド・ガードナーは、3月23日付け同紙掲載の論説‘Iran’s enemies in the Middle East are closing ranks’において、イランの脅威に対してイスラエルを含む地域の諸国が共同戦線を組む兆候が見えることを指摘している。

しかし、イランが核兵器の取得にこれ以上接近することを止める賢明な策が彼等にある訳ではなく、要は米国の決断次第という段階にあるように思われる。

 3月26~30日に中東を訪問したブリンケン国務長官は、彼等の説得に努めた。

他方、最近、イエメンの武装組織ホーシー派がサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)に対する攻撃を拡大しているが(イランと調整された攻撃なのかどうかは不明)、3月25日にもジッダ、ラアス・タンヌーラ、ラービグのアラムコの施設などに対しミサイルとドローンによる相当規模の攻撃を行った。

米国はイランの脅威に対するイスラエルや湾岸の安全に重大な関心を有することを具体的に示すことが必要になっている。

 ブリンケンは「より長期でより強固な」合意を求めると語っていたが、そうはなりそうにない。

しかし、時間稼ぎのためであっても、核合意を復活させることには、ロシアとの対立が緊迫し、中国とも緊張関係にある状況下では十分な合理性があると言うべきであろう。

もし、核合意が復活することになるのであれば、議会に対しても、バイデン政権はこの合理性を説くことになるのではないかと思われる。』

「ウクライナ戦争の勝者」はバイデンと習近平、米中が得た3つの大成果とは

「ウクライナ戦争の勝者」はバイデンと習近平、米中が得た3つの大成果とは
清水克彦:政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師
https://diamond.jp/articles/-/301634

『5月9日に迎えるロシアの対独戦勝記念日

 ロシア軍によるウクライナ侵攻から2カ月を迎えようとしている。ロシアのプーチン大統領は4月12日、盟友であるベラルーシのルカシェンコ大統領を伴った極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地での会見で、ウクライナでの侵攻計画を計画通りに実行する考えを強調し、「(軍事作戦での)目標達成は疑いない」と自信を示した。

 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領も、4月10日の夜、国民向けの動画演説で、「我々はより活発に武器を補給し、ロシア軍のすべての攻撃に備える」と述べ、徹底抗戦する姿勢を改めて強調した。

 ロシアでは、5月9日に対独戦勝記念日を迎える。ロシア国民が、旧ソ連の勝利を象徴する「ゲオルギーのリボン」を胸に着け、愛国心と祝典の高揚感に浸る特別な日だ。

 たとえ、この場で、プーチン大統領による何らかの勝利宣言があったとしても、少なくともウクライナ東部、ドンバス地方の完全制圧が終わるまでは戦闘は続くということだ。同時に、一度は撤退した首都キーウ(キエフ)への再侵攻がないとも言い切れない。

 筆者はこれまで、1991年の湾岸戦争以降、ボスニア紛争、アメリカ同時多発テロ事件、そしてイラク戦争と、歴史に残る戦争や紛争を取材してきた。

 それらの経験則から言えることは、「戦争当事国に勝者はいない」ということである。』

『ロシアもウクライナも勝者にはなれない

 2月24日に始まったロシアとウクライナの戦争だが、この先、どちらが優勢になろうとも、両国ともに勝者とはなり得ない。

 ロシアは、仮にドンバス地方のドネツク、ルハンシク両州を押さえ、「ロシア系住民を守る」という大義名分を成就させたとしても、国際社会では半永久的に「悪玉」のレッテルを貼られる。多くの戦死者を出し、想定以上の経済制裁を受け、1日当たり3兆円ともいわれる戦費と相まって、国内経済は相当疲弊することが予想される。

 こうした戦いに備え、巨額の準備金を確保していたとしても、国民生活への影響は計り知れない。

 一方、ウクライナも勝者にはなり得ない。ゼレンスキーが2019年の大統領選挙で公約の一つに掲げてきた北大西洋条約機構(NATO)への加盟は実現しなかった。

 NATOの規約(第5条)には、「1つ以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する武力攻撃とみなし、その結果、そのような武力攻撃が発生した場合は、各締約国が国連憲章第51条によって認められた個別的または集団的自衛権を行使する」とある。

