米、安保理「拒否権」に説明責任 ロシア念頭に決議案

米、安保理「拒否権」に説明責任 ロシア念頭に決議案
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1301J0T10C22A4000000/

『【ニューヨーク=吉田圭織】米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は12日、安全保障理事会における拒否権発動に対して説明を求める国連総会決議案を準備していると声明で発表した。常任理事国が拒否権を発動した場合、自動的に国連総会を招集できるようにする。来週にも加盟国に正式に案を提示する。

トーマスグリーンフィールド氏は「拒否権を行使する場合、常任理事国はその決議が国際平和と安全の維持を促進しないと考える理由を説明すべきだ」と強調した。

決議案では、拒否権の発動から10日以内に国連総会の会合を開くよう求める。安保理には拒否権が発動された状況を説明する報告書の提出を呼びかける。米国と共同で決議案を準備しているリヒテンシュタインは同代表部のツイッターで、決議案には38カ国が共同提案国として名を連ねていると明らかにした。

2月下旬には、安保理でウクライナ侵攻を非難する決議案がロシアの拒否権発動で否決された。3月下旬に国連総会が採択した人道状況の改善を求める決議でも、当初めざしていた安保理での採決はロシアによる拒否権を念頭に見送った。

トーマスグリーンフィールド氏は「過去20年間のロシアによる拒否権の乱用には特に懸念している」と述べた。ジョージア(グルジア)での国連監視団の任期延長をめぐる議論や、シリアに対して化学兵器の使用をめぐる調査団派遣の是非など、過去にロシアが拒否権を発動して国際協調の足並みを乱した例も挙げた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は5日の安保理会合で演説し、ロシアの拒否権行使で国際社会から思うように支援を受けられない状況について「国連の機能不全は明らかだ」と批判していた。「安保理の拒否権が殺人する権利にならないよう、国連を即時に改革しなければならない」とも訴えていた。

拒否権そのものを制限するには国連憲章の改正が必要だ。憲章改正は加盟国の3分の2と常任理事国5カ国全ての賛成が条件となり、実現の可能性は低い。ロシアや中国の反対が予想されるほか、米英仏も自国の特権の制限には慎重なためだ。今回の決議案は拒否権行使に対して検証の場を設け、発動した国に説明責任を果たすよう求めることで、権利の乱用を抑制する狙いがあるとみられる。』