国連人権理、ロシア追放も亀裂浮き彫り 反対・棄権急増

国連人権理、ロシア追放も亀裂浮き彫り 反対・棄権急増
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07ED00X00C22A4000000/

『【ニューヨーク=白岩ひおな、北京=羽田野主】国連総会が7日、93カ国の賛成多数で採択したロシアの人権理事会の理事国資格を停止する決議は、ウクライナでの民間人殺害をめぐるロシアの孤立を印象づけた。一方でロシアや中国の切り崩し工作などを受け、過去の決議より消極的な国が増加。反対と棄権は計82カ国、無投票も合わせれば100カ国と賛成を上回り、国際社会の亀裂も浮き彫りになった。

【関連記事】国連人権理事会、ロシアの資格停止で何が変わる?

ウクライナの首都キーウ(キエフ)周辺での民間人殺害を受け、日米欧など58カ国がロシアの理事国資格停止決議を共同提案した。安保理の常任理事国が国連機関の資格を停止されるのは初めて。ウクライナのクレバ外相は「人権を守る国連機関に戦争犯罪人の居場所などない」と歓迎した。

「任期終了前に人権理を脱退した」。ロシアのポリャンスキー次席大使は資格停止の可決後、投票結果を不服として自ら脱退すると表明した。資格停止に賛成した国からは「クビになってから辞職を申し出るようなものだ」とやゆする声も上がった。

ただ、際だったのが反対・棄権票の急増だ。ウクライナ侵攻をめぐり、国連総会がこれまでに採択した3月2日の非難決議や人道状況の改善を求めた24日の決議と比べ、反対は24カ国と前回決議(5カ国)の約5倍。中国やベトナム、イランなど前回決議の棄権国のうち18カ国が反対に回った。賛成票は3割程度減少した。

棄権票も前回の38カ国から58カ国と約5割増えた。インドネシア、ブラジル、タイなど39カ国が賛成から棄権に回った。メキシコのデ・ラ・フエンテ大使は「戦時中もロシアの指導者と対話を続けるための連絡経路を維持すべきだ」と説明した。

背景には、ロシアや中国が途上国などに「踏み絵」を迫ったことがある。

「(棄権や無投票でも)非友好的な姿勢とみなす。2国間関係や国連で取り扱う各国の重要な問題で立場を考慮する」。ロシア代表部は6日までに、こんな脅しめいた書簡を加盟国の一部に送っていた。

中国の張軍国連大使は投票前の演説で「決議は加盟国間の分断を深刻にする。火に油を注ぐようなものだ」と反対を明言した。王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は侵攻以降、東南アジアや中東、アフリカなどの外相や首脳と相次ぎ会談。ロシアを非難する米欧に賛同せず、中立的な立場を取るように働きかけてきた。

「アルジェリアはウクライナ危機に対する中国の見方に賛同する」。3月20日、安徽省で王氏と会談したアルジェリア外相は強調した。同国は同2日のロシア非難決議を棄権していたが、今回は反対に回った。

同22日に会談したサウジアラビア外相とも「各国は独自に判断する権利があり、外部のいかなる圧力も受け入れない」との認識で一致。サウジは賛成から棄権に転じた。

国連機関への参加資格を剝奪する今回の決議は、もともと採択のハードルが過去2回よりも高かった。シンクタンク国際危機グループ(ICG)のリチャード・ゴワン氏は、中国など自国内に人権問題を抱える国が「人権理での資格停止の前例を作ることを懸念した」ことが一因だと指摘する。人権理の理事国には新疆ウイグル自治区の人権問題で非難されてきた中国のほか、ベネズエラやキューバなども名を連ねる。

ロシアはこれまでも拒否権を盾に安保理が法的拘束力を持つ措置を取ることを妨げてきた。早稲田大の萬歳寛之教授は「安保理の常任理事国でもルール違反は許さないということを明確にした点で意義がある」と指摘する。

▼国連人権理事会 人権侵害への対処などを担う国連の組織。スイスのジュネーブに本部を置き、47カ国の理事国で構成する。任期は3年。

理事国が「重大かつ組織的な人権侵害」をした場合、国連総会で投票に参加した国(棄権と無投票を除く)の3分の2以上の賛成を得れば理事国資格を停止できる。

ロシアの資格停止は、カダフィ政権(当時)による反体制派の武力弾圧を受けてリビアの資格を停止した2011年3月以来。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Divisions-exposed-in-vote-to-suspend-Russia-from-U.N.-rights-council?n_cid=DSBNNAR 』