 すなわち、ウクライナが単体でロシアと戦う状況というのは、これに該当しないのだ。
 侵攻を受けて申請したEUへの加盟も、EUのフォン・デア・ライエン委員長らの肝いりで手続きが加速化したとしても、「戦争の完全停止」「汚職の撲滅」「経済の安定」といった諸条件がクリアされる日はそう近くない。

 南東部の要衝、マリウポリや、第2の都市ハルキウ(ハリコフ)など、ロシア軍の攻撃が激しかった地域では街が廃虚と化し、その復興には時間とコストがかかる。』

『アメリカが得た3つの成果

 では、誰が勝者となるのか。

 筆者はアメリカと中国だと断言する。

 アメリカはロシアのウクライナ侵攻で、いくつもの「利」を得た。第一に、何といっても軍需産業が大もうけできた。

 バイデン大統領が、3月16日に発表したウクライナへの具体的な支援策を振り返ると、スティンガー対空ミサイル800基、ジャベリン対戦車ミサイル2000基、攻撃用無人航空機(ドローン)100機、機関銃、榴弾発射器、小銃など合わせて7000丁、小火器弾薬および迫撃砲弾2000万発などとなっていて、CNNの報道では、発表の1週間後から、順次、ウクライナに配備されている。

 これだけでも総額は8億ドル(1000億円)に上る。戦争が始まって以降は、ウクライナの周辺国にも相当額の武器が売れたことだろう。

 第二は、バイデンは2021年8月、アフガニスタンからのアメリカ軍完全撤退で招いた国際的な信用の失墜を挽回できた点だ。

 筆者は、アフガニスタン撤退については、中国の台湾侵攻などに備え、二正面作戦を避けた英断だったと感じ、担当するラジオ番組でもそのように解説してきたが、国際社会での評価はガタ落ちとなった。

 ただ、今回の戦争で、EUやNATO加盟国の首脳をけん引し、バイデン大統領自身もポーランドを視察するなど、民主義国家群を率いるアメリカのトップとして、ある程度は存在感を発揮できた。

 第三は、ロシア制裁でアメリカ経済が潤い始めたことだ。

 ヨーロッパ諸国がロシアへのエネルギー依存を見直す中、石油も天然ガスも自前で賄うことができるアメリカがヨーロッパ向けの輸出を増やせば、インフレとコロナ禍で苦しむアメリカ経済は持ち直す。ひいては、共和・民主両党が激しく競り合う11月の中間選挙でも、バイデン大統領率いる民主党には追い風になる。』

『つまり、バイデン大統領にとって、ロシアがウクライナに侵攻したことは、表面的には「憂慮すべきこと」であり「断じて容認できないこと」であったが、同時に「ありがたい」という側面も多分にあったことは忘れてはならない。

 それどころか、詳しくは後述するが、そもそもロシアとウクライナの戦争はアメリカが仕向けたと言っても過言ではないのだ。

バイデン大統領が仕掛けたロシア・ウクライナへの「甘いわな」

 思えば、2021年9月1日、バイデン大統領はホワイトハウスで、ゼレンスキー大統領と会談している。この場で、バイデン大統領はウクライナのNATO加盟に、個人的見解としながらも理解を示し、ロシアの侵攻に直面するウクライナに全面支援を約束した。先に述べたように、ウクライナは加盟できないと理解した上でだ。

 それにもかかわらず、会談後に発表された共同声明では、「ウクライナの成功は、民主主義と専制主義の世界的な戦いの中心だ」と位置付けてみせた。つまり、アメリカは完全にウクライナの側に立ち、その安全を重視する考えを打ち出したのである。

 ちなみに、バイデン氏が大統領に就任して以降、ホワイトハウスに招いたのは、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)に次いでゼレンスキー大統領が2人目だった。

