ウクライナ避難民だけなぜ ミャンマーで日本への失望

ウクライナ避難民だけなぜ ミャンマーで日本への失望
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC113ZV0R10C22A4000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ これは、絶対に言われるな…、と思っていた…。

 ※ 『日本がミャンマー問題に対し、ウクライナ問題と同じ姿勢で臨むのは難しいという見方はできる。前者は「内政問題」とも捉えられる一方、後者は世界秩序を揺るがす戦争に発展している。しかもロシアは隣国で領土問題も抱える。西側諸国と歩調を合わせ、その脅威に立ち向かう必要はあるだろう。』…。

 ※ そういう「抗弁」が、どこまで「説得力」を有するものか…。

 ※ しかし、「国益」の観点からは、プーチン政権の崩壊、そこまで行かなくても、ロシアの国力の減退は、「北方領土」交渉を「日本側有利」に持って行く、「千載一遇のチャンス」であることも確かだ…。

 ※ それで、外務省も財務省も「チャンス!」とばかりに、「どっと乗っかって」「前のめり」になっている側面があるんだろう…。

 ※ しかし、ミャンマー人、ひいてはアジア人の眼には、「どう写っているのか」ということを忘れては、ならんだろう…。

『ウクライナからの避難民の受け入れに日本政府が積極的に動いている。日本は難民認定のハードルが非常に高いとされるが、政府は今回「避難民」という特例的な扱いで受け入れており、3月30日時点で337人が来日。4月5日にはポーランド入りした林芳正外相が20人の避難民を伴って帰国した。

その様子を複雑な思いで眺めているのがミャンマーの人々だ。同国では昨年2月、国軍によるクーデターが発生。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、50万人以上が実権を握った国軍に追われ国内避難民となった。

「ウクライナ人は日本に行けるのに、なぜ私は駄目なのか」。あるミャンマー人の男性はこう心境を吐露する。この男性はかつてミャンマーの最大都市ヤンゴンに住み、ミャンマーや日本が関係する仕事で長年活躍していた。だがクーデターを機に状況は一変。反国軍活動に関与したとして逮捕される恐れが強まり、当局の目をかいくぐってヤンゴンを脱出した。

男性は日本に難民として受け入れてもらうよう要請。日本側も当初は前向きな姿勢を示していた。だが手続きは遅々として進まない。男性は追い詰められていった。国軍と、これに反発する少数民族武装勢力や反国軍組織との間で激しい衝突が続き、戦火の足音は避難先の目前まで迫る。

ようやく受け入れの条件が固まったが、その内容は非常に厳しく、乗り越えることは困難だった。「実質的には拒否されたようなもの」だと男性は振り返る。もう日本を頼りにはできない。そう悟った男性は、避難先を米国に変えることを決めた。

日本と異なり、米国の対応は驚くほど早かった。男性の元には米国本土の担当者から連絡が入り、スムーズに渡米が決まる。米国に飛ぶまで安全に過ごすことができる「隠れ家」まで確保された。今、この男性は隠れ家に身を寄せながら、渡米のタイミングを待つ。

正確な数も手段も公表されていないが、この男性のように、国軍に迫害を受ける恐れのある多くのミャンマー人が米国の庇護(ひご)を受け、次々と渡米しているとみられる。一方、日本で難民として認められたミャンマー人はほとんどいない。
制裁には及び腰

ミャンマー問題とウクライナ問題で日本の姿勢には大きな差がある。

ロシアに対し、日本は西側諸国と歩調を合わせ早い段階で制裁に動いた。欧米はミャンマー国軍にも制裁を科す。だが日本は国軍に対する制裁には慎重な立場を崩さない。

3月27日、欧米など21カ国・地域は国軍に対し暴力停止や民主主義の回復を求める共同声明を発表したが、ここにも日本は加わっていない。政府開発援助(ODA)にしても、新規案件は停止されているものの、既存の案件については一部再開している。

制裁に及び腰であること、もともと日本と国軍との関係が深いことから、「日本は国軍寄り」との見方は当初からあった。加えて、日本企業が多く加入する日本ミャンマー協会の幹部がクーデター後も国軍幹部と面会していたり、日本が国軍の士官候補生の受け入れを継続していたりすることから「国軍寄り」という印象はより強まった。「日本にはがっかりしている」。あるヤンゴンに住むミャンマー人はこう不満げにつぶやく。
ミャンマーの国軍記念日の軍事パレードで閲兵するミンアウンフライン総司令官(3月27日、首都ネピドーで)

日本がミャンマー問題に対し、ウクライナ問題と同じ姿勢で臨むのは難しいという見方はできる。前者は「内政問題」とも捉えられる一方、後者は世界秩序を揺るがす戦争に発展している。しかもロシアは隣国で領土問題も抱える。西側諸国と歩調を合わせ、その脅威に立ち向かう必要はあるだろう。

だからといって、ミャンマーで国軍に対し融和的な姿勢を取り続けることが得策とも言えない。
ダブルスタンダードが招くリスク

「日本は国軍から侮られている」と冒頭の男性は言う。例えば国軍は日本の支援でタイ国境近くにつくられた村を複数回にわたって爆撃した。また国軍に近い関係者は、今回のロシアのウクライナ侵攻について、「かつて米国が日本を非武装化したのと同じ目的がある」としてロシアを正当化する見方を内外に示している。

国軍からは侮られ、ミャンマーの人々からは不信を招く日本の曖昧な姿勢は、東南アジアにおける立場も危うくする。ミャンマー国軍はロシアを明確に支持している。それにもかかわらず国軍に融和的な姿勢を取っていてはダブルスタンダードだと見られかねず、周辺国に対しても示しがつかない。

「日本は国軍にもっとプレッシャーをかけるべきではないか。ミャンマー政策を誤った場合、東南アジア全体における日本の戦略が再考を迫られかねない」(タイ・チュラロンコン大学のティチナン・ポンスディラック教授)

ミャンマーでは国軍に反発する人々が各地で武装し、少数民族武装勢力とも連携して激しい抵抗を繰り広げている。人々がいつか国軍の手から実権を取り戻したとき、日本は歓迎されるのか。このままではアジアの重要なパートナーを失いかねない。

(日経BPバンコク支局長 飯山辰之介)

[日経ビジネス電子版 2022年4月8日の記事を再構成]』