[FT]ウクライナを守るトルコ製ドローン 対ロシアで威力

[FT]ウクライナを守るトルコ製ドローン 対ロシアで威力
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『トルコ製軍用ドローン(小型無人機)「バイラクタルTB2」はウクライナ軍で人気が高く、歌まで作られた。陸軍は「僕たちは(想像上の怪物)オークに腹を立てた。バイラクタルがロシアの無法者を幽霊に変えた」という歌詞のついた曲をフェイスブックに投稿した。
イスタンブールの展示会に出品されたバイラクタルTB2=ロイター

ウクライナ外務省は「バイラクタル」と名付けられた警察犬の画像をツイートした。首都キエフの動物園で生まれたキツネザルの赤ちゃんも、ウクライナに侵攻したロシア軍の戦車やミサイルシステムを破壊したドローンにちなんで名付けられた。
トルコ側のアピールは控えめだが

ドローンをたたえるウクライナ側とは対照的に、紛争解決の仲介役を目指すトルコはロシアを怒らせたくないため、武器売却を目立たせないようにしている。2月24日にロシアの軍事侵攻が始まって以降で最もハイレベルな外交交渉となったロシアとウクライナの外相会談は、3月10日にトルコで行われた。

北大西洋条約機構(NATO)の他の加盟国はウクライナに対戦車兵器やミサイルを提供し、ロシアへの抵抗を支援している。だがトルコは、エルドアン大統領の娘婿が共同創業者に名を連ねる企業が製造した無人航空機(UAV)の売却は商取引の一つにすぎないとしている。

トルコのクラン外務副大臣は3月、地元紙デイリー・サバの取材に対し、ドローンを(状況を一変させる)ゲームチェンジャーだと評価したものの「トルコからの支援ではない。ウクライナがトルコの企業から購入した製品だ」と述べた。

一方で「ドローンがウクライナ軍の主要な抑止力となっている事実は、我が国企業の製品の成功と品質の高さを示している。UAVを購入するために誰もが列をなしている」とも述べた。

ドローンに関する慎重な姿勢は、エルドアン大統領とロシアのプーチン大統領との複雑な同盟関係を反映している。トルコはロシア製の高性能ミサイルを購入してNATO各国の怒りを買ったが、リビアとシリアの内戦ではロシアとは異なる勢力を支援している。エルドアン氏はウクライナ侵攻を非難しているが、トルコは観光業をはじめ小麦やほとんどのエネルギーをロシアに依存しているため、経済制裁には反対している。

エルドアン氏はウクライナのゼレンスキー大統領とも防衛協力を強化してきた。両者は2月、ウクライナがイスタンブールの防衛企業バイカルから少なくとも20機のUAVを購入するという2019年の協定を拡大し、次世代ドローンの共同生産で合意した。

バイカル社は米マサチューセッツ工科大学出身のエンジニアでエルドアン氏の娘スメイエー氏の夫であるセルチュク・バイラクタル氏が兄弟2人と経営している。
最優先とされる「ドローン外交」

トルコはドローン売却を通じて外交上の優先課題に対処し、TB2を購入または発注した十数カ国との間で軍事協力関係を構築してきた。ウクライナとの協定も「ドローン外交」の一環だ。

米シンクタンク、外交政策研究所のアーロン・スタイン氏は「ドローン売却は現在トルコにとって最優先の外交課題だ。最も価値の高い輸出品の一つでもある」と指摘した。「多くの国にとって(TB2は)賢い選択だ。価格の安い中国製に比べて性能ははるかに高い。彼らにとって米国製やイスラエル製ドローンは高額すぎて手が出ない」

製造や配備が容易なTB2は1機約500万ドル(約5億9000万円)だ。北アフリカやコーカサスの山岳地帯の紛争で、主にロシア製機材を相手に戦闘テストが行われてきた。またトルコ国内でもクルド系武装組織に対して使用されている。イスラエル製の「ヘロン」は1機およそ1000万ドル、米国製は最低でも2000万ドルする。中国製は安価なものなら100万ドルだが、墜落する確率が高くTB2に比べて信頼性が劣ると専門家は指摘している。

トルコ輸出者協会によると、ドローン需要で21年の防衛産業の輸出は前年比40%増の32億2000万ドルに達した。22年1〜2月のウクライナへの武器輸出は前年同期比で60倍の5840万ドルとなった。

TB2はウクライナ軍が持つ唯一の武装化されたUAVで、レーザー誘導弾を最大4発搭載できる。「(価格で見ると)価値がないという、まさにその点でTB2は極めて価値が高い。ウクライナが購入と運用を継続できれば、ロシア軍を非常にいらだたせることができる」とスタイン氏は指摘した。
「戦力増強装置」としての役割

ウクライナ侵攻は基本的に地上戦であり、ドローンで結果が左右されるとは考えにくい。だがイスタンブールのシンクタンク、EDAMの防衛プログラムディレクターのカン・カサポグル氏は、UAVの巧みな利用が「戦力増強装置」になり、兵力で劣るウクライナ軍がロシア軍の重要な標的を攻撃する機会を得られると述べた。

専門家は、速度が遅く低空飛行するTB2は標的になりやすく、ロシア軍がウクライナ上空の制空権を確保すれば迎撃される数が増えると予想している。ロシアはこれまでに少なくとも4機のTB2とそれらが離陸した基地を破壊したと発表している。

「迎撃され始めればドローン攻撃はうまくいかなくなる。そしてロシアは紛争開始時にめざしていた制空権を手に入れる」と英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のロシア・ユーラシア研究部門のリサーチフェロー、マチュー・ブレグ氏は述べた。

それでもカサポグル氏はシリア、リビア、ナゴルノカラバフやウクライナの紛争でトルコ製ドローンが使用されたことから諸外国が学べるのは、ロシアの兵器に有効である点だと述べた。ポーランドは21年に武装化したTB2を24機購入する契約を結んでおり、同機を調達する初のNATO加盟国となった。

「ウクライナ紛争終結後、NATOの東端地域はトルコ製UAVで急速に『ドローン化』するだろう」。同氏は見通しを示している。

By Ayla Jean Yackley

(2022年3月12日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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