 44歳という若きウクライナの大統領は、78歳(当時)の老練な大統領にうまく乗せられたのである。

 筆者は、この流れが、NATOの東方拡大を嫌うプーチン大統領の心に火を付けたとみる。
 もともとアメリカは、ウクライナのNATO加盟には慎重な立場を崩していない。米大統領報道官のジェン・サキもすぐ、「ウクライナには、取らねばならない段階がある」と火消しに走ったが、プーチン大統領を刺激するバイデン大統領の動きは止まらなかった。

 9月20日、バイデン大統領はウクライナを含めた15カ国の多国籍軍による大規模軍事演習を実施した。そして、10月23日には、ウクライナにジャベリン対戦車ミサイル180基を配備した。プーチン大統領がロシア軍をウクライナ国境に展開させたのは、これらの動きを受けた10月下旬のことだ。』

『しかもバイデン大統領は、12月7日、プーチン大統領と会談し、「アメリカ軍をウクライナに派遣することは検討していない」という考えを伝えている。これは「攻めるならお好きに」と言っているようなものだ。

 これらから考えても、アメリカが、ロシアの軍事侵攻を可能にする方向に持っていったと考えていいのではないだろうか。』

『中国が得た3つの成果

 ウクライナ侵攻における、もう一人の勝者は中国の習近平国家主席である。

 中国は、ロシアがウクライナに侵攻した当初から、ロシアに対し、「非難も支持もしない」というスタンスをキープしてきた。

 国際社会から仲介を求める声が相次いでいるものの、習近平自身は今も全く動こうとしていない。

 戦争が長期化すれば、対アメリカで共同歩調を取るロシアが傷む。貿易面で関係が深いウクライナも疲弊する。それは中国にとって好ましくないことだ。

 特に、ロシアが「ウクライナ東部の少数民族=ロシア系住民を守る」という名目で攻め込み、その独立を承認したことは、新疆ウイグル自治区を抱える中国からすれば認めることはできない。

 しかし、中国にとって、戦争そのものはけっしてマイナス材料ではない。ある面、好ましいことかもしれない。

 ウクライナ侵攻による中国の成果は大きく3つある。』

『第一が、ロシアを対アメリカ、対民主主義国家群への切り込み隊長にできることだ。

 アメリカがどう動くか、NATOやEUはどうか、国連をはじめ国際社会の制裁はどの程度かを、ロシアを「モルモット」にしながら把握することができる。それが、台湾や尖閣諸島への侵攻を考えた場合、大いに参考になる。戦況を見ながら、ロシア軍の成功例と失敗例からさまざまなことを学べるだろう。

 第二が、ロシアと対ドル経済圏を確立できることだ。

 ロシアの資源として大きな存在感を示している天然ガスなどに関して、中国とロシアは2月4日、北京冬季オリンピックの開会式直前に、15カ条に及ぶ経済協力を結んでいる。もともと、ロシアの最大貿易相手国は12年間、中国であり、ロシアは制裁のダメージが効いてくればさらに中国マネーに頼らざるを得なくなる。

 ロシアは、SWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出されるなど厳しい状況にあるが、中国が構築する国際送金ネットワーク「CIPS」を利用して中ロ貿易を活発化させる選択肢が残されている。そうなると、中国はロシアを対ドル経済圏(人民元経済圏)に取り込める。

 第三は、日米豪印4カ国による「Quad(クアッド)」を分断できることだ。

 対アメリカを考えた場合、日米豪印4カ国の枠組み「Quad」の分断が不可欠。その一角を占めるインドは3月1日、国連総会の緊急特別会合でロシアへの非難決議採決を、中国とともに棄権した。インドは歴史的に非同盟主義を取り、アメリカの同盟網に組み込まれることに懸念を示している。その半面、ロシアとは軍事協力も密な国だ。

 そのインドが、ロシア問題で中国と歩調を合わせたことは、インド太平洋地域における中国包囲網に風穴を開けることにつながる。5月下旬に行われる予定の「Quad」首脳会議に向け、くさびを打った形になった。』

