中国、南太平洋への進出加速 ソロモンと安保協定合意

中国、南太平洋への進出加速 ソロモンと安保協定合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM31C3F0R30C22A3000000/

『【シドニー=松本史、北京=羽田野主】中国が南太平洋への進出を加速させている。3月末、ソロモン諸島と「安全保障協定」で基本合意した。

内容は未公表だが、事前に流出した協定草案には、ソロモンが中国軍の派遣や艦船の寄港を認めるなど、高度な軍事面での協力が盛り込まれていた。地政学上の要衝での中国の動きに、オーストラリアや米国は警戒を強めている。

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ソロモン諸島は豪州の北東約2000キロメートルに位置する。伝統的に台湾と外交関係を持っていたがソガバレ首相が2019年に台湾と断交し、中国と国交を結んだ。以降、ソロモンは急速に親中姿勢を強めてきた。

中国外務省の汪文斌副報道局長は3月31日の記者会見で「地域の平和と安定に役に立つ」と安保協定の意義を強調した。

両国政府は内容の詳細を公表していない。ただ、3月24日にSNS(交流サイト)に流出した協定草案には「中国は必要に応じて、ソロモン諸島の合意を得て船舶の寄港や物資補給を行える」と記されていた。「ソロモンにおける中国の人員や主要事業を保護するため中国の関連部隊が利用されうる」との内容も盛り込まれていた。

ソロモン諸島に近い豪州とニュージーランド(NZ)の両国政府はこうした動きに相次ぎ警戒感を表明する。豪州のペイン外相は同25日「軍基地といった施設の設置など、地域の安定と安全を損なう行為に対して特に懸念を抱く」と強調。

NZのアーダーン首相も同28日、地元ラジオ番組で「地域安保の観点からも(中国軍の)必要性や存在意義はほとんどない」と不快感をあらわにした。

一方、ロイター通信などによるとソガバレ氏は3月29日、こうした懸念について「非常に侮辱的だ」と反発した。

ソロモンでは21年11月に中国寄りの姿勢を見せる政府に抗議するデモ隊が暴徒化し、中国系住民が多く住む地域で死者が出た。これを受け、ソロモン政府は治安維持のために中国から警察関係者を受け入れていた。

ソロモンは米国と豪州を結ぶ海上交通路(シーレーン)上に位置する。中国が米国の影響力排除を念頭に設定した、日本の小笠原諸島やグアムを経てパプアニューギニアを結ぶ「第2列島線」にも近い。

軍隊を持たないソロモンに軍事利用できる港や空港が建設されれば、米軍や豪軍の動きが中国によって把握されやすくなるリスクが高まる。

こうした対米戦略の観点もあり、中国は南太平洋への進出を模索してきた。19年に国交を結んだキリバスでは、中国が老朽化した滑走路の改修に向けた費用を支援することが分かった。

18年には中国がバヌアツに軍事基地建設を検討しているとの報道も出た。

米豪は南太平洋での中国の動きに神経をとがらせる。米国のブリンケン国務長官は2月、ソロモンに米大使館を復活させる方針を明らかにした。米政府は1993年にソロモンでの大使館を閉鎖していた。

ソロモン諸島に詳しいアデレード大学のエドワード・カバナー氏は「ソガバレ氏は中国との関係強化を通じて米豪の(懸念をあおり)支援を引き出してきた」と指摘。対中関係を米豪に対する外交カードに使っているとの認識を示す。』