トルコ製軍用ドローン、アジア販売照準 「政治色」薄く

トルコ製軍用ドローン、アジア販売照準 「政治色」薄く
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『ウクライナの首都キエフのクリチコ市長は3月上旬、市内の動物園で生まれたキツネザルの赤ちゃんが「バイラクタル」と名付けられたことをSNS(交流サイト)で公表した。名前の由来になったのはトルコ製の軍用ドローン「バイラクタルTB2」だ。
ウクライナでも利用

TB2がロシア軍の戦車や武装車両、地対空ミサイル防衛システムを破壊する映像がSNSで広がっている。同機はアゼルバイジャンやシリア、リビアでの戦闘でも実績がある。

バイラクタルは同機の製造元であるトルコの防衛企業バイカル・ディフェンスの創業一族の名だ。同社のセルチュク・バイラクタル最高技術責任者(CTO)はトルコのエルドアン大統領の娘婿だ。

今回、ウクライナに侵攻したロシア軍の車列にTB2が一定のダメージを与えたことに軍事アナリストは驚いている。2020年にアゼルバイジャンでアルメニア軍の戦車を一掃したが、専門家はロシアのような大国の軍への効果を疑問視していたからだ。

TB2は18年に初めてカタールに輸出されて以来、トルクメニスタンやキルギスなどと19件の輸出契約を結んでいる。3月上旬までの3カ月だけで6件が加わった。
空母から発進しやすく

こうしたトルコのドローン業界が販売市場として照準を合わせるのが、アジアだ。

バイカル・ディフェンスの最高経営責任者(CEO)で、セルチュク氏の兄のハルク・バイラクタル氏は取材に対し「中国は近隣のアジア諸国にドローンを売りたがらないだろう。当社はこうした国により良い選択肢を提供している」と語った。

同社は現在、空母や強襲揚陸艦(LHD)から発進できる次世代ドローン「TB3」の開発に取り組んでいる。22年中に予定されているトルコ初のLHD「TCGアナドル」の就役に先立ち、TB3の初号機を発表する計画だ。
バイカルは空母や護衛艦からの発進に向くドローンも開発中だ(日本の護衛艦、海上自衛隊提供)

バイラクタル氏は「TB3は日本の護衛艦『いずも』級に適している」と述べた。TB3は主翼を折り畳めるため、固定翼型よりも多く空母に搭載できる。同氏は「日本は軍用ドローンを一刻も早く手に入れるべきだ」とも語った。

トルコのドローンメーカーはバイカルだけではない。防衛産業大手のトルコ航空宇宙産業(TAI)は21年11月、カザフスタンに軍用ドローン「アンカ」を売却することで基本合意を結んだ。

TAIはアジア市場に攻勢をかけている。21年11月にマレーシアのクアラルンプール郊外にオフィスを開設。22年2月にはアジア最大の航空ショー「シンガポール・エアショー」で大型ブースを設け、ドローンなどの主力商品を展示した。さらに3月にクアラルンプールで開催された防衛関連の展示会にも出展した。
インドネシアなど関心

21年にトルコ軍が採用した同社の次世代軍用ドローン「アクスングル」は50時間飛行でき、ソノブイ(水中聴音装置)も備える。最先端の探知機とセンサーを搭載し、対潜水艦戦や海上警備をこなすため、インド太平洋諸国に適していると言える。

トルコの軍事企業STMもマレーシアの防衛展示会に参加。攻撃型ドローン「カルグ」などを出展している。取材に応じたCEOのオズギュル・ギュレルユズ氏は「アジア諸国はカルグなど当社の徘徊(はいかい)型兵器に関心を持っていると感じる。アジアの様々な国とすでに連絡をとっている」と明かした。

一方、オープンソースの写真から兵器や戦況を分析するブログ「オリックス」は、マレーシアとインドネシアがトルコ製ドローンに関心を示していると報じた。筆者の1人であるステイン・ミッツァー氏は1月、インドネシアは今後10年でヘリコプター揚陸艦(LPH)の保有を検討しているとされ、主翼を折り畳めるバイカルのTB3を購入すれば「インドネシア初の(ドローン)空母を保有することになる」と指摘した。

ミッツァー氏は価格が手ごろなLPHとドローンを組み合わせれば「インドネシア海軍に全く新たな可能性をもたらす」と述べた。
一部の技術も提供

さらに、インドネシアがトルコの軍需企業バイカルの軍用ドローン「アクンジュ」かTAIのアクスングルを購入すれば、「長距離攻撃が可能な資産」を持つことになるとも指摘した。

インドネシアの駐トルコ大使は21年11月、トルコの防衛専門サイトで「トルコからのドローン購入を検討している。製品の供給だけでなく、技術移転や将来の開発参加も望んでいる」と語った。

軍事アナリストのアルダ・メブルトール氏によると、トルコ製ドローンは戦闘力が証明されている上に、輸出にトルコ政府の政治的条件が付随しないため人気がある。共同生産のオプションを通じて一部の技術を提供する寛大さも評価されている。

(イスタンブール=シナン・タウシャン)

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