『高まる尖閣有事リスク 日本の安保は試練の時代へ

 北にロシア、西には北朝鮮、そして南西には中国と、いずれも核保有国を抱えた日本は今後、安全保障面で試練の時代を迎える。

 いざとなれば、日米安全保障条約に基づき、アメリカは手助けしてくれるだろうが、アメリカのシンクタンク、ランド研究所の予測などでは、「尖閣諸島が攻撃を受ければ5日間で制圧される」との見方もある。

台湾有事 米中衝突というリスク『台湾有事 米中衝突というリスク』
清水克彦 著
平凡社新書
税込946円 https://www.amazon.co.jp/%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E6%9C%89%E4%BA%8B-%E7%B1%B3%E4%B8%AD%E8%A1%9D%E7%AA%81%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF-987-%E6%B8%85%E6%B0%B4-%E5%85%8B%E5%BD%A6/dp/4582859879?_mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E6%9C%89%E4%BA%8B+%E7%B1%B3%E4%B8%AD%E8%A1%9D%E7%AA%81%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF&qid=1633320902&sr=8-1&linkCode=sl1&tag=diamondonline-22&linkId=0558b286d176c6c8273197609d093fa1&language=ja_JP&ref=as_li_ss_tl 

「ロシア軍のウクライナ侵攻は、中国が台湾を侵略するシナリオを現実的なものにした」

 これは、安倍政権で外相や防衛相、菅政権で沖縄担当相などを務めた自民党・河野太郎の言葉だが、筆者は台湾と並び「尖閣諸島」も加えたい。

 自民党の安全保障調査会は11日、敵のミサイル発射拠点を直接たたく「敵基地攻撃能力」について議論し、参加者から名称を「自衛反撃能力」などに変更する案などが出された。あの共産党ですら、志位和夫委員長が「有事の際には自衛隊を活用する」と語らざるを得ない時代である。

 政府は今年末をめどに「防衛計画の大綱(大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」の改定を目指す方針だが、名称うんぬんよりも中身の議論を急ぐべきである。

(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)』

米議員団が台湾訪問 蔡総統と会談へ、中国は反発

米議員団が台湾訪問 蔡総統と会談へ、中国は反発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM14CN40U2A410C2000000/

『【台北=龍元秀明】台湾の外交部(外務省)は14日夜、米国の上下両院の議員団が同日、台湾に到着したと発表した。ロバート・メネンデス外交委員長(民主党)、リンゼー・グラム氏(共和党)の両上院議員を含む6人で、15日まで滞在する。蔡英文(ツァイ・インウェン)総統や、邱国正・国防部長(国防相)と会談する見通しだ。

外交部は14日「訪問を心から歓迎する。米国の台湾に対する揺るぎない支持を改めて示した」との声明を発表した。米議員団は台湾の前にオーストラリアを訪問した。

一方、中国外務省の趙立堅副報道局長は14日の記者会見で、米議員団が同日訪台するとの事前報道を受けて「米国と台湾の公式往来に断固反対する」と主張していた。』

トンネルの中にトンネル、一般車両を通しながら断面拡幅に挑む国道465号蔵玉トンネル拡幅工事

トンネルの中にトンネル、一般車両を通しながら断面拡幅に挑む
国道465号蔵玉トンネル拡幅工事

橋本 剛志
日経クロステック/日経コンストラクション
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02011/040500002/

 ※ 「トンネル拡幅工事」の話しだ…。

 ※ 通常は、「通行止め」にして、その間に「拡幅工事」するんだろうが…。

 ※ しかし、『トンネルの拡幅工事は、通行止めで実施するのが一般的。だがトンネルの周囲には迂回路がないため、県は一般交通を確保しながら拡幅する「活線拡幅」の採用を決めた。』…、ということだ…。

