バイデン米政権、核巡航ミサイルの開発中止へ

バイデン米政権、核巡航ミサイルの開発中止へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0246C0S2A400C2000000/

『【ワシントン=中村亮】バイデン米政権は新型の核巡航ミサイルの開発を打ち切る方針を固めた。巡航ミサイルは飛行機のように自力飛行するため弾道ミサイルよりも命中精度が高く、核戦力増強を打ち出したトランプ前政権が新型の開発計画を打ち出していた。計画を撤回しても中国やロシアへの抑止力は確保できると判断しており、世界各地で後退する軍縮の機運をつなぎ留める狙いがある。

国防総省高官が日本経済新聞の取材で「開発計画は撤回された」と明言した。国防総省は4月中にも核政策の指針である「核体制の見直し」の全容を発表する。

見直しでは、低い高度で飛行する「海洋発射型の核巡航ミサイル」と、爆発力を抑えた「小型核弾頭」の扱いが焦点になった。ともにトランプ政権がロシアや中国への抑止力を支える追加戦力として開発に着手し、主に潜水艦での搭載を想定している。都市部への大規模攻撃ではなく、敵国の軍事基地や重要施設に対する限定攻撃を念頭に置く。

高官は「米国は敵の限定的核使用を抑止するために多様な核戦力を維持している」と説明。高い開発コストにも触れて、核巡航ミサイル開発の優先度が低いとの見解を表明した。
一方で米政権は中ロへの抑止力を確保するため、小型核弾頭の配備は続ける方向だ。核体制の見直しの内容を知る別の関係者が明らかにした。米海軍は2020年初めまでに小型核を潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に実戦配備している。

国防総省高官は核巡航ミサイルの開発中止の理由として「SLBM搭載の小型核が抑止力に貢献している」と語った。小型核を搭載したSLBMの戦力などを増強すれば、核巡航ミサイルを新たに開発しなくても十分な抑止力を維持できるとの考えを示した発言だ。

バイデン政権は開発中止により、「核なき世界」を掲げた民主党のオバマ元大統領の路線への回帰を訴える。オバマ氏は10年に世界の核軍縮を主導するとして核巡航ミサイルの廃棄を表明した。ただ、共和党のトランプ政権は18年に開発再開を宣言し、30年ごろまでの配備を目指した。

「核なき世界」への道は近年、険しさを増すばかりだ。中国は核戦力の増強を加速し、ロシアはウクライナで核使用の可能性を排除しない構えをみせる。米政権も抑止力の維持を優先し、核使用を原則として核攻撃に対する反撃に限定する構想の見送りを決めている。』