爆傷には、一度、二度、三度、四度の区別がある。
ワイヤードの2022-4-4記事「How Explosions Actually Kill」。
https://st2019.site/?p=19065
『爆傷には、一度、二度、三度、四度の区別がある。
いちばん普通に起きるのが「第二度の爆傷」で、主に破片によってもたらされる外傷である。
庶民が頭で理解することがむずかしく、そこから、さまざまな都市伝説を生んでしまうのが「第一度の爆傷」。これは、衝撃波のみによる人体外傷。
停止状態の自動車が、文字通りゼロ秒にして、時速100キロまで加速させられたら、どうなる? ショックウェイヴが到達したときの分子の挙動は、まさにそれに等しい。
ショックウェーヴは、液体の中では速く、ガスの中では遅く、伝播する。
人体が衝撃波を受け止めると、肺胞の中にガス空間が散在しているため、とてもまずいことになる。
人体の液体部分を、毎秒1540mのスピードで伝わってきたショックウェーブが、肺胞のガス空間では、一挙に毎秒343mに減速させられる。減速させられたエネルギーは、エネルギー保存の法則により、どこかにはけ口を見出さねばならない。それは肺の組織の「薄い壁」や膜を破壊し、出血させる。ガス交換する空間に血が満ちてしまうので、人はもはや呼吸が不可能になり、死ぬ。このプロセスは「スポーリング」と呼ばれる。
※ノモンハンの証言で、砲撃の連打を壕内で浴びていると、呼吸ができなくなる気がしたというのも、この現象か。
頭蓋骨にも、微少なガスポケットが散在しているので、そこはダメージを受ける。たとえば副鼻腔の周囲など。死後解剖して調べると、蜘蛛の巣状にヒビが走っていたりする。
衝撃波を全身に浴びた人は、その波が三半規管も通過するために、全身が物理的に吹き飛ばされたような錯覚を受けることがあるが、じっさいには、その場を動いていなかったりする。
もし、アクション映画のように、爆発によって人がリアルに物理的に吹き飛ばされたとしよう。その人は、衝撃波もたっぷり浴びている公算が大なので、生存する可能性はほとんど無い。
サーモバリック爆弾は、通常の爆薬に、アルミ粉などを大量に加えたもので、アルミ粉は爆薬よりゆっくり燃焼するから、爆圧のピーク時間を引き伸ばすことができるのである。ただし、それによって人の肺から空気を追い出すというのは都市伝説である。ショックウェーヴが人を窒息死させる機序は上述の通り。その機序を強化しているにすぎない。
地下トンネルの内部でサーモバリックを爆発させると、ピーク圧を効率的に高めることができる。枝分かれした地下壕の隅々まで破片は飛んでくれないけれども、爆圧ならば及んでくれる。だから、同じ重量の爆弾素材で最高に爆圧を高めてやる方法として、1980年代にソ連が、アフガンゲリラの掃討のためにサーモバリックを改良したのだ。』