 ※ 「一体、どういう”工法”で実現するんだろう…。」と思って、興味しんしんで読んだ…。

『一般車両を通しながらトンネルを掘削して拡幅する――。そんな難題に取り組む現場が千葉県君津市にある。車両の通行路を複数回変えるなど施工手順を工夫。作業スペースが限られるなか、コンクリートの吹き付けと支保の建て込みの機能を兼ねた重機を導入し、手待ち時間を減らした。

 千葉県君津市の内陸部を東西に貫く国道465号を走っていると、トンネルの中に一回り小さい門型断面のトンネルが出現する。千葉県君津土木事務所上総出張所が発注し、飛島建設と伊藤土建(君津市)による特定建設工事共同企業体(JV)が施工する蔵玉(くらだま)トンネルの拡幅工事の現場だ。

トンネル拡幅部上部の掘削が進む蔵玉トンネルの北側坑口。プロテクターで覆われた写真右側の道路を一般車両が通行する。(写真:大村 拓也)
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 一般車両は、青いLED照明が取り付けられている幅3.5m、高さ4.0mの門型断面のトンネル内を交互で通行する。実はこのトンネルは、その真横で進む蔵玉トンネルの拡幅工事から安全を確保するプロテクターとしての役目も担う。

トンネルの中に一回り小さい門型断面のトンネルが出現する(写真:大村 拓也)
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トンネルの拡幅部分を掘削する様子。動画右下がプロテクターで保護された一般車両の通行路(動画:大村 拓也)

 トンネルの拡幅工事は、通行止めで実施するのが一般的。だがトンネルの周囲には迂回路がないため、県は一般交通を確保しながら拡幅する「活線拡幅」の採用を決めた。

拡幅した坑内の様子。写真右にプロテクターが見える。作業スペースは狭く、ドリルジャンボがアームを伸ばして施工している(写真:大村 拓也)
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 拡幅の手順は以下の通り。まずは、幅約6m、高さ約5mの既設トンネルにプロテクターを設置して、側面にモルタルを充填。プロテクターの外周を掘削しながら支保を建て込む。
 続いて、拡幅した空間に新しいプロテクターを設置して一般車両の通行路を変更してから、先に設置したプロテクターを撤去。プロテクターで覆っていた箇所を掘削して支保を施工する。

 その後、プロテクターを中央に移動し、再度通行路を変更。防水シートや覆工コンクリートを施工した後、最後に舗装や排水溝を1車線ずつ施工して完成だ。

トンネル拡幅の主な施工プロセス。千葉県君津土木事務所の資料と取材を基に日経クロステックが作成
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『支保が打てない場所には鋼管を打設

 活線拡幅には上半盤と下半盤に分けて掘削するベンチカット工法を採用したが、プロテクターがあったために工夫が必要だった。

 例えば上半盤を掘削し過ぎると、プロテクターの上部にバックホーやドリルジャンボのアームを伸ばしづらくなる。さらに重機の運転席からプロテクター上部の様子が見えなくなるため、施工の効率が落ちる。

 逆に上半盤の掘削を抑え過ぎると、フォアポーリングやロックボルトを施工する際にガイドセルを動かしにくくなる。

 寿建設(福島市)の工事第一部の田沢正滋氏は、「現場に重機を搬入してから作業員と話し合い、上半盤の掘削度合いを調整した」と話す。同社は下請け会社で掘削や覆工を手掛ける。

 支保の施工にも苦労した。拡幅するトンネル断面のうち、鋼製のプロテクターで覆っているスプリングライン付近については、アーチ支保やロックボルトを施工できない。

 そこで、プロテクターの天端からアーチ支保間に「フットパイル」と呼ばれる直径11.4cm、長さ3mの鋼管を斜め下向きに施工。ウレタン系注入剤を注入して地山に固定した。プロテクターを撤去するまで、アーチ支保の端部にかかる力を仮受けさせた。

フットパイルには直径11.4cm、長さ3mの鋼管を使い、先端にはビットを取り付ける(写真:大村 拓也)
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アーチ支保間ごとに鋼管1本を打設する。打設後にウレタン系注入剤を注入して地山に固定する(写真:大村 拓也)
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支保パターンDI-bのトンネル断面図。千葉県君津土木事務所の資料と取材を基に日経クロステックが作成
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 フットパイルはプロテクターの脇に止めたドリルジャンボからアームを伸ばして施工する。トンネルの延長方向に1m間隔で設置したアーチ支保の間に、フットパイル1本を打設する。

フットパイルを打設する様子(動画:大村 拓也)』

『エレクター一体型吹き付け機を導入

 坑内ではプロテクターがあるために重機がすれ違えない。さらに重機の待機場所へはトンネル坑口から出て一般車両の通行路を横切る必要があるため、重機の入れ替えに時間がかかる。

トンネル北側の坑口を上空から見る。写真右下が重機の待機場所。重機の入れ替え時は一般車両が通る国道を横切らなければならないため時間がかかる(写真:大村 拓也)
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 そこで、アーチ支保を保持するエレクターを一体化した吹き付け機を導入した。1次吹き付けと支保の建て込み、その後の2次吹き付けで重機を入れ替える時間を削減した。

1台の重機で支保の設置とコンクリート吹き付けを進め、重機の入れ替え回数を削減した(写真:大村 拓也)
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支保をつかんで設置するエレクターを備えた吹き付け機を導入した(写真:大村 拓也)
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 飛島建設JV蔵玉トンネル作業所の野地敦夫所長は「エレクター一体型の吹き付け機は高額だが、工期短縮のメリットがコストを上回る」と説明する。

拡幅部の切り羽にコンクリートを吹き付ける様子。重機のアームに支保を建て込むエレクターの機能を搭載している(動画:大村 拓也)

 その他、坑内の換気でも工夫を凝らした。プロテクターと既設トンネルの隙間を通気口として利用。拡幅掘削の終点側に設置した集じん機を使って、切り羽で発生する粉じんを吸引する。終点側の坑口付近での騒音を抑えるために、坑口には遮音壁を設置している。
掘削の終点側に遮音壁を設置して、集じん機の騒音や掘削時の騒音を抑える(写真:大村 拓也)
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 今後の工程でも難所が待ち構えている。支保を全て施工し終えた後のプロテクターの移動だ。覆工コンクリートを打設するために、全長158mのプロテクターをトンネル中央に移す。

 昼間の一般交通の確保は避けられないので、午後9時から翌朝の午前5時までトンネルを通行止めにして、プロテクターをまとめて一晩で動かす必要がある。野地所長は「プロテクターの持ち上げや移動設備の取り付け作業などを慎重に検討したい」と話す。

平面図(資料:千葉県君津土木事務所)
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標準断面図(資料:千葉県君津土木事務所)
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縦断図(資料:千葉県君津土木事務所)
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北欧、安保中立を転換 フィンランドがNATO加盟検討

北欧、安保中立を転換 フィンランドがNATO加盟検討
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13CH70T10C22A4000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】軍事的な中立を掲げてきたフィンランドやスウェーデンが安全保障政策を転換する議論を始めた。北大西洋条約機構(NATO)加盟などを検討し、6月のNATO首脳会議までに結論を出すとみられる。ロシアと北欧との緊張が高まるのは確実だ。

【関連記事】
・[FT]フィンランド国民の6割、NATO加盟支持 政府検討
・北欧2国、夏にNATO加盟申請か ロシア侵攻受け
・欧州、独自の安保体制強化 対ロシアで中立国にも変化

フィンランド政府は13日、ウクライナ侵攻を受けた安全保障環境の変化を分析した報告書を議会に提出した。ニーニスト大統領は声明で「フィンランドの方向性を明確に定めねばならない」と表明した。議会での審議を経て加盟の方針が決まれば、5月にも加盟を申請する方針だ。

ロシアは反発する。ロイター通信によると、ロシア前大統領で安全保障会議のメドベージェフ副議長は14日、フィンランドなどがNATOに加盟すればロシアは防衛力を強化しなければならないと警告した。「バルト海の非核化は協議できなくなる」とけん制した。

フィンランドはロシアと約1300キロメートルの国境を接する。第2次世界大戦で旧ソ連の侵攻を受け、戦後は旧ソ連への刺激を避ける意味もあり中立政策をとった。旧ソ連崩壊後は欧州連合(EU)に加盟したが、NATOとは協力しつつも非加盟を保ってきた。

「欧州の安保環境はロシアのウクライナ侵攻で根本的に変わった」。フィンランドのマリン首相は13日、スウェーデンのアンデション首相との共同記者会見で強調した。

スウェーデンでも伝統的にNATO加盟に反対の立場だった与党・社会民主労働党は11日、加盟を含む安全保障の強化に向けた議論を始めた。3月下旬の世論調査では6割弱が加盟を支持した。

NATOの根幹は集団安全保障を定めた条約5条だ。一つの加盟国に対する攻撃をNATO全体への攻撃とみなし、加盟国は攻撃された国の防衛義務を負う。加盟すればNATOに守られる一方で「他国への責任を持つことになる」(アンデション氏)。

NATOは6月末にマドリードで首脳会議を開く。NATOのストルテンベルグ事務総長はかねて両国が加盟申請をすれば「歓迎されるだろう」と話している。

北欧諸国はロシアと距離が近く、とりわけロシアとつながるバルト海は軍事的重要度が高い。NATOにとって、すべての北欧諸国が加盟国になれば防衛しやすくなる。ただ加盟が認められるにはロシアと近いハンガリーを含めた加盟全30カ国の同意が必要になる。』

英、史上最高額の資産凍結 ロシア富豪の知人ら1.6兆円

英、史上最高額の資産凍結 ロシア富豪の知人ら1.6兆円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14EP40U2A410C2000000/

『【ロンドン=中島裕介】英外務省は14日、ロシアの軍事侵攻の制裁対象に、英強豪サッカークラブ・チェルシーのオーナーとして有名な富豪のアブラモビッチ氏の知人2人を加えると発表した。凍結される資産は2人分合わせて約100億ポンド(約1.6兆円)で、外務省は英国で「史上最高額の資金凍結」と説明している。

制裁の対象になったのはチェルシーのディレクター、ユージーン・テネンバウム氏と、アブラモビッチ氏の長年の仕事仲間のデビッド・ダビドビッチ氏。外務省によると、ロシアがウクライナに侵攻した2月24日にアブラモビッチ氏が支配していた会社をテネンバウム氏に移した。さらに3月にダビドビッチ氏がこの会社を引き継いだという。

英王室属領のジャージー島の当局は今週、アブラモビッチ氏が所有するとみられる50億ポンド超の資産凍結を決めた。外務省は14日の2人の資産凍結は、ジャージー島当局と連携した判断だと説明している。これで英政府がロシアの侵攻で制裁を科した対象者は106人になった。

トラス外相は14日の声明で「プーチン大統領がウクライナで失敗するまで制裁を続ける」と語った。』

ロシア黒海艦隊旗艦「モスクワ」沈没 ウクライナが攻撃か

ロシア黒海艦隊旗艦「モスクワ」沈没 ウクライナが攻撃か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14ECI0U2A410C2000000/

『【ワシントン=中村亮、イスタンブール=木寺もも子】ロシア国防省は14日、ロシアの黒海艦隊の巡洋艦「モスクワ」が沈没したと発表した。タス通信が報じた。米国防総省高官は大規模な火災があったと分析し、ウクライナ軍がミサイル攻撃を実行した可能性を排除しないとした。

【関連記事】
・プーチン氏、エネルギー輸出先の多様化指示 欧米以外に
・米欧、ウクライナに追加軍事支援 ロシアの東部攻撃備え

ロシア国防省は声明で「モスクワを目的地の港湾へけん引していたところ、弾薬の爆発で起きた火災による船体の損傷で船が安定性を失った」と説明。天候が悪かったこともあり、モスクワが沈没したと明らかにした。約500人みられる乗組員は別の艦船に避難していたという。

ロシアの発表に先立ち、米国防総省高官は記者団に対し、ウクライナ南部の港湾都市オデッサの海岸から約110キロメートルの黒海上を航行していたモスクワで火災が発生したと明らかにした。火災が起きた海域から東に進んだといい、ウクライナ領クリミア半島のセバストポリにある海軍基地を目指していると分析した。

モスクワは黒海艦隊の旗艦で、強さの象徴とみられていた。沈没はウクライナ侵攻で誤算を重ねるロシア軍の状況を映し、ロシア軍の士気の低下につながる可能性もある。最近の戦艦沈没では、英国の潜水艦が1982年のフォークランド紛争でアルゼンチンの巡洋艦「ヘネラル・ベルグラノ」を撃沈した例がある。

ロシア黒海艦隊の巡洋艦「モスクワ」(写真は2008年9月)=AP

国防総省高官は火災の原因について複数のシナリオをあげた。一つはウクライナ軍が国産の対艦ミサイル「ネプチューン」で攻撃した可能性だ。ネプチューンの射程は300キロメートル程度とされ、高官は「(モスクワは)射程外にいなかった」と語った。

高官によるとモスクワでの火災後、オデッサに近い黒海の北側で活動をしていたロシア軍の艦艇4~5隻がすべて南下し、少なくともオデッサの海岸から約140キロメートル離れた位置に移動した。ネプチューンの射程に入っているため海岸から離れていっている可能性がある。

ウクライナ側はネプチューン2発でモスクワを攻撃したと主張している。事実であればロシア軍によるオデッサへの上陸作戦がさらに遠のく公算が大きい。ロシア軍がウクライナ軍のミサイルの能力を過小評価していた可能性も出てくる。

高官は「とくに防空を目的とした水上戦闘艦の場合には火災のリスクや爆発の可能性はある」とも強調し、事故の可能性も排除しなかった。「結論を出す前に慎重になる必要がある」と語り、情報を精査する考えを示した。

一方、ロシアの捜査当局は14日、西部ブリャンスク州の住宅がウクライナ軍の攻撃を受け、幼児を含む7人が負傷したと主張した。声明によると実行越境した越境したウクライナ軍のヘリコプター2機で、少なくとも6度にわたり「意図的」に住宅を攻撃したとしている。インタファクス通信が伝えた。

ロシア西部ベルゴロド州の知事も14日、ウクライナ軍の攻撃を受けたとSNS(交流サイト)のテレグラムに投稿した。被害は出ていないという。同州は1日にも燃料貯蔵施設が攻撃を受けたとしている。

ウクライナ側は越境攻撃についてコメントしていない。真偽は不明だが、両国間の戦闘激化につながる恐れがある。

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竹内薫
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別の視点

攻撃されていないのに火災が発生し、天候が悪かったから旗艦が沈没した可能性もゼロではないのでしょうが、ロシア側の発表は嘘が多すぎて、もはや誰も信じないでしょう。

ウクライナのミサイル攻撃だとすると、今後、ロシアの艦船は安易にオデーサに近づけなくなるので、大きな戦果だと思います。

2022年4月15日 7:34

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

ウクライナ軍の対艦ミサイル「ネプチューン」2発による攻撃が原因なのかどうかは記事にある通りまだ確定していないものの、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が戦争をしている最中に沈没というのは、ロシア海軍やプーチン大統領にとって、メンツ丸つぶれの出来事と言える。

沈没艦の艦名はロシアの首都名である。仮にウクライナ軍のミサイル「ネプチューン」の威力が想定以上のものなのだとすれば、ウクライナ南部から海兵隊などを上陸させて陸軍による東部での大攻勢を支援する作戦が展開しにくくなってしまう。

ロシアの国防省はこの一件の原因を今後どのように説明するのか、ロシアのメディアがこの事件をどのように報じるのかに、興味がわく。

2022年4月15日 7